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電光怪人チェイン〜ヒーローになりたい僕と26のチートな力〜  作者: 蒲竹等泰
第7話 Question the Question
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第7話 その2

切れないことはない、

されど土塊、

小石だ枝だのを混ぜ込んだ天然の(やすり)だ。


簡単に斬っているように見えるが実際はただ力任せに押し込んだだけ、

一カ所斬るたび、欠けるか折れるかを繰り返す。


「……っ、また折れた!」


これで何本目だ、


「次!」


夜の街を閃光が照らす。

しかしやはり無駄。

正確に移動していた彼に攻撃は仕掛けられる。


しかし速度に関しては現状僕に負けは無い、

振り回された腕に手をつき奴の頭を軽々と飛び越える。


綺麗な街並みに唯一存在する軌道上の叩き折られた街路樹がその巨腕の脅威を示す。


僕は一度息を吐く、


……体がだいぶ軽くなってきた。

あと、2本か3本かそこらだろうか?


手裏剣はあと10か、20か……


しっかり見ておくべきだったな。


そして1番の問題は……


「ヤベェ、ガンガン減ってく」


相手の硬度が力を込めないと切れないということ。


まあ、言い換えるなら強化しないと相手を切れないのだ。


その強化のほどは約20%

1週間以上の訓練で必要最低限の電力を使用する術と、

強化の段階を5%ごとぐらいに調節できるようになった。

だから最初の頃よりは電力の消費が少なくなった‥‥けど、


結局練習して容量が増えるわけじゃない。


今僕は敵を斬るジャストタイミングで腕力に20%、

常時全身に5%、

脚力に10%強化を施している。


反射能力などの速度上昇に電力消費は無い……はず、


たしか全身体能力強化5%で練習したときの最長記録は、

約60分。


もう10分ばかし過ぎてるから……

残り電力は、約5、60%くらいかなぁ


一度逃げるか、

近くの地下道路入口から……

いや、それよりも地下からの搬入口からならあの巨体は入れないし

運が良ければ逃げられるかもしれない。


……いや、入れないからって崩されたら生き埋めだ、

やめといたほうがいいだろう。


部隊は封鎖作業だろうか、

連絡すら無い、

お役所仕事だからな……

いろいろ戸惑っているのかもしれない。

まあ、


せめてあと15分は稼ぎたい。


それにはまずあの絶妙な硬度をどうにかしないと。


「う〜ん、どうしようか……」


10分経って新しくわかったことといえば、

相手は不純物混じれど正真正銘ただの砂だったことと骨は鉱石だったことくらい

……いや、まあ、本当に体の再生は無いとわかったことも十分な成果か。


ナイフの消耗には見合ってない気もするが……

まあ、それは今はどうでもいい。


あいつは土を肉として纏うクリスタルスカル、


………む?


土?


ふと、思ったことを確かめるため懐中電灯を取り出し奴を照らす、

照らされたのは薄い灰色、

土色と言うにはあまりに乾いた色、


そうだ、そうだよ、

土属性相手と言えば……


「水だ!」

「やべぇ、避けるのと斬るのに集中しすぎて全然思いつかなかった!」


思わず声に出てしまう。

相手の行動に変化は無い、言葉を理解していないのかな?

よかったぁ……で、

えっと確かどっかの異世界系漫画や魔法系漫画にあったよな、

土や粘土でできた人形は雨だ水鉄砲で……何て言うんだ?

溶かす?崩す?う〜ん、まあとりあえず形を維持できなくするシーンが。

それを利用しよう。


「よっし、方針その2は決まった」

「次は方法だけど……」


問題は水だどっから持ってくる?


