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追放プログラマー〜勇者召喚されたけど雑魚スキルと言われて追放されました。でも【プログラミング】が結構便利だったので、のんびり楽しく生きていきます〜

作者: 深海生

 俺の名は二ノ瀬(にのせ) (れん)。高校生だ。久し振りに学校に来たんだけど、いきなり勇者召喚とかに巻き込まれて、クラスメートと一緒に王の前に立たされてる。


 みんな着の身着のままって感じで、俺なんかブレザー着てカバンも背負ったまんま。


 今日は通信簿だけもらったらすぐ帰ろうと思ってたのについてねー。もうすぐプログラミングコンテストだし。今度こそ一位とりたい。


 でも帰れんのかなこれ? なんか王様とかいう人が喋ってる。言葉は分かるんだなー。とりあえず、ちょっと話聞いてみるかあ。




「勇者達よ、ようこそシュヴェリーン王国へ! そなた達を異世界から召喚した理由は、先程そこの大臣が説明した通りじゃ。では早速、スキルの鑑定を始めよう!」


 ……あっ、やべっ。話全然聞いてなかったわー。王とか大臣の名前すら分からんし、召喚された理由も分からん。


「ちょっと待ってください! 俺達は帰れるんでしょうか?!」


 イケメンのクラスメイトが王に質問する。ナイス! 誰か知らない人!


「うむ。良い質問だ。結論から言えば、可能と言うことになるのう。ただし、最低でも半年以上後になる」


「なっ、なんでです?! 早く帰りたいんですが?」


「転移魔法陣を起動するのに膨大な魔力が必要だ。それを貯めるのに最低半年はかかる。それに……」


 難しい顔をしながら王が話す。


 それに、なんだ?


「今この世界は魔王の脅威に晒されている。その魔王が倒されない限り、そなた達を元の世界に戻すことはできん。いやそれよりも、さらに勇者召喚をして、真の勇者を見つけなくてはならんのだ」


 はぁ? なんだそれ? めちゃくちゃ自分勝手じゃんこの人。引くわー。クラスメート達からも文句とか悲鳴が上がってるもん。そりゃそうだ。


 すると、周囲を囲む武装した騎士団がこちらに一歩踏み出し、武器を構える。


「王を前に何たる不敬! この場で叩き切ってやる!」


 一番偉そうな騎士が大声で怒鳴ると、「ひぃー!」といった叫び声を上げるクラスメイト達。


「やめい! 大事な勇者達だ!」


 王が騎士団を一喝する。そして先程とはうって変わって何とも優しげな口調で、


「すまなかった、勇者達よ。後から騎士どもには厳しく叱っておくゆえ、先程の無礼は許されよ。もしそなた達が持つ優秀なスキルで我が国を助けてくれるのであれば、それ相応の礼はさせてもらう」


 王はそういって指をパチンと鳴らすと、金銀財宝が乗った台車が運ばれてくる。


「もちろん、これだけではない。優秀なものには更に素晴らしいものを与えるし、高水準の生活も保証しよう。どうか、この国を救ってくれないだろうか?」


 王がそう言うと、周りに立っていた超絶イケメンと超絶美女たちが一斉に前に出て、優雅にお辞儀をする。


 身なりからして王子とか王女かな。つまり、良い働きをすればこいつらもくれるってか?


 周りのクラスメートはほぼ全員、目の色が変わっている。金銀財宝に釘付けのものや、王子と王女に目を奪われているもの。



 いやー、この国やべえわ。王は芝居がかってるし、アメとムチを分かりやすく使ってくるし。早く帰りてー。


「なっ、なるほど。王がそこまでおっしゃるなら、やるしかない、か」


 あれ、イケメン随分コロッといったな。


「たっ、確かに! 王子様、じゃなくて王様がこんなにお困りならやるしかないわね!」


 おー、アイドルみたいなかわいい女子もゴロンっといったな。


 確かに、こんだけの美男美女じゃ仕方ないか。日本で見たことないもんねー。



「そう言ってくれるとは、なんて頼もしい勇者たちだ! では早速スキルの鑑定に移るとしよう!」


 王がそう言うと、今度はでかい水晶玉が乗った台車が運ばれてくる。


「では勇者様方。順にこの水晶玉に触れていって下さい。あなたのスキルが表示されます」


 水晶玉を運んできた魔法使い風の人が言う。


「よし、俺から行くぞ!」「次は私よ!」


 そんなノリで、どんどんクラスメイトは水晶玉に触れていき、スキルが明らかになっていく。


 聖剣術、抜刀術、光魔法、精霊魔法、などなど。


「すっ、すごいスキルばかりだ!」


「さすが勇者様だ!」


 まだ全員の鑑定が終わっていないが、この場の異世界人たちは例外なく驚嘆している。


 やれやれ、最後は俺かー。俺が水晶玉に触るとすぐにスキルが表示された。




〔プログラミング〕




「……プログラミング? これは一体……」


 魔法使い風の男が水晶玉を見て呟く。


「プログラミングって、あのプログラミングのことか?」


 クラスメイトの誰かが言う。まぁそうだろうなぁ。


「プログラミングとはなんだ?」


 王がクラスメイトに問う。するとイケメンが、


「この世界は剣と魔法の世界ですから、全く役に立たないスキルですよ」


 と断言する。アイドルっぽい女子も


「パソコンもスマホも無いし、確かに何もできないわね」


 と同意する。


 うん、俺もそう思うわ。何だこのスキル?



