第5話 その1
受験シーズンも終わり近づいて来て、
書く暇も無く1話書き終わらぬまま2週間が過ぎました。
更新止まると誰もみてくれなくなるらしいので書いてる分を少しずつ投稿します。
「……で、あれは何だったんです?」
席に座る僕らの前で背を向けて作業を続ける彼、
第一開発班班長スクマスガ、その本体に問いかける。
「………」
しかし反応はない。
何か特殊なものを扱っているのか保護マスクのような物を付け、
彼の向かう壁は青白く光っている。
「あの〜」
「…………」
もう一度話しかける、
すると反応があった。
黙って立ち上がり向き直る、
マスクを外さずこちらに歩み寄り、
ゴトッ
と、机に今は懐かしきラジカセを置く。
「………」
再生ボタンを静かに押した彼はゆっくりと自分の席に戻り作業を再開する。
『ガッ、ガガァァァ………キコえるか、キコえてるね?』
『これは事前に録音したものだ』
「何で」
「面倒だからか」
録音されたノイズの混じる加工声に思わず僕らはツッコミを入れる。
返答などあるわけがないの………
『ロマンだ』
「マジか」
『マジだ』
………
『予測演算の実験も兼ねているがね』
「ここら辺は無視して大丈夫ですよ」
「さっき聞いたのとまったく同じ内容です」
先程一足先にここに来ていた神座市さんは呟く。
「私は黙ってたのに勝手に『そうだ』とか『ロマンだ』とか言っていました」
『これは小木正児用に録音したものだ、近い性格のものにしか対応していない』
わぉ、
僕は小木さんに性格が近いのか………少し嬉しい。
『いい加減話を始めないとな』
『まず、プロトエンジンについて語る前にもう一度、複製品について話しておこう』
『小木、前に肌身離さず持つよう言ってあったタブレットがあるね?』
「これだな」
そう言って取り出したのは下敷サイズのタブレット。
一般販売されてるものより明らかに薄い、特別製かな?
『そこにすでにデータが送ってある』
『そこに画像が入っている後で見ておきたまえ』
「了解」
『さて、では複製品とは何かだな』
『まず君は契約時、【敗北しても能力が残る】という項目があったことを覚えているかね?』
「はい、本当かどうかはわかりませんが」
ラジカセに僕は答える。
『まず断言しよう、その項目に嘘は無い』
『30年前、彼らと契約した……と、思われる人々』
『確認しただけで5人、異能力を使った形跡があった』
『彼らの多くはその力に溺れ、犯罪に手を染め、拘束された……らしい』
「らしい?」
『拘束されているのを見はしたが、その後は僕の管轄外だったからね』
『聞いた話になるがその後、彼らの体は隅々まで調べられた』
『すると面白いことがわかった』
『それは異能は体内にインストールされたプログラムに未知のエネルギーが通った瞬間発動するという事実だ』
『しかし、それがわかりはしたもののそれが何処かがわからなかった』
『当初は脳だと思われていた』
『異能力を使用するとき活性化することがわかったからな』
『しかし、ある男がそれにNOと言った』
『その男は1人で独自の目線から研究を開始』
『そしてついに発見した』
『異能力者のみが持つ新たな器官を』
ゴクリと誰かが何かを飲み込んだ。
『……いや、訂正しよう』
『それは未知でも新たではない』
『存在するとも、存在せぬとも言われたそれ』
『あると語れば笑われることすらあった』
『それこそは………』
僕も思わず息を呑む。
あの人聞かされた話しよりも臨場感を感じるからだろうか、
いや、そんなことはどうでもいい。
ここは、あの言葉を言うべきだ。
「それはいったい……?」
気のせいかノイズに混ざって彼がクスリと笑う。
そして告げた。
『器だよ、魂のね』
『場所は臍あたり、ああ、ちょうど君がベルトをつけている辺りだ』
あっさりとした一言と二言目、
耳を疑う内容ではない。
魂のありかといえば有力な候補の一つだろう。
だけど……
「やっぱり納得いかないな、契約した人だけがその臓器を持ってるっておかしくない?」
「他の人には魂が無いの?」
「それにさ、そんなの検査でわかんなかったのかな?」
僕は思ったことを正直に声に出す。
「ああ、それは────」
『魂の器は実態を持たないからだよ』
答えようとしたアルの声を遮ってスピーカーから声が流れ出る。
『魂の器は霊的な物のようでね』
『おそらくそれと契約すると実体化するのだろうね』
その言葉に頷くアル。
つまり……その仮説は間違ってないということだ。
しかし……霊的なものねぇ~
