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電光怪人チェイン〜ヒーローになりたい僕と26のチートな力〜  作者: 蒲竹等泰
第8話 まよいアギラーダ
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第8話 その3

「それで、聞きたいことって何ですか?」


アイスコーヒーをコースターに置いて早太は華家来に問う。


「ああ、それはだね君の体調のことだ」


「僕の体調?」

「いたって健康ですよ、そうは見えないけど」


包帯だらけの手を揺らしながら彼はあっけらかんと答えてみせる。

しかし華家来はそれを難しい顔で見つめる。


「その手、痛くないかね?」


「……?」

「そうですね……少し、動かせない程ではないですが」

「でも慣れてきたのか朝よりはだいぶましです」 


「そうかね、ならいいんだが……」

「体に不調は……いや、それは今聞いてもか」

「何か体に変化があったら報告してくれ」


「何か気になることがあるんですか?」


ミルクレープを食べる手を止めたアルドナープが

彼に問う。


「いや、強制変身解除と言うやつが君に起こったと聞いてね」

「怪物と人間の境が狂ったりなんかしていないかとふと心配になってしまってね」


「ああ、なるほどたしかに何か体に変化が起こってるかもしれませんね……すっかり失念してました」


グラスに満たされた紅茶を一口飲んでアルはあっけらかんと言う、


「え、本当にありえるの?」


「まぁ、無くはない程度ですかね……」

「一応再構築は機能してるはずなので外見には問題が無いと思いますが内面となると……」

「まぁ、でも元より30%の力です混ざっててもちょっと怪我の治りが早い程度ですね」


「……デメリットは?」


「そうですね……もし契約が終わってそれが治らなかったら、短命になる程度ですかね」

「と言っても、そのときは私のエネルギーの一部があなたに譲渡されているはずですからよほど能力を酷使しなければそんなことも起きないでしょう」


机に置かれた瓶から取り出した檸檬の砂糖漬けを紅茶に浮かべくるくると回しながらそういった。


「そもそもなんだがね、アルドナープ君」

「何故彼は能力を30%しか受け取れなかったんだね?」


「……?」

「小木さんから聞いていないのですか?」

「以前確かに伝えたはずですが」


「確かに報告は受けた、だがね、伝聞には無自覚に毒が植え込まれることがある」

「聞けることは聞けるだけ本人に聞くに限るのだよ」


「……?」

「よくわかりませんが……」

「わかりました、もう一度説明しましょう」





「ここに1つのグラスとコーヒーカップ1つがあります」


彼女は先程自分が飲み干した2つのカップを指さして説明を始める。


「生物には魂があり、それを入れるための器がその体には宿っています」

「これは生きとし生きるもの全てに共通します」

「こちらアイスティーのグラス」

「これを人間の魂の大きさと仮定します」

「そしてこのコーヒーカップ一杯分を魂の大きさと仮定します」

「ではグラスにコーヒー一杯を入れてみましょう」


彼女はポットでもらったお水をカップに注ぎ、

それをグラスに移す。


「……うん、ちょうどいいですね」

「これが普通の人間の状態です」

「魂は基本成長する、学習するに連れて大きくなる」

「そのための余地が大きく器には備わっています」

「大体2.5倍くらいでしょうか」


彼女は水がはっきりと変色するほどの量コーヒーシュガーを記憶、肉体情報、内面変化etc呟きながら注いでいく。

すると水位が若干上がる、

それほど大きくではない、

まだグラスには半分以上の空きがある。


「そして、これが私達」


彼女はコーヒーカップに水を注ぐ、


「性格、記憶、その他諸々、肉体を構築する必要は無いので本来の大きさより遥かに小さい」

「能力関連のものを含めてようやく標準的な大きさです」

「……では注いで見ましょう」


彼女はゆっくりと、

水をストローになぞらせるようにグラスへ注ぐ。

すると綺麗な模様がグラスに生成された。