ここは人工島、

濾過した綺麗な水は常に地下深くを流れて全体に供給されている。

もちろん下水とか汚水も別ラインで4、5個くらいの濾過施設を周る形でその下に引かれている。

だからわざと街の景色用に作られたもの以外この街には池や川が無い。


掘るのも無理だ、その上は地下道路。

全地区に巡ってるから浸水なんてしたら洒落にならん。


この付近は……川がある。

1本だけ、

でも柵があるし、上からは高低差あるし、暗いから放り込んだ後の戦いができない。

万が一にでも逃げられたら2重の意味で僕の首が飛びかねない。


もう一つ水を手に入れる方法は……水道か、

でもあんなちょろちょろ出てくる水でどうしろって言うんだ?


水道そのものは‥‥まぁ、どうにでもなる。


バケツ……は、入ってなかったよな、

キャリーケースに注ぐか?

金属製だし、中に布貼ってあるけど大丈夫でしょ多少。


……はは、冗談だよ、

そんな少量でこいつをどうこうできるものか


うん、無理だな。


高圧洗浄機や消防車がないと話にならん。

ホース自体は心当たりがあるけどさすがに高圧洗浄機を庭に出しっぱな人はいないよな……


別の案だ、


何ができる?

僕の持ち物は?

残り稼ぐべき時間は?

僕の今の最善手は……?


………そういえば、部隊はいつ来るんだ?

僕はいつまで時間を稼げばいいんだろう?



『ジッ……ジシッ……』


そう考えていた、その瞬間耳にノイズが聞こえる。


『あ……あぁ、ああ、もしもし、聞こえるか早太』

『俺だ、正児だ』

『今ようやく出撃許可が正式に降りた』

『遅くなって済まない』

『今から武装部隊が出撃する』

『あと、10分耐えてくれ!』


うわぁ、タイムリー

つけっぱなしの通信機から伝えられた言葉を僕はゆっくりと飲み込む。


あと10分で僕が、

……いや、()()ができることは


(…………アル)


(はい?)


(頼みがある)


(………なるほどね、うん、わかった!)


さて、了承は得た。


「……というわけだ、悪いねゴーレム君」

「選手交代だ」


ピン!


小気味いい音が響く、

噴き出す奇怪な色の煙、

SOCUDO特性の煙幕弾。


アルを形成している物質を含んだこの煙は空気に混ざり薄まるまでの数秒間、

怪物が放出する固有のエネルギー反応をかき消してくれる。

……というか、まあ、

強いエネルギーで僕という弱いエネルギーを感知できなくするのだ。

その強さはアルと同程度、

なので今研究してくれているものが完成したら、使えなくなる代物だ。


でも、今は使える。


僕はささっと

背の高い、葉ばかりの木によじのぼり息を殺す。

するとだんだんと胸の光が薄れていく。


これも数日間の練習でようやくできるようになった『休眠状態』だ。

これにより怪物態のまま流出するエネルギーを抑え込み、

敵に僕を感知できなくさせる。

これはアルによって実証済み。


さて、ここで思い出すはルールブックに記された怪物の生態、

その中にあった1項、


『怪物はエネルギー感知を何よりも優先すべき感知方法としている』

『いかに五感の優れた体質を持とうと理性無い限りこれは絶対である』

『これにより、たとえ敵を見失ってもそのエネルギー発生体にのみ関心を示す』

『攻撃を受けない限り手当たり次第に攻撃することは無い、安心されたし』


この1文


僕の存在を感知できず、

僕は見つからない、

ならば次に狙う敵は誰か。


(よし、そっち行った)

(悪いなアル)


そう、この付近に存在するもう一つのエネルギー放出体、

僕が1番に仕掛けたが故に今まで興味を示していなかった存在、

アルドナープである。


奴はゆっくりと歩き始める、

足が崩れたせいか真っ直ぐと歩けていない、

これなら……


(追いつくまでには終わらせるから)


(うん、お願いね)






