第4話 その2
「では第一回第四特殊生物仮称【Jet】対策会議を始めます」
学校の多目的ホールよりやや大きい部屋に置かれたコの字に繋がる長机の口で大きな液晶前に立つ彼、
局長秘書綱持九郎は皆を見ながら宣言する。
座る人数は15ばかりの人々、それでも空白が目立ち、それでいて座る者の中には奇妙な者もいる。
「……百鬼夜行?」
「百人も居ないけどね」
早太の呟きにアルは返す。
「一応ここの開発班の班長とか偉い人ばかりなんですよね?」
彼は隣の正児に小声で問う。
「……ああ、ここにいるのは役職に長とか副長とか付く奴らだ」
「僕は?」
「お前らは例外、お前らの役職は要望通り特別雇用局員って名前になっただろ」
「ああ、そうだっけ」
「忘れてたんですか?」
「いや、なんか聞かなきゃいけない気がして」
「?」
「いや、気にしないで」
「うるさいぞお前達!」
話す彼らを実働部隊第一隊長、神座市楓が小声で嗜める。
ついでに言えばそれに肩をすくめる彼、小木正児。
彼こそが実働部隊第二隊長である。
「さて、まず対象の現在地ですが……」
彼がパットをスライドするとその瞬間大画面が地図に変わる。
「現在対象は15区Bブロック、工業工場地帯……と、思われます」
「思われるとは?」
第五開発班班長ツヴァイ・シュタインは手を上げ問う。
「追跡ドローンをつけてたんだろう?」
「……そうなのですが、いかんせん上下パイプで入り組んでるので」
「どこかのパイプにぶつかって壊れてしまったようでして」
頭ををかきながら目をそらし小声で言う。
「ナンだねボクのツくりがワルかったと?」
どっからどう見ても機械な人物(?)第一開発班班長、スクマスガはくぐもった声で彼に問う。
「あ…‥いや、そう言うわけでは」
「おいクスマ、いい加減本体が来いよ、というかその不愉快声のロボを変えろ」
「このボイスはボクなりのビガクだカえるキはナい」
「ツヴァイ、キミにはわからないだろうがね…」
「……しかし」
滑らかに、モーター音一つなくそれは辺りを見回し、
「こんなナカミのナいカイギにわざわざこれだけまともにアツまるとは……」
「ハハ、ズイブンとヒマなのだねキミタチ」
その不愉快声なボイスが発された。
『………』
言葉に数人が顔を顰める。
「無駄話をする暇な奴の声なんて無視して……」
「で?」
「それよりそいつは本当にそこにいるのか?」
出席する内比較まともな姿の副班長が落ち着いた様子で問う。
「現状目撃情報こそありませんが現在全ての出入り可能場所にドローンを配置しています」
「現在アルドナープ氏曰く休眠状態となってどこかで傷を治しているだろうとのことです」
「なるほど、休眠状態になっているからレーダーに映らないというわけか」
「はい、この休眠は付近に対象が出現すると半自動的に解除されるそうなので」
「早太氏が現場に出ればすぐ補足できるはずです」
「む?」
「奴は手負いなのだろう?」
「回復される前に叩くべきでは?」
『やめてくれ、情報操作も大変なんだそれにそこら辺はガス会社のラインだ』
『作動中にほぼ無いだろうが引火する可能性もゼロでは無い』
『ラインの停止と従業員の撤退を待ってくれ』
白い少女が持つ画面のつかないタブレットから男の声がする。
「と、情報操作担当責任者も進言もあり」
「作戦決行は早くとも本日深夜25時ごろとなります」
「なるほど……まあ、それは仕方ないよな」
副班長……市橋は呟くように言った。
「では、次に対象の能力ですが……これは担当解析班からお願いできますか」
「はい」
皆の視線が立ち上がった彼女に映る。
「まず対象の大きさですが、全長役170m、足、肩、腕の一部、背中、頭がジェットのようになっており常時飛行しています」
「逃走時見せた高速飛行形態での飛行速度は推定時速750km」
「通常状態でもかなりの小回りが効くと思われます」
「また翼として使用していたものはブレードとなり、鉄筋の入ったコンクリを一切の抵抗を無く切断し、さらにその刃が腕のブースターで加速されて振るわれるため我々の現在の我々の耐刃装備はほぼ効果が無いと推測されます」
「手自体も変形し、火炎放射器に変更でき、彼の話によると火炎放射と火炎弾の射出ができるようです」
