第7話 その3
「うおっ!?」
深夜に僕の声は奇妙に感じてしまうほど響く、
「まじか、まじか、まじか、まじか!?」
でも今は近所迷惑なんて気にしていられない。
襲いくるそれを避けるのに精一杯だ
「くっそ、多すぎないか!?」
先程より数回りほど小さくなっても未だ巨体、
人外めいた巨体と柱のような四肢、
歩み寄ってくる青い光を纏う宝石の巨人を睨みながら、
僕は……
目に見えないそれを、
音と、
穴と、
空気、
月と僕の光の反射、
それを頼りに、
透明な柱を回避し続けていた。
「つ!?」
回避間に合わずその水晶を刃で受ける、
しかし、
「ぐぉ……っ、嘘だろ!?」
ナイフをも貫きそれが僕の肩を抉る。
思ったよりも先が鋭い、
柱と思っていたがあれは杭か、
穴の空いた肩からは、
血のように電気が漏れ出、
それが布でも織るように絡まり穴を塞ぐ。
よかった、電力が切れても体は治るんだ……って、
そりゃそうか、
能力が電気だから電気が傷を塞いだように見えるだけで体の修復は契約者の基本使用だしな、
肉体はアルのエネルギーがある限り修復し続ける。
………僕がショック死しない限りね。
(早太君、明かりのある場所に移動すべきでは!?)
「いや、今明かりの付いている場所はここ以上に狭い!」
「移動するなら………うぉ!?」
なんだ今の、他より生えるのが早かった気がする。
偶然前に進んでなかったら股から串刺しにされてたかもしれないな……
回避するたび離れてては埒が開かないな、
距離を積めるか……?
いや、離れるべきだ、
射程を調べよう。
射程外に出れば敵も動く。
「アル、下がるぞ」
(了解)
(あ、でも君が移動して私に標的が移るといけないから休眠状態まで放出を抑えるよ、5秒待って)
「移るの?」
(わかんないけど、万が一……ね?)
「わかった」
5秒……耐えれるかな?
しゃがむ、
僕の頭が四方の杭で狙われた、
次は……足元
光を反射しない暗闇に前転するように転がる。
追撃、
ワイヤー巻き取りによる立体機動で回避、
壁からの攻撃は無い、
敵の攻撃は地面のみか?
(早太君、OK!)
「了解」
壁を強く蹴り、
反動を付け、
ワイヤー切断によって
ジャングルジャンプのように飛ぶ。
追撃に生えてくる柱を、木を、壁を足場に進み続ける。
「………!」
「この音は……!」
思わず足が止まる、
一瞬地に足が着く、
その瞬間鋭い痛みが足を襲う。
「これは……!?」
実体化した懐中電灯でそれを照らす、
それは竹串くらいまで細くなった一本の串。
「こんな細くも作れんのかよ!?」
斜めに突き刺された串は足を持ち上げても抜けない、
まずい、今立ち止まったら……!?
ズドン!
突如、そこに巨大な柱は現れた。
透明さを失い、白を纏う柱、
鋭く、
硬く、
太く、
ビル上のアルが見上げるほど長い、
その上に、
---------僕は立っていた。
「危なかった………」
足に突き刺さったままの折れた串を見ながら僕は呟く。
足が抉れる覚悟で飛んだ僕の体は縫い付けられているとは思えないほど軽やかに動いた。
……いや、事実僕はあの瞬間、縫い付けられてなんていなかったのだ。
「ありがとうございます、正児さん」
「おう、遅れてすまなかったな」
開かれたゲートの奥、
揺れるヘリの上で、
スコープの無い狙撃銃を構えた男は答える。
音を立てて引かれたボルトから、
煙の臭いが上がる空薬莢がこぼれ落ちる。
跳ねた薬莢が再び床に落ちるよりも早く新たな弾丸を詰めた彼は一度銃を下ろし片手で双眼鏡を除く。
「………右70、下2」
「コアの光の反射と送られてきた外見から考察」
「……左に7.5、上0.003、障害無し」
「修正完了」
「カウント4」
「3」
「2」
「1」
「0!」
「Guo!?」
音を超えた弾丸が巨人の肩を射抜く、
貫通することなく残された弾丸によって
青く透明なその体内には黒い影が生まれた。
「すげぇ」
『何処に当たった?』
「肩ですね」
『………チッ、外れた』
「外れなんですか?」
『想像よりも小さいな、岩の巨人だろ?』
「いえ、今はクリスタルの巨人です!」
『中身か』
「そうみたいです」
「写真送りましょうか」
『………いや、いいそれはあいつにやってもらおう』
あいつ……?