「………さてと、準備完了」


おあつらえ向きな場所があってよかった、

多少無駄もあるかもしれんが……まあ、念には念と言うのだから問題は無い。

いろいろ使い切ってしまったが……

まあ、もうすぐ補給が来る、問題は無い。


「アル、準備完了」


僕は呟くように、無意味に声に出す。


「はい」


その瞬間僕から光が溢れ出す。

背後から聞こえた返事に僕は、


「大丈夫だった?」


そう問うた。


「もちろん、結局追いつかれすらしなかったもの」


アルはそこに置かれた鉄筋に腰掛ける。

月光が黒い衣装を照らす、


「どうしたの、見惚れてる?」


「……そうだね、人形のようだよ」


「………はは」


冗談めかして心の籠らない典型文(テンプレート)を告げる。

その言葉を聞いた彼女は顔を逸らし月を見上げる、

表情は見えない。

その笑いからも感情は読み取れない、


………まあ、人の感情を読み取るなんて僕には元からできないのだけど。


出来上がったばかりのビルの上、

まだ材料の置かれっぱなしの屋上の淵に腰掛けながら僕は呟いた。





ズシン、ズシン……と、重い足音が地面に響く、

どれほどの距離を歩まさせられたのだろう、

人のようだった足は擦れて崩れ、

その形はまるで象のようだ。


よる9時すぎればこの地区に明かりは灯らない、

それはこの地響きを耳にしても、

大地が揺れ動いても変わらない。


当然だ、誰もいないはずなのだから。


……しかし、それは居た。


数メートルすら見通せない暗い街道、

そこに青い灯は浮いている。


歩を進めるたびその姿は浮かび上がっていく。


「ようゴーレム君、迎えに来てやったぜ?」


表情の無い怪物は舐めきった口調でそう言った。

意味もない挑発、

彼らしくはないだろう。


先生のせいだろう、おせらくは。


「…………」


見つめ合う巨人と自分、

暗い道を街灯が怪しく照らす、

彼らは照らされない。


青年の心に渦巻く異様な不安感、


いや、異様ではない。


その理由はわかっている。


今の彼は、

強化がもう使えないのだ。


電気を使い切った彼のスペックも一応は超人的だ、

だが、それは比較対象が真っ裸の人間だからだ。

武器を装備した人間にも、

下手したらただの虎にすら負けかねない貧弱、

それが30%のチェ(今の彼ら)インだ。


「Guoooooooot!!」


敵を握り潰さんと岩の巨兵の剛腕が振るわれる。


「−−−−っ!」


それを彼はスレスレで後ろに跳んて回避する。


削れ、削がれ、軽くなったのか敵の動きが先程よりも速く感じる。

それに対し、チェインの速度は明らかに下がっている。

スペックが、落ちているのも確かだがそれ以前に……


「がっ……!?」


その巨腕を食らったチェインが数mにかけて宙を舞う、


(くっ……そ!)


何とか受け身を取る、

……やはりその動作にすら違和感を持たざるおえない。


遅い、


動きがじゃない、

文字通りそれ以前の問題、

出だし、

第一歩目が明らかに遅いのだ。

 

(まずい……()()()()()()

(見えていても体が追いつかない)

(やっぱり最低5%強化しないと体が信号を受け取っても動き出してくれないなぁ……)

(……はぁ、痛え、痛えなぁ体)

(やっぱ、怖えなぁ……)

(自分を騙すつもりで格好つけてきたけど……)

(僕、普通の高校生だしなぁ………)

(思考を加速させることで感情を隠してきたけど……)

(普通に喧嘩とか嫌いだし、格闘技経験も無い)

(そんな奴がこんな未完成フォームで戦うなんて……)

(くっそ……俺つぇー系の主人公が羨ましいわ……)

(やめてぇ)

(負けたら僕死ぬのかなぁ)


