第11話 その2
地面の金化、
礫と触手の襲来、
縫い留められた青年を
《Include》
柔らかい金を地面ごと塗り替え侵し、
貫き曲げる水晶の槍が壁から杭を引きちぎり開放する。
(………ん、そうだ)
襲来する金化の波の手前にコンクリートを砕かせ
一本細い水晶を生成、
根本を金化してもらってから引きちぎって手持ち槍にしようという算段だ。
けど
(………あれ?)
金化しない、
(エネルギーでできたものは金化できない?)
(いやでも……)
「って、わ!?」
じっと観察していたせいで足が少し金化する。
「やっぱり普通に金化するじゃないか!」
足をあげようとする
しかしその足はびくともしない。
(重い……!?)
(いや、一体化してるのか!?)
「くそが」
(………落ち着け、足は金化されたけどくるぶしより下で侵食は停止した、どうにかなる)
ナイフで切ってる場合ではないので水晶で足に穴を開けて引きちぎり避難所の屋根へ退避する。
(治りが遅い……真上範囲ギリギリだからな彼女)
(さて……敵の今の能力は……)
(まずは相変わらずの金化)
(そして金の操作)
(これらは範囲と何かが反比例している可能性が高い、例えば速度とか……)
(けど僕じゃリーチ不足………て、あれ?)
このときふと彼はとあることを思う。
「僕なんで敵から距離取ってんの?」
「詰めればいいじゃん」
「………あ、でも金の塊をまともに斬れる武器が無い」
「ナイフも……一太刀でこれだからな……」
刃の傷ついたナイフを見て彼はため息をつく。
「正児さん、プロトさんはまだですか?」
火力要員の到着はいつだと上空の友に尋ねる。
その質問に
『ん、聞いてないのか?』
『今回は来ないぞ』
当たり前のような口調で彼は答えてくれる。
「え」
『なんでとは聞くな、大人の面倒事だ』
「あぁ、もし今回プロトの助けを借りず敵を討伐できなかったら吸収合併とでもいわれたんですか?」
『はははは…………ザッツライト』
「くそですね中央の奴らって」
『分けて額出せる金がないんだろ、不景気だから』
「合併したらどうなるんです?」
『さてな……俺らの力が治安維持以外にでも使われるんじゃねぇの?』
「その場合僕は?」
『そりゃ、拘束か、隷属か……』
『まぁ、少なくともこれまで通りの人生は送れないだろうな』
「えぇ……」
『まぁ、安心しろ』
彼のどこか自身を感じる声が伝わる。
『俺たちはこの島の治安を守りたくてここにいる』
『子供1人の生活も守らないようなバカはいねぇよ』
「全員、撃てぇ!」
銃声が響く、
どこかで多くの光が生まれる、
無数の弾丸が敵を穿つ。
(何やってんだ?)
弾丸は十数秒絶えること無く打ち込まれる。
(普通に考えて敵の金を増やすだけの愚行に思えるけど……)
「そんな無策滅多に攻撃はしないよな」
「となると金化できない物質をさがしているのか」
「弾丸の中に発信機でも入れとけば調べれる」
「あ、そうだなら確かめてもらおう」
「神座市さん」
『はい』
「今やってるのって」
『金化できない物質を調べている』
「ですよね、なら、石英ってどうです?」
『石英……?あぁ、それならもう試している』
あっさりと答えが返る
『金化したぞ』
「……え、金化したんですか」
『あぁ、改めて確認したがやはり反応はロスト済み』
『石英は金化しない物質ではない』
淡々と彼女は事実のみを報告する。
仕事モードのときの同僚に対する態度と同じ、
(うん、まぁ、仲間って思ってもらえてるってことでいいのかな)
(しかし、石英は金化する……か)
(なら金化しなかったのは最初に思いついたあれか……?)
『本郷、見つけたぞ』
突如小木の声が聞こえる、
「何がです?」
『長物……って言うには短いがナイフよりは長い奴だ』
「それは?」
『日本刀』
『……おいちょっと待て小木、それは私のか』
彼の返答から1秒せず彼女の声が割り込んだ。
『そうなのか?………いや、違う、うん、きっと違うな』
『おい、やめろ、やめてくれ、それは私の愛刀、今ではもう珍しい人打ちの業物だぞ!?』
『た、隊長!金化が!』
大地を這う金化が再び襲い来る。
「すいません、神座市さん」
『おっと手が滑った』
『や、やめろぉ!そもそも日本刀というものは……!
金の侵食がさっきよりも数段速い、
範囲を一直線に絞ったからか、
刀を掴み、構える暇など与えないほどに。
その波後一秒、
彼の足に触れる……!
「…………!」
しかし彼は慌てず、
焦らず、
死も覚悟した魂の間で、
その一秒を永遠のように感じている。
空を円描くように回り落ちる刀を
彼は掴まず、
引き抜く。
斬
空いた手が鞘を掴み
地面が、
裂けた
無論本当に両断したわけじゃない、
コンクリートの地面に、
十数cm切れ込みが入っただけだ。
しかし、
その瞬間過ぎた2秒、
一面は金色に染まる。
ただ彼の背から続く一本道を除いて。
それはその断面を境に金化が止まったからにほかならない。
『おい本郷、今お前どうやって……』
『………本郷?』
『おい、本郷聞こえるか!』
『どうやって金化を止めた!』
『お前は無事か?!』
『刀は無事か?!!』
『聞こえているのか、本郷!』
「……って、あ、はい聞こえてます」
「僕は元気です」
静かにその水の湿りすらも感じる刀身を収めながら、
彼はゆったりとした口調でそう言った。
更地に、更地にさえしなければ………はぁ
日本刀はもっともっとあとのはずだったのに
あ、けしてブシンソードに感化されたとかじゃないです!ないですから、好きだけど
かっこよすぎたけど!