「これが今の早太くんのあるべき状態です」

「ごちゃまぜにならず2種の情報が綺麗に別れてますね、この境目をデバイスを使うことで自由に行き来することができるのが狩人です」


「あるべき姿ということは彼はこうではないと?」


「ええ、まぁ、混ざってるってはなしじゃなくて根本の話なんですが………」

「本郷くん……彼は器が標準よりも小さいようなんです」


「二度目でもなかなか傷付く事実だね」


アイスコーヒーを飲みながら彼は呟く、

しかひ、その言葉の割に傷ついてようには見えない。


「つまり本郷君」

「君の器には魂1つと魂約1/3入る大きさしかなかったとそう言うのかね?」


「えぇ、まぁそうらしいです自覚無いけど」


彼としては元よりあるとも思ってなかったものが他より小さいんだよなんて言われても「何か嫌だな」程度に過ぎづ、ふぅーん……くらいに済ませれるものでしかない。


「他に可能性はないのかね?」


「あります、彼の魂が人より大きい場合です」

「ですが………」


彼女はじっとあくびをする彼を見つめ、


「そうは見えませんが」


と呟いた。


「………こんな小さな境目、簡単に」


「何か?」


「……いや、すまないが早太くん」

「君のデバイスを一晩貸してはくれないか」


落ち着いた様子ながらも申し訳なさげな彼の申し出、


「いいですよ」


それをあっさりと了承する。


「いいのかね、本当に」

「申し出た僕が言うのも何だが君たちの命綱だろう」


「まぁ、別に壊せるもんでもないですし」


「感謝する、明日の朝まででいい」

「……あぁ、こっちは必要ない君が持っておくべきものだ」


机に置かれたデバイスとプレートの内プレートを返し、彼はデバイスを布に包んで鞄にしまう。


「では、僕はこれで、ここは当然だが僕が払う」

「多めに支払っておくから足りないなら何か頼むといい」


そう言って彼はカフェを後にする、


「…………あ、華家来さん!」

「娘さんが今日は遅くなるとのことです!」


「む、そうか、伝えてくれたこと感謝するよ」



「いいんですか、一体が出てきたってことは数体続きますよ?」


残された彼女はぶっきらぼうに早太に言う、


「……まぁ、きっとあの人に任せたらいい事があるよ」


彼女はストローで液をかき混ぜ一気に飲み干す。


「ゲロあまですね」


そう言って店を後にする、


「人を疑うのはされてからで十分だよ」


追加でホットケーキを頼みながら彼はその背に届かない声で呟いた。







「ゆっくりし過ぎたな」


暗い道を彼は歩く、

アルは本部の寮にもう着いただろうか、

そんなことを呟きながら自宅を目指す。


乾燥と寒さで秋を感じる。


月が見え、

眠気に負けてあくびを………


「ん?」


時刻は7時半手前、

そのせいか視界の端の少女が目にとまる。

見覚えのある中等部の制服、

見覚えのある髪型、


(華家来さんの娘さん……?)


路地から現れた少女は何かを探すような、困っているような様子でキョロキョロと左右を見ている。


(………同級生の家への行きか帰りかで道に迷った?)

(どこに住んでるか知らないけどここら辺わかりやすい方だと思うけど……)

(声かけるか、案内できるかわかんないけど)

(そのためには………)


彼はそう思い1つ深呼吸をし横断歩道を渡る


(……うん、渡れる)

(大丈夫、大丈夫……)


嫌な記憶を飲み込んで再び深呼吸して彼は歩く、

彼女のもとへ、

しかし……


(………あれ、いない)


首を捻る、

目の前の暗い路地裏に人はいない、

左右の道を見る、

彼女らしき人影は無い。


(こっからしばらくは曲がり角が無いし……)

(店に入ったのか……?)

(………あれ、別に僕気にする必要無くない?)

(別に遅い時間というほどの時間じゃない、きっと訪ねたって子の家で晩ごはんをいただいたとかそんなところだろ)


「帰ろ」


とりあえず自分に課してた課題の1つをクリアできた充実感を胸に秘めながら、

彼はゆっくりと帰路につくのだった。


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