ギュオオオン!
キキィィィィィ!
けたたましい音と裂くような音が聞こえる、
だんだんと近づくそれと、
真後ろのそれ、
その瞬間、僕はその正体に勘づき上に跳ぶ。
その瞬間、嵐のような弾丸が敵を襲う。
そして、
その全てが損害とは言えないほどに小さな穴を残す。
「一秒万火という開発テーマは伊達じゃないな」
地に降りた僕は振り向きながら呟く。
『そうですね、これのせいで小回りが効きませんが』
タチバナからガトリングにのびる弾帯をガチャつかせながら彼は答える。
「ありがとう」
『問題ありません、命令ですので』
『ターゲットを代わります』
『03a』
『先程送信されたマップの地点Aに物資が投下されています、回収を』
「了解………っ危な!?」
奇襲するように転がるように水晶の槍を避ける。
「……っ!?ここまでもが射程かよ!?」
最後の煙幕弾を放り投げる、
爆ぜるようにあの煙が立ち込める。
それに紛れて僕はビルの屋上にワイヤーを掛け、
足を滑らせながらもゆっくり手繰り寄せるようにワイヤーを巻き取りながら登っていく。
……たしか、僕と彼の保有量はほとんど同じだったはず
だから万が一にでもターゲットが僕に戻ることはないだろうけど……
一応姿見られないよう急がないと
「あ」
両足が同時に滑る、
急な姿勢の変化でワイヤーの繋がらない左手が引っ掛けていた小さな溝から離れる。
ガキン!
「ぐぅ……が!?」
解かれたワイヤーのアンカーが何とか柵に引っ掛かる。
そのせいで、右腕に自分の重さだなんだが襲い、
肩が外れたのか激痛が襲う。
まずいぞ、ぶら下がったままだと外れた腕を直せない
せめて体制を安定させないと……って、あれ?
僕の怪物態骨あるのかな?
無意識にあると思ってたけど………
いや、でもたしかに外れた感覚が……
って、やばい、下で銃撃音が聞こえる。
煙が晴れてきたってことだ急がないと。
(……ごめんなさい!)
蹴るときように両足の靴に仕込んでたブレードと、
手裏剣一本を実体化させ勢いよく壁に突き刺す。
旧式といえど流石は神織セラミック、
この商店が今の最旧とはいえ固い、
あいつほどではないけど。
ほんの少ししかできなかった隙間に刃を掛け、
一旦姿勢を安定させる。
腕の器具のリモコンを操作しワイヤーを少し伸ばして余裕を作る。
すると腕は簡単に戻り、
自由に動かせる。
よし、あとは……
「早太君、手を」
見上げるとそこにはこちらに手を伸ばす少女が1人、
「ああ、ありがとうアル」
ワイヤーのアンカーを解き、
巻き取り、
そのまま右手でその手を取る。
「重いですね……ちょっと待ってください」
その手を少し引っ張った彼女はその力を一度緩める。
そして、
「よし、行きますよ!」
「うぉ」
先程ので想像していたものよりも強い力が腕に加えられる。
それに体重を任せぬよう溝などに刃や指(まあ、ないけど)を掛けて急ぎ壁を登りきる。
「ありがとう」
「うん」
僕の感謝に彼女は笑う。
下を覗き込むと煙はすっかり晴れて、
二人と一機が戦っているのがしっかりと見える。
(この様子だとターゲットは僕じゃなさそうだな)
指輪から地図を投影する、
腹を撫で、
メール内容をマップに統合………ああ、あの3号館か。
あれは完成が1月後だから……まだ更地か、
まあ、下は完成してるだろうけど……
「じゃあ、行ってくる………いや、君も連れて行こう」
