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電光怪人チェイン〜ヒーローになりたい僕と26のチートな力〜  作者: 蒲竹等泰
第2話 中央議会とこれからのこと
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第2話 その2

「で、こういう状況か」


早太(はやた)は1人牢獄の鉄格子に腰を預ける。

彼は目を覚ませばここにいたため今までに起こったことを振り返っていた。


「……この豪華さ、普通の牢獄(第13区)ってことはないよな」


設置された小さなテレビに流れるニュースを耳にしながら大きな窓を眺める。

見えるのはビル壁と無駄に青い空。

雨の一雫も堕ちそうにない。

かたくはあるが布団でなく枕付属の白いベット。

勉強机には電気ポットとスティックコーヒー、白紙のノートや日記帳、一揃えの筆記具。

部屋の角には本棚があり一部黒く塗られるものも無く普通に問題なく読める。

天井には3つも電球があり昼間だというのにつけっぱなしである。

明らかに監獄という雰囲気ではない。

その背の向こうに別の監獄があるわけでもない。


(ニュースに怪物に対する言及はゼロ)

(それに、あのプレート、フィルムだっけ?)

(あれが噂になるくらいにはこの街に散らばっている)

(あれはもしヒーローものや少年漫画に合わせるんら)

(有効手段として意思の疎通のできる怪物は……)

(拘束したもののまだ利用価値がある)

(そんな感じかな?)


彼は今の自分を値踏みする。


彼は決して賢いわけではない。

それでも今まで読み漁った漫画からここまで推測する。


「おい、31番」


背から声がする。


あの女の声だ。


「少し時間を貰うぞ」




彼は手錠を鳴らし、

リードのように紐のついた片足の輪っかにため息をつく。

かなりの締め付けだ、間に布があるからいいものの手錠の冷たさなんで人生で一度でも味わいたくない。


「乗れ」


女は狙ったように開いたエレベーターを銃で指す。


乗り込むと中には1人若い男がボタンの前に乗っていた。


「……小木(こぎ)、なぜお前がここにいる?」

「お前の仕事は危険物所持者の拘束、執行するのみのはずだ」


「知らん、呼び出しだ」

「それに、もうそれは俺の仕事じゃない」


「何?」


「俺はその部署を降ろされた」


「ふん、命令違反などするからだ」


「……マニュアル女にはわかんねえよ俺の判断は」

「勝手だったとは認めるがな」


「あのー、進んでもらえます?」


エレベーターの外と内の2人の口論に僕のリードを握る男は注意する。


閉まるドア、気まずい雰囲気。


「仲悪いんですか?」


リードの彼に早太は小声で尋ねる。


「いえ、なんというんでしょうか」

「命令至上主義の神座市(かんざし)隊長と人間優先主義の小木さん」

「掲げる……まあ正義の違い見たいのがあるみたいで」

「まあ、目玉焼きはソースか醤油かみたいに終わりのない議題なので気にしなくて大丈夫ですよ」


「そうですか……あ、僕は塩胡椒派です」


「私は何もかけない派ですね」


軽口を注意することなくリードの彼は答えた。


「俺は塩だ」「私は醤油だ」


「キノコとタケノコ」


「タケノコだな」「キノコだ」


「右と左」


「右!」「左!」


「「喧嘩売っるのか!?」」


「はい、ストップ」

「聞いた私が悪かった」


睨み合う2人の間にリード君は割り込む。


「おい綱持(つなもち)リード放してるぞ」


「あ、本当だすいません」


「まったく気がゆるんでいるぞ」


(なんだこの状況)


