第11話 その3
『それで?なんで金化が防げたんだ?』
正児さんの疑問が神座市さんの慌てた声を遮って聞こえる。
「地面の金化って、そんなに深くないみたいなんです」
『深く……深さがあるのか?』
「はい、実際地面に立ってみればわかるんですけどこの地面、全体が均等に若干削れてるんです」
「色が変わってるんでほぼ間違いなく」
『削れた分が金に変えられたっていうことか?』
「おそらく」
「金からコンクリートに戻した原理もこれでしょう」
「本当に金からコンクリートに戻したのではなく金に変えられた部分を自身に引き寄せ吸収したから地面がまるでコンクリートに戻ったように見えたんだと思います」
『………あぁ、なるほど』
『つまりお前はその深さよりも深く地面に傷をつけたんだな?』
「そうです、成功する保証はなかったですけど」
『まて、コンクリートを斬ったのか!?』
『………神座市、もう諦めろかけても研ぎに出せばいいじゃないか』
『そうじゃない!なんで斬れるんだ、コンクリートを!?』
『え、斬れるだろ普通に?』
「切れましたよ?普通に」
(いや、斬れませんよ普通)
『なぜ……習っている私にできない所業をそうやすやすと……』
(………何気ない普通が、神座市さんを傷つけてます)
「いや、でもできちゃったもんはできちゃったわけで……」
(それを異次元っていうんです)
『それを異次元だと言ってるんだ!』
「まぁ……いいじゃないですか今は」
「なんとなくはなんとなくでそれ以上何も出ないんですから」
彼はことりとしずかに鞘を置く。
「さて、神座市さん」
「急いで取り寄せてもらいたいものが」
『………あぁ、なるほど、了解したすぐに取り寄せる』
『形状は?』
「握れて、刺せるのだと嬉しいです」
『可能だ、小木、お前のも取り寄せる』
『できんのかそんなこと』
『ふふん、この島の材料成形技術は世界一だからな』
「じゃあ届くまで時間稼ぎと行きましょう」
『『援護する』』
『『『『了解』』』』
チェインは走り出す。
コーンという音共に3本の金の道が伸びはじめる。
(これまれより数段速い、範囲を絞って速度を上げたのか)
(正面は確実に対処できるだろうけど、左右はどちらか一本が限界かな……)
どちらを断つか真剣に考える。
『右、こちらが対処する』
『左も対処可能だ』
(………あ、そっか、頼ってもいいんだ)
「お願いします」
その瞬間瓦礫裏で機会を伺って待機していた部隊がチェインの前に飛び出し予測線上に銃弾による1線を二重三重へと刻み込む。
「ありがとうございます」
「気にすんな」「見てるだけは嫌なだけだ」
金の道を切り裂いて彼は2人を追い抜いていく。
《Include》
道が変化した槍に水晶の靴で乗り、
止まること無く距離を詰める。
「アルドナープ!危険承知で頼みたい、降りてきてくれ、こっからは耐久戦だ、少しでも回復を早めたい!」
(了解しました!)
金の礫が飛来する。
(なぜ瓦礫でなくわざわざ金を……?)
礫がまるでウニや栗であるかのように鋭い茨を形成する。
(………っ、危なかった)
しかしそれよりも早く嫌な予感を感じ取っていたチェインは自身の体から数本の細い水晶槍を生成し金を遠ざけることで回避に成功していた。
(時間差も可能か……いや、触れていない金への操作も可能な可能性もある)
(まぁどのみち距離を詰めれば問題ない)
(それに僕の推測が正しいなら、こいつらには金化能力が無い)
(まぁ付与する方法はあるが……自然系には無理だろう)
後ろでバサッと音がする。
(早太君、着地しました半休眠状態で隠れておきます存分にやっちゃってください!)
「もちろんだ!」
二発目の礫
ワイヤーを飛ばし
杭に絡ませ
無理矢理自分を地面に引きずり下ろすことでそれも回避。
敵までの距離残り25m
串も、道も全てを断って突き進む、
距離10m
敵は自身の体も金に変えて応戦をはじめる。
人型のまま腕を二分三分してそれぞれが鎌のような刃を振るう。
(パラサイトの三木みたいだな)
鎌の形状はリアルタイムで変化する、
素早く避けてもほぼ無駄だ。
(………うん、切られて回復で対処するしかないかな)
(いや、もしかしたら)
「正児さん、撃てます?!」
『………あぁ、右最上と左最下なら』
「お願いします」
『おう』
その瞬間チェインの鼻先掠める弾丸が触手を2本狩り取り去っていく。
これによってできた隙間で構え、
円を描くような剣筋が3本を断つ。
敵も流石に怯んだのか最後の1本を振るうこと無く
後退をはじめる。
「させない」
チェインもそれを追い襲うように進み刀を構える。
(………!なにか来る、斬った鎌?)
背中へと飛来するなにかの存在をキャッチしたチェインは急いで体をひねるなりして回避を………
(………あ、足が貫かれてる、いつの間に)
できない
金化していた道から伸びた金の茨が確かに彼の足を貫きその場に縫い付けている。
(………やっぱりこういうのに気づけないし痛覚を全部切るのは危険か、これからは少しずつ開放していって痛みに慣れていく形にしよう)
彼は反省を胸にその攻撃を甘んじて受ける。
「っ……」
制御盤を1本が貫いたことで突如至る所から激痛が流れてくる。
しかし彼はそれを歯をきしませながら飲み込み、
自身を縫い付けていた金の杭で足を切り裂いて
前進
相手を縦に両断する。
「っ…………がっ!?」
その瞬間、
体を貫く鎌が急に力を強め彼を貫通する。
(…………やべぇ、アホほどいてぇ……)
(無理、いきなり100%とか痛すぎる)
(………とりあえず、制御盤を優先して回復しよう)
そんな弱気な思考を巡らせながらも彼は勝利へのピースを見逃してはいなかった。
(あの軌道、どう考えたって変だ)
(別々に斬った刃がなんで一箇所に刺さったんだ?)
(刺すなら足なり腕なりどこでもいいはず、なのに全部が胴体を突き刺してきたのは……!)
彼は自身の生み出した断面を見る、
(やっぱり、切り離したもの同士が繋がろうとする動きに差がある)
(量が多い方にって可能性もあるけど……相手は怪物、もっと有力な可能性がある)
(もし、この仮説が正しいなら急に鎌を引く力が強くなった理由もわかる)
傷が治り切る頃には仮説は結論となり、
弱音を吐いていた口は、
ようやっと得られた勝機で笑みへと変わる。
刀を構え、
彼は、最後の一戦へと駒を進めるのだった。
ギーツのブジンソードが好みすぎる、
真骨頂でないかな……
やっぱり刀使いは黒がいいですよね。
チェインが黒……は今のところ予定ないです。