僕は彼女を抱え、隣のビルへ飛び移ってゆく。
『………強化無しでもこの速度か』
タチバナから弾帯を切り離し槍を回避したプロトはレーダーに映る監視対象の移動速度を見て呟いた。
【………情報を収集中】
【平行してタチバナへの命令式を更新】
【自律行動の解禁】
【天将十二火器No.12天后を返還】
【その使用を許可】
【暫定命令を付与】
【収集完了】
【断定:情報不足により結論は不可】
【情報収集を最優先】
『No.1、レッグ要請』
『No2-1要請』
《承認》
《強化外装甲脚》
《天将十二火器、玄武射出》
上へ跳んだ彼の足を射出された2体の機構鮫が食らい、変形する。
それを追うように打ち出された小さなコンテナが爆ぜ、
装甲に包まれたサブマシンガンを手にはめる。
【現在高度4.27m】
【対象より追撃無し】
【射程外と仮定し考察】
【攻撃開始】
3秒で放たれた32発の弾丸の数発を受けたとき、
スカルが動いた。
後ろ、
嫌、
横というべきか……
商店の壁へ背が当たるほど大きく。
その瞬間
【仮定を否定】
【対象より横からの攻撃が可能と判明】
壁から素早く生えた石串を掴み首を捻りそれを避ける。
【……対象に外傷を確認】
【弾痕は推定4mm】
【銃火器による攻撃は高い効果が期待可能】
壁から追撃のように生え出た6本、
その到達より早く串から手を離し地に降りる。
続けて繰り出される着地を狙う地面からの剣山のような攻撃、
それを外装の切り札であるブースターを起動。
【地面からの攻撃を確認】
【対象は触れている面より一定範囲内より自在に水晶体を生成可能と考察】
【現段階否定不能】
【現在確認された最高範囲は縦約3.5m、横約12m】
【対象の行動より新たな疑問を提唱】
【現段階水晶体の最長すら不確定】
【対象の生成する水晶体の最長は無制限か】
【理においてそれはあり得ない】
【しかし、対象は常識の外に存在する怪物である】
【数確認し疑問の解消を最優先すべきと判断】
『む?』
【情報追記】
【水晶体の同時生成は可能である】
自身を円状に囲む12の杭の檻の中、
腕を挙げられないほどの狭さで、
飛び越せる高さでもない中、
プロトは得た情報を冷静に記していく。
『おい、プロト!』
『何もしないでください』
怪物は青い光を増し、
檻の隙間を射抜くように、
壁から襲う6の岩串、
【………シュミレーション開始】
【……………結論】
【回避不可能】
『プロト!?』
襲いくる害を前に、
一歩たりとも動かぬ彼に
ヘリの音もかき消すほどの、
正児の声が空に響き渡った。
天将十二火器
1:玄武 (装甲付サブマシンガン)
2:貴人 (大型ハンドガン)
3:青龍 (超遠距離用狙撃)
4:六合 (バズーカー)
5: 勾陳 (マシンガン)
6: 騰虵 (特殊弾射用狙撃銃)
7:朱雀 (火炎放射器)
8: 太裳 (電磁パイルバンカー)
9:白虎 (高貫通狙撃銃)
↑正児が使ってたのはこれ
10: 太陰 (仮称超電磁砲)
11:天空 (偵察威嚇用ドローン)
12:天后 (ガトリングガン)
覚えなくていいです(自分も覚えてない)
追記
天将十二火器にはスコープが付いていません。
これはHA-08自身のシステムによってロックを行う予定だったからです。
それ用のプログラムも2班は作ってあったが中央及び暗部はそれの使用を却下、
現在鋭意製作中。