苦笑いしながらリードを拾う彼を眺めながら早太は心に中で呟く。



やがてポーンと音がする。


「降りるぞ」


その言葉に従い3人は降りていく。


「……降りないのか?」


「俺はもう一つ上だ」


「そうか、ご愁傷様」


「うるせえ」


扉が閉まっていく。


「仲良いんですね」


「ただの元同級生だ」

「それよりここからは私語厳禁だ」


目の前に聳えるは巨大かつ重厚的な扉、

城門のような、監獄の蓋のような独特なプレッシャーを放つ扉。


それが誰の手も借りず開いて行く。


彼は唾を飲む。


「深呼吸して、なんであれ貴方の立場はかなり有利です」

「落ち着いた態度を崩さないで」

「喰われないで、聞かれたことには流れるように、それ以外はゆっくりと」


リードの彼は早太の耳元でそう囁きリードを話す。


『被告、入りたまえ』


扉奥より声が響く。


「進みなさい」


神座市は彼に言う。


「貴方は?」


「後ろにつきます」


そう、っと呟き、彼はリードの彼にお辞儀1つして進んでいく。


続く道は壁の灯りで赤くなり、灰と黒の壁はまるで闘技場に入場する剣闘士のような気分だ。


明かりはもうすぐ。





「これは……」


見上げれば360°の劇場のステージのような空間。

2階席のように一段高い場所にずらりとあらゆる年齢、国籍、性別の大人達がずらりと座っている。

その数20や30なんてものじゃない。

見覚えある顔から知らない顔、悪趣味なほど豪華な装いから一般人のような布服、綺麗で着づらそうな民族衣装。

その全ての目が今1人の青年に向けられている。


彼はこれを知っていた、


聞いたことがあった、


見たことなどあるはずがなかった。


ここはこの町の中心、


住人の総意をNOと突っぱねられる場、


住人なら誰もが名前を知っていて存在していると思いたくない存在。


「………中央議会」


それはもはや一般人である僕からしてみれば都市伝説に近い存在。

各国の代表やこの町の会社の要人、裏の長、情報発信の王、若き人々のカリスマ。

そんな人々の集う議会。


起こった現象をも消滅させる権力者の巣窟。


「少年、前へ」


正面より声が響く。


唯一空白の席より一段下、それでいて他より半段低い席に座るいかつく厳格気な初老の男が告げる。


(神織町総合代表、九乃介(ここのすけ)=プルート・ヴァーニー)

(圧倒的人気によって3期その役を担う男)

(そして………)


彼は隣に座る年老いた男を見る。


(1秒に100万の価値があるとされる天才開発者 華家来(かけらい)義輝(よしてる)……)

(こんな要人がわざわざ集まるほどこの議題は重要と言うことか)


彼の頬を冷や汗が流れながら4、5mと離れた証言台に立つ。

その距離はまるで数倍のようにも感じる。


息が詰まり、体が震える。


生涯かけても1人、2人がせいぜいな程の人々がここにいて、

その全員が自信を裁くという事実に押しつぶされる感覚はまるで……


(………)


パァン!


乾いた音が響く。

痛みを走り、頬が紅葉模様に熱くなる、

己の頬を叩き、息を吸い、前を見る。


自分を鼓舞しろ。


心を強く持て。


他人を上と思うな。


自分は神だ。


他人がどれだけ上にいようと、


僕にとって僕以上なんていない。


そうだ、今この場は僕が有利だ。


殺す気なら寝てる間に殺されてた。


情報のために生かしてたと可能性もある。

でも、ここは彼を信じる。


信じるしかない。


僕は有利だ。


自分を鼓舞しろ、


他人()毒づけ(下げろ)


「さあ、()ってやる」

「上に立ちやがってこの野郎」


「人に質問したけりゃ下に降りてくればいいんだ」

「でも僕は優しいからな、答えてやるよ」

「何が聞きたい?」

「出し惜しむな、全て答えろ」

「信頼を勝ち取れ」

「絶対に生きてやる!」


僕は彼を睨む。



静寂



「………プッ」


似つかわしくない誰かの漏らした声、


『ハハハハハハハハハ!』


辺りに無数の人々の笑い声が響く。


「え?」


「フハハハ、途中から声に出ているぞ少年」


目元を抑えるヴァー二ー氏は僕に告げる。


まじか、声に出てたの……?


咎められると思ったがそんな雰囲気でもない

むしろさっきよりも気さくそうな雰囲気すらある。


「なら聞こうじゃないか、正直に答えてくれたまえ」


厳格さが嘘のような笑顔でそう彼は告げた。

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