『そんな物が実体化するなんて微塵も思っていなかったからな、検査ですらゴミと皆勘違いして無視していた』
『しかも思った以上に小さかったので皆見逃してたのだ』
『それも原因の1つ……だろうな』
「小さいってどれくらい?」
『大きさとしては……ゴルフボール半分ほどと言えばわかりやすいか……』
「こんぐらい?」
僕は人差し指と親指で輪を作る。
「もう一、二周り小さいんじゃねぇか?」
「思った以上に小さいですね」
「そうだなぁ……」
「まあ、魂の重さは何gとか言うもんなぁ」
「古いですね、えっと……たしか21g出したっけ?」
「まあ、嘘らしいげどな」
「らしいですね」
「「………」」
「え、続きは?」
長い沈黙。
『魂の器の存在は明らかになったものの、摘出したら対象が死んでしまうしと頭を悩ましていたところ』
『ある男が現れた』
数秒の間を置いて話は再開される。
『魂の器を発見した男だ』
『その男はまるで知っていたかのように研究を加速度的に発展させ……』
『ついに、その者を死なすことなく、その魂の器の中の異能力の権化を回収し、複製することに成功した』
「おー」
『それが以前、君たちに見たフィルムみたいなものだ』
僕らは3日目に見せてもらった開発物を思い出す。
何かの機械と、4枚のカード……
おそらくカードの方のことを言っているのだろう。
僕の持っているプレートと同じように、
内蔵されたものをあしらったイニシャルが頭に張り付いている。
『が、それは未完成品でね』
『抽出したはいいもののエネルギーの確保が問題となってしまったんだ』
エネルギー
『君達、本物は電脳……つまり契約相手が持っているエネルギーを元に能力を使用しているね?』
僕の場合はほとんど能力は使えないので怪人化のとき以外ほとんど消費してないけど。
聞いた話だとたしかそうだ。
「その力の大元は箱であって、私達が生み出してるわけじゃないですけど」
アルはそう呟く。
『異能力者もまた、このエネルギーの一部を体内に残している、ということだろう』
「ふーん」
いまいちよくわからないんだよなぁ、そこらへん。
まあ、別にわかる必要もないか。
『だが、作った複製品にはそれが宿っていない』
『一応ある程度のエネルギーさえあれば何のエネルギーでも代用できるっぽかったんだがねぇ……』
『バッテリー背負って戦うわけにもいかんしねぇ』
『だから彼は作成を諦め、その研究を凍結』
『それを持って彼はそこを引退、今はここで働いているよ』
『まあ、凍結した計画を誰かが勝手に続けていたようだがね』
『いったいどうやって完成させたんだかね』
『原子炉でも積んだロボットくらいしか思い浮かばんが……』
なるほど、プロト・エンジンはその人が作りかけていたものを上層部が完成させたものってことか。
………ん?
「いるんですか、ここに」
『あとは本人に聞くといい』
『私とて現場にいたわけじゃないからな』
ブツん、
絶えず流れていたノイズが切れる。
再生終了、
研究に集中するスクマスガが質問に答えてくれるわけもなく、
僕らは部屋を後にした。
「誰なんでしょうね、その人」
「心当たりはあるよ」 「心当たりはあるぞ」
彼女の言葉に2人が重ねて答える。
「え、誰ですか?」
「「SOCUD総合技術開発長、華家来綺照」」
僕らはそう言って彼を目指して歩を進め始めた。
クスマスガ/本名不明
年齢:35くらい
性別:男
身長:180cm/180cmほど
体重:102kg/75kg以上
役職:SOCUD第一開発班班長
好き:ロボット、未知、ロマン、不可能
苦手:節約
嫌い:目を合わせること
(概要)
6人の開発班班長のうちの1人、
会議にロボットの義体を使って参加していた人。
ロマンを愛し、不可能を可能にすることを好む技術開発愛好家。
専門分野は軍事技術、特にパワードスーツや銃を作ることを好む。
挑戦することを第一とし、失敗を経験と考え失敗から新しいものを生み出す才能も持つ。
元暗部の人物としては珍しく、
そこまで高いプライドを持ち合わせない人物であり、
他の元暗部メンバーの中では会話をしやすい。
ゆえに他の人よりも頼られることが多く、出番も多い。
そもそも班長に選ばれた理由が資格がある人物のうち最も話が通じるからである。
なお、何かに熱中しているときや、作業中は話を聞いてはくれるが返事はない。
華家来とは昔ながらの友人であり、話している姿をよく見かける。
(座右の銘)
未知とは常に自分の隣に存在するものである