怪物の巨腕が再び振り下ろされる、

土煙を上げ、

壁は崩れ、アスファルトはひび割れる。

爆風がシャッターを音立てて揺らす。

………でも、


「……まあ、辞めないんだけどね」


その拳の下に彼は居ない。


彼の姿はその上にあった。


「ほれ」


何気なく放ったそれが爆ぜる、

響く轟音とその顔面を焼きそうなほどの閃光、


「Guooo!?」


さっき思い出した勘違い、

そして気がついた事実、

それは、


「Guo!?」


離れた僕を追うように数歩進めた彼の体が斜めに地面へ沈み始める。

それはまるでそこの無い沼にハマったかのようだ、

………無論、ここはアスファルトとコンクリが織りなす大都会、

底なし沼などあるわけがない。


しかし、穴はある。


「………怪物は視覚や聴覚よりも何より感知したエネルギーを信じている」

「そしてそれは」



手裏剣を指に挟むチェインは告げる。


「他の感知機関が使用不能になったときに色濃く現れる」

「怪物はなんでか知らないけど障害物を壊して進むことはしない」


その8本の刃が宙を駆ける。


「壁があれば乗り越え、道があればそれに沿って歩く、街路樹があれば攻撃以外では折らない」

「普通に考えたら理性のない怪物にはあり得ない行動だ」

「つまり……」

「そういう本能(ルール)の下動いてるわけだ」

「それが君だからなのか、怪物大半に言えることなのか知らないけれど」


そのナイフはマンホールに足をはめた敵でなく、

数本の木に突き刺さり、

その瞬間、プツンと音がする。


「おかげで罠にはかけやすかったよ」


ガシャン


嫌な音が空で響く。


月光に照らされた道路に新たな影が生まれた。


「Guoooooooot!!」


耳を塞ぎたくような叫びが深夜の静寂に響き、

数多の鉄筋が、

鉄柱が、

鉄杭が、

工事現場からくすねた可能な限りの鉄の塊たちが雨よりも悲惨に降り注ぐ。







「………やべぇ、やりすぎた」


アスファルトの見えない鉄の山をビルにぶら下がりながら男は見下ろしている。

地面は……崩れてないか。


(……終わった……んですか?)


彼の頭に声は響く、


「………」


地に降り立ったチェインはゆっくりとそれに歩み寄る。


「……包丁を突き刺せば包丁が曲がり」

「人の手で殺せるのはそいつの生体器官のみ」

「そんな怪物を倒せた手段……」

「だけど……」


(あの、どうなんですか?)

(もし倒したなら早く契約者を救出しないと!)


「………ハハッ」

「倒せてるわけないじゃん」


突如彼は体を捻る。


「え、何!?どうなったの!?」


真上のアルが、屋上から身をのりだし彼を見下ろしながら問う。


「……なに、あれ」


しかしその目に写ったものに思わず息を飲む、


「何もない場所が青く……?」

「うぅん……あれは」


彼はゆっくりと拳を握り直す。


「透明な……柱?」


ズウォン!!


静寂だった鉄筋達が勢いよく吹き飛ぶ、

飛び散った鉄塊たちがあたりのガラスだ木を貫き割れ、壊れる。


「うっわぁ………きつそう」


十の透明な柱に囲まれ立ち上がる骸骨(スカル)に彼は呟いた。

【この島のちょっとした設定】

この島の水道管、下水道管、ガス管は地面はるか下に設置されており、

その上にはいろんな施設の地下室や、何層にもわたる地下道路が造られている。

そのため本来マンホールを必要としない。

しかしこの島の街並みには形状、大小さまざまなマンホールが設置されている。

その正体は搬入口、

細い道や人通りの多い場所に建てられた商店街、

交通の規制を極力避けたい工事現場などに

地下でトラックから下ろした商品や資材をその穴から上げて搬入するのだ。

大きさの違いは搬入しなければならない商品の量や大きさの差からきており、

商店街などは小さめなもの、工事現場などは大きめなものが用意される。

なお、一応消火栓と風景用の偽物は存在している。

蓋は子供に開けられないほど重いが彼なら片手で開けられる。




個人的に女性口調が描きやすいせいで度々アルドナープが敬語になっていることがあります。

砕けた口調も由比◯浜さんをイメージして書いてるけどなかなか難しい……

口調、変わるかもしれません。

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