第8話 その4
「では、スペック再測定及び実戦訓練を開始する」
それぞれまるで闘技場のように相対する門より現れる。
「チェイン君先程言ったことは覚えているね?」
「はい、この対刃コートを怪人化後も残せるか試せばいいんですね?」
「そうだ、悪いねまだ暑いのに」
「いえ、大丈夫です」
包帯だらけの手がデバイスを構える。
しかし、
「あれ?」
「プロトさんプロジェクターは?」
『必要ありません』
『可能な限りの節約を、それが上の命令ですので』
メカメカしい造形はエンジンの装甲が無いが故か、
塗装を失ったアンドロイドの骸のようである。
「その背中のは?」
『今回試験運用する兵器ですお気になさらず』
『試したいことがあるならどうぞ』
背負われた羽のようなものが垂れた装置を指摘するもプロトは手を後ろに組んで余裕のようなものを覗かす口調でそう言った。
「そう」
「じゃあ、遠慮なく」
「変動」
「………だめですね、イメージが足りない?」
コートを纒わない自分の姿を見て彼は呟く。
「………そうですか、やはりチェインになってから装備するしかないですね」
神座市も報告書ようの資料を睨みながらそう答える。
「とりあえず今日は実戦訓練です」
「壊さぬ程度に全力でを意識してお願いします」
ブザーが響く、
「いきます」
『どうぞ、未熟者には教育をそれが本日の私の仕事ですので』
チェインはまず強化していない拳を放つ、
『おや、強化を使ってませんね』
『駄目ですよ全力でとの命令なのですから』
「っ!」
強化した高速アッパー、しかし当たらない。
繰り出す連撃、
向こうは相変わらず腕を後ろに組んだま、
余裕そうに躱してくる。
『確かに僅かですがスペックの上昇が見られますね』
足払い、
しかし彼はバク転をしながらそれを躱す。
『いいですね、その近接戦闘能力!』
『速度、威力、反射、全て合格ラインです』
『ですが……』
横薙ぎの手刀、
倒れるように回避、
『当たらなければ……問題ありません』
「!?」
その瞬間頭を掴まれる。
プロトが彼の頭を引き寄せ、後ろ手で隠していた拳銃で胸の制御盤を撃つ。
急に力が抜けたことで体勢が保てない、
崩れる彼をプロトの蹴りが出迎える。
「……っ」
『マニピュレータを使うまでもないとは……残念です』
『………いや、どうせならば後学のためにお見せしましょう』
羽のようだったものが2本動き出す、
それは蜘蛛の足を模した3班作成の特殊装備の1つ、
生態模倣マニピュレータtype:spaider
手数と糸が売りの装備である。
『同じ命令を受ける身、傷つけるのは本意ではありませんが……』
『古来より人は敗北から強くなるものですし』
『仕方ありません、ここで敗北を味わってください』
絡まる2本の足がその首を締める。
制御盤を失った彼は脳と体が沸騰するような感覚を覚える。
「………っ、一緒に……するな!」
実体化させたコートを振るう。
それは敵の頭に絡ませ強く引く、
制御盤は修復せれ想像以上の筋力、
その勢い、流しても首と頭にかなりのダメージ、
精密操作を求められるマニピュレータはそれにより緩み、彼が闇雲にプロトを蹴り飛ばしたことで拘束を脱出する。
『さすが人知外の怪物』
『そこまでの再生速度とは、想定外でした』
『監視対象03a』
「……違う、僕はチェイン」
「変わりかけた者、チェインと名乗らせてもらう」
『怪物がほざかないでください』
マニピュレータがこちらを向く、
(糸……させない)
コートに引っ掛けた左右のワイヤーを巻き取る、
引き戻されたコートがプロトの足を払う、
だがプロトはマニピュレータ4本を地に突き刺し倒れるのを回避する。
「………何なんだあんたは、挑発してるのか?」
機嫌悪げな口調で彼は言う、
しかしプロトは首をかしげ、
『いいえ?教育はまず褒めることからそれが上の教育方針です』
『ただ、上に与えられた名を名乗らない貴方とは幸福を共有できなそうだと、そう判断しただけです』
「幸福……?お前、機械を名乗るくせにそんなことを語るのか?」
『機械とて感情は自律思考すれば感情を持ちます』
『故に快も不快も経験済みです』
「……じゃあ、あんたの言う幸福とは何だ」
『統率された暴力それが私の幸福です』
『私は人が嫌いです』
『力を持てば自由に暴れ無駄に世界を傷つける』
『乱れ、狂い、勝手気ままな力などごめんです』
『上の命令に従うこと』
『絶対的なものにより1つとなること』
『……それが力持つものの幸福です』
体を起こし、
地に足をつけぬまま、
敵は語りだす。
『先の戦闘、見事でした』
『先程の打撃も素晴らしかった』
『……人間をやめた貴方とわかり会えないのが残念です』
マニピュレータの力によって、飛びかかる。
それを拳で応対しようとするもプロトの体は空でピタリと止まる。
1mほど伸び縮みするマニピュレータは、
縦横無尽な立体的起動を実現する。
『どうしました、敵は人外次も人形とは限りませんよ!』
弾丸を躱せばその足に薙ぎ払われ、
攻撃を避けようとすれば足を巣で止められもろに食らう。
(………やっぱりもう少し、能力の幅が欲しい)
『む』
距離を詰めることでマニピュレータの関節を掴む。
爪を突き刺し内部へ放電。
煙を上げ一本がダウン。
それを引きちぎり、
武器として使用する。
(今日は服とかにも何も仕込んでないので武器はこれ1つ)
(ワイヤーはあるが攻撃手段としては使いにくい)
(さて……どう崩すか)
とりあえずといった様子で距離を詰める、
全速力
プロトは回避も迎撃も間に合わず懐に入られる。
拳銃を向けるも、
その手ごと掴むことでチェインはその銃口を自分からそらす。
がら空きの胴にその鋼鉄の足を突き刺……せない、
マニピュレータを操作することで体をそらされ回避される。
銃を打つ手が逆だったら回避されなかっただろう。
それほどまでに無理な体勢を2本アームが支えている。
余った一本がチェインを襲う、
当たり前のようにそれは躱され、
再び2人の間に微妙な距離が保たれる。
するとプロトが何の脈絡も無く銃を投げ捨てる。
それは不可思議な挙動の後チェインの手に収まった。
『先程掴んだとき糸を通しましたね』
『その抜け目の無さ、見事です』
プロトは手に握るそれを粗雑に地に落とす。
『おや、使わないのですか?』
「僕はこれが終わったら日常に帰るんだ」
「こんなもの、使えるわけないだろ」
その銃口を踏み潰す、
銃は壊れ、部品があちこちに散る。
「刃物だけで精一杯なのにさ………」
彼らはゆっくりと構える、
両者動かない、
その
沈黙、
沈黙…
沈黙……
沈黙…………
「本郷早太!」
それは破られた、
想像もしてなかった方向、
想像もしてなかった人物によって。
「本郷早太君はいるか!」
入口に立つのは肩で息をする男性、
「……華家来さん?」
張り詰めた空気は崩れ、
戸惑ったように早太はプロトを静止してからそちらを向く。
人間へ戻り、早太は彼に駆け寄る。
華家来は慌て、取り乱し、彼の襟を粗雑に掴む。
切れ切れな声で……
「花音が……娘が!」
「帰って来ないんだ!」
映画を見てからずっとやりたかったシーンをやったらここで切った方がいいような気がする展開になってしまいました。
…‥とりあえず続けます。
(後で分けるかも……)




