第9話 その4
「………どうも」
『面白いですねこのバッチ』
電柱の影に座っていた早太にプロトは言う。
『糸玉に牡牛座……すなわちアリアドネと星、そして牛といえは……』
彼は太陽にバッチをかざしながら
『ミノタウロスですか今回の敵は』
「………わかんないですけど、違うんじゃないです?」
「ミノタウロスはどっちかって言うと綴じ込められる側ですし」
『……敬語は不要ですよ、まずこういうときは言葉から信頼を培っていくものと聞いていますので』
「じゃあ、あなたも敬語じゃなくていいじゃないですか」
『私も直したいんですがね、一度受けた教育に反するとはなかなか難しいものでして……』
「そうですか」
興味なさげに彼はゆっくりと立ち上がり金のバッチを1つ放おる。
『なるほど短剣、つまりは入室証のようなものでしょうかね』
『……それで、あなたは何故そうも不機嫌なんですか?』
「別に、考えごとをしてただけ」
『……よくわかりませんが、怪物討伐早い方がいいようですよ』
「何かあったの?」
『範囲が数mずつ拡大しつつあります』
『まぁ、予測はされていたので避難等は済んでいます、ですが地区をまたぐなんてことはあってはなりません』
『即効駆除せよ』
『それが私とあなた両方のトップの命令です』
「………そ、じゃあ行こうか」
早太は立ち上がりデバイスを構える、
『そうですね……いやしかしこの民家の入口だとせっかく作り直していただいたタチバナは入れませんね』
『銃などいくつか持っていただいても?』
「わかった……でも使わないからね?」
『構いません、荷物になるので』
『ではこれを』
ズドン
パイルバンカー
「………無理」
『無理なのですか?』
「バラバラにすれば無理ではないけど取り込んだもの分体が重くなるんだ、こんな重いものは遠慮したいね」
『ふむ、では軽いこれらを』
「………いいの、これメイン武装でしょ?」
玄武、勾陳を見つめ彼は首を捻る。
『構いません、これなら万が一何かあったときあなたも近接武器として使えますから荷物にはなりませんし』
「あぁ、繋げると大剣に……」
スカ
「大剣に……」
ガッ
「ならないんだけど」
『持ち手のそう、そこです、そこを押して上のをスライド、そしたら銃身があぁ、そうですそしたらもう一方をそのまま……はい、それで完成です』
「………長い」
『そうですか?身長よりやや短いですよ?』
「いや、手間がすぐ使えないのがなぁ……」
「………ていうかさ、君取り回しのいい武器無くない?」
『そうですね……足の強化アーマとマニピュレータのどれか、銃2丁が限界ですかね』
『いや、マニピュレータに掴ませれば重いのも1個いけますかね』
「となると……ここら辺もう避難済みって言ってたよね?」
『はい』
「じゃあ、怪人態で行きましょうか」
『……それも、そうですね』
「変動」
『投英』
プロトの投影機から発された光がカーブミラーで反射する。
「……大変ですね反射できるものが無いと使えないなんて」
『案外どこにでもあるので問題ありません』
「みたいですね」
装甲が光によって構築された体を見て彼は言う。
『では、タチバナNo.3s』
『No.2-4,9を要請』
『承認』
プシューと言う排気音と共にアタッシュケースのようなものが1つと、竹刀袋ののような物と長い矢筒のような物がタチバナより分離する。
スーツケースを片手で持ち上げ不良のように肩に掛ける。
そして横のトリガーを引く、
すると
ガシャン、ウィーン、ガチ、ウィーン、プシュー
と機械らしい音を立てて今朝見たマニピュレータへと変形する。
「かっけぇ、マーク5みたい」
『マーク5?』
「あ、うん、通じないならいいんだ」
『そうですか』
『タチバナ、先に弾丸を』
『承認』
マニピュレータが小包を引っ掛け背中に取り付け、
そして袋と筒も同様に背に固定する。
そうするとマニピュレータの電源が落ち光が消える。
『次、No.1-L』
『No.2-2要請』
『………承認』
再び1つ大きなコンテナが分離する。
『……』
それを蹴り飛ばした瞬間その足を包み込むようにコンテナは変形し彼の足を機械らしいものへと変化させる。
そして
ガシャインと隙間から1丁の大型拳銃が現れる。
それを抜き
『準備完了』
「あなただけほんとSFしてるよね」
『まぁ、技術の粋を集めた装備ですので』
「そりゃまぁ、そうなんだようけどさ」
『では、行きましょうか』
ガトリングガンをその手に持って彼は言う。
「じゃあ、開けるね」
『………えぇ、どうぞ』
話をぶつ切りにしてチェインはドアを勢いよく開く、
鍵の手応えは無い、
そして……
「何これ」
『これは……白い壁といったところでしょうか』
ドアの向こうを見つめてプロトは首をかしげる。
『入口はここではない?』
その言葉を聞いたチェインが手を壁に伸ばす。
「………いや、触れたら水面みたいに揺れる」
「ワープゲートなんじゃないかなこれ」
『そうですか、では入りましょう』
「だね、躊躇ってもいいことないし」
2人はづかづかと臆することなく入り込む。
視界は白に染まり、
どこかに向かうための数歩の間がたしかにそこに存在する。
立ち止まらない、
2人は歩き続ける。
やがて視界は色を取り戻す。
「………広いな」
そこはただただ広いホールのような部屋、
何も無い、
何も無い、
電灯も、窓も、空もない。
なのにそのただ1つの椅子があるだけのこの部屋は、
まるで当たり前のように明るく世界を見せている。
「…………」
主が顔を上げる。
俯くように、
枯れたように椅子に座るその怪物、
顔はない、
黒いマネキンのような女が迷路だが迷宮だかのローブを纏い深くフードを被っている。
正しく、
RPGの迷宮の主のように。
『先に仕掛けるます!』
「了解!」
ガトリングガン天后の腹に響く連音を響く、
持ち込めた弾数170あまりは数秒で消費され、
煙が舞う
どれくらいの損害を与えられたかはわからない。
しかしこの乱射だ。
敵は動けず、
そう考えた早太が斬りかかる、
不意をつけるよう紛れ、
回り込むように、
やがて土煙は晴れ……
(無傷……?)
敵に傷が無いそれは早太も予見していた、
しかし、
椅子も床も、
彼女の触れている周辺のみ無傷
(………っ、まずい!?)
(停止……無理か!?)
(なら今すべきなのは……)
「アルドナープ!!すぐに来い!!」
(はい!」
飛ぶ彼から分離するように彼女が現れる。
「今から僕の口と耳の代理頼んだ!」
「わかりました……って、え!?ちょっと、それはどういう……
彼女が確認しようとした瞬間敵にその刃が触れる。
その瞬間、
「消えた……?」
砕けて散ったかのように一瞬で消滅する。
影も、跡も残さずに。
「うぇっ!?」
早太の顔面が壁に激突する。
「………っ、ここは?」
それは見上げるように高い壁、
岩を削り重ねたような無骨な場所、
空だけが青く、
床だけが白い。
その石畳に包まれた回廊は思いのほか広い、
「………またかよ、またかよ!?糞チートどもがっ!!」
彼の積もり積もっていた苛立ちに吠えた声が届くものはこの世界にいない、
ただ一人を除いては。
結局週1ですよね平日3日に1度って