「火炎弾はぎりぎりの状態で球状を保っており、着弾や時間経過で形を崩します」
「また炎自体も少々特殊なようで数秒燃えると勝手に鎮火するようです」
「なのでこれは射出された瞬間石や弾丸を命中させることで防ぐことができるはずです」
「あと最後に放った一発、おそらく残存エネルギーを大量に使ったものと思われます」
「油断せぬよう対処すべきですね」
言葉に合わせて画面を操作する彼女は淡々と僕の言葉とドローンの映像を元に分析した結果を告げていく。
「またボディ自体もかなり強固であり、1、2発ほどの拳銃は気にも止めない様子でした」
(いつ撃ってたんだ)
「おそらく例のアレ以外でダメージは無いでしょう……が、あれは承認が降りて無いためまだ数丁しかありません」
「そこで彼の見つけた弱点です」
「弱点?」
「胸と足を繋ぐ人で言う腹の部分が排熱用と思われる隙間が無数に存在します」
「その隙間約2mm、ここからなら内部が攻撃できます」
「また、完全に確認は取れていませんが」
「背中にも排熱用の隙間があると思われます」
「もし見た目通りに型作っていて、物理法則がまともに働いているなら」
「そこは原動炉の冷却用、他より隙間は広いはずです」
「ここを援護する部隊は狙うべきでしょう」
「また、彼曰く中身を攻撃したとき何か柔らかい感触が存在したとのことですが……これはおそらく内部に熱が通るのをある程度抑える物と思われます」
「まあ、これ自体かなり素早く小回りを効かせて動いていることからそれほど硬度は高くないと推測でき、おそらくですが計画に支障と成ることは無いでしょう」
「以上のことから対象の能力はおそらく放出もしくは飛行などと思われます」
そう彼は結論づける。
「ふむ……ハヤタクンはあのスキマをナニでコウゲキしたんだね?」
クスマスガの頭が回り船をこぐアルをつついて起こしていた早太を見る。
「えっと……あれです、ナイフみたいな」
「クリーム塗ったり、ひっくり返したりする……」
「スパチュラですね」
名前がわからず戸惑う彼代わり解析役、ラヴリュックが答える。
「スパチュラ……?」
「ああ、あれってそういう名前なんですね」
そう座る濃い茶髪美青年は呟いた。
「バラン、バッククロージャーに次ぐあれなんだっけツールですね」
その隣、明るい茶髪の美少女は続けて言う。
「……まあ、それはいいとして」
「現在判明しているのはそれくらいです」
「では、ここからは担当対策開発者、第一班にマイクを譲り……」
「どうした?ハヤくユズりたまえ」
手を出すクスマスガを見つめラヴリュックの動きが止まる。
そして……
「……副班長、盤梨さんお願いします」
⦅ナイス判断⦆
皆心の中で彼女を賞賛しマイクは彼に渡された。
人物紹介その2
アルドナープ(Ardona-p)
年齢:?
性別:女
身長:165cmほど
体重:?(彼女曰く無い……が、たぶんある)
役職:特殊生物対策開発実働局 特別雇用局員
好き:
苦手:約束
嫌い:決まりを破ること
番号:5
文字:E
属性:自然
(概要)
早太の契約した『E』のプレートに宿っていた人格で電脳の1人。
契約前は早太よりやや低いくらいの姿だったが契約後は縮んでいる。
口調は極力丁寧にしようとするがしばらくすると崩れてくる。
性格は明るく、やや楽観的、学習意欲にも溢れている。
現在は実体っぽい何かがあるホログラムのようなものであり、
それに常にエネルギーを消費してながらも現界している。
ものを持ったり飲食したりもでき、
食べ物から少量だがエネルギーを回収できる。
……が、常にエネルギーを消費するためプラマイ0というわけにはいかない。
なお、何で外に出れているのかは不明。
30%しか力を移せなかったのも原因かもしれない。
そもそも力を全部譲渡できなかったこと自体前例がないので判断しかねるが。
彼となら遠く離れていても意思の疎通ができ、
彼の付近になら転移することができる。
電気の誘導、吸収くらいなら彼女もできるようだ。
かなり真面目で廊下や歩道の歩く方向や走らないことを厳守する。
過去のことはどんどん忘れていってしまうため戦いの目的や始めた理由ですらもう曖昧であり、
どっちかというと生前のことの方がよく覚えているらしい。
そのせいでいろいろ謎が多い。