「さすが、引きこもりだな。異世界に来ても役に立たないなんて」


 とイケメンが笑い出す。


「あー、学校つまんないからさー。逆に学校通えるって才能だよねー? マジ尊敬するわ」


 俺がイケメンを褒めると、後ろの方からくすくすとクラスメイトの笑い声が聞こえる。あんまり勇者召喚に乗り気じゃないっぽい人達だ。


「なっ、何だと?! バカにしてるのかお前?!」


 なんかイケメンが怒ってる。


「いやーしてないしてない。金とか女とかでやる気出せるのもマジすごいよねー? リスペクトしかない、ほんとだよ?」


 他にも良い所を見つけて褒めておく。


「こっ、こいつ、バカにしやがってー! 王様! こんな雑魚スキルを持ったやつが勇者なんて認められません! 追い出して下さい!」


 あれ、何かまた怒らせちゃった。そういうとこあるよねー俺。


「ふむ。これから厳しい戦いが始まるから強力なスキルがないと生き残れん。悪いが君には難しかろう。生活は保証するから一般人として生きていくが良い」


 王は俺を追放して、一般人にしたいらしい。


「あっ、オッケーっす。頑張りまぁーす」


 俺は元気よく挨拶すると、王とイケメンがなぜか愕然とする。


「そっ、そうか。では」


 王がそう言って合図をすると、家来らしき人が金銀財宝の中から適当に金貨をつまんで小袋に入れ、俺に渡す。


「あざっす。じゃあ出て行くんで、誰か出口教えてくださーい」


「わっ、私が!」


 俺がそう言うと、王の横に並んでいた王女達の一番端にいた人が手を挙げる。


 すると、周りの王女達はそれを見てくすくすと笑いだす。


「やだっ、何てあさましいのかしら」


「落ちこぼれのあの子にはちょうど良いんじゃなくて?」


 ヒソヒソとそんな声も聞こえてくる。


「ふむ、フリーデか。王族が一般人を案内など許されないが、お前ならば仕方ない。頼んだぞ」


 王が一段と優しい表情でフリーデと呼ぶ王女に言う。王には随分愛されてるみたいだなこの子。


「はい、お父様! じゃなくて王様!」


 そう言って俺の方に駆け出してくる王女。


「お待たせしました。こちらですわ!」


 俺の手を引いて、王女が案内してくれる。最後までイケメンに睨まれてた気がするけど、何かしたか俺。



「はじめまして、私フリーデリーケ・ベルクヴァインと申します。勝手に召喚して、勝手にお城から追い出して、本当に申し訳ありません」


「俺、二ノ瀬連です。いや、ほんとそれ。帰りたいですよー、元の世界に」


「そっ、そうですよね……。転移魔法陣で戻ることが出来るようになったら必ずお声がけします」


「あっ、それ助かります。置いてかれそうだもんなー」


「あのぅ、しばらくしたら様子を見に伺いたいんですが、構いませんでしょうか?」


「えっ、なんでっすか?」


 申し訳無さそうに言う王女に俺が理由を聞くと、すっと横から執事が姿を見せ、


「フリーデリーケ様はお困りの方を放って置けない、大変尊いお方なのでございます」


 深くお辞儀をしながら俺にそう答える。


「ちょっと爺! そんな事言わないでください!」


 王女が少し顔を赤くする。


「なるほど。困って無いんですけど、まぁ良いですよー」


「まぁ、ありがとうございます! ちなみにどちらに住まわれますか? お仕事はどうされます?」


「全然決めてないっす。ってかこの世界のこと知らないっす。おすすめとかあります?」


「お仕事はどなたでもなれる冒険者がおすすめですわ! ですので、ギルドの近くでお家を借りると何かと便利ではないでしょうか?」


「へえ、じゃあそうしますー」


 そんな会話をしていると、いつの間にか城の出口に着いていた。王女の姿に門番は慌てて敬礼する。


「では、どうかお気をつけて」


「はい、それじゃまた」


 俺は王女と別れの挨拶をして城を出た。




 とりあえず俺の目標は、誰かが魔王を倒してくれるまで生き延びて、転移で元の世界に帰ることだなー。


 何年後だろう? プログラミングしてー。


 そういやあ、【プログラミング】ってスキル、なんなんだろう?


 まーそのうち調べりゃ良いや。


 城下町を歩いていると、ちらちら人に見られる。顔はそんなに違わない気がするから、原因は服だな。ブレザーだからね。


 服屋を探して入った。ブレザーは売って、服を見繕ってもらう。ブレザーが金貨一枚になって、服に銀貨一枚払った。銀貨九十九枚が手元に残る。


 あんまり品質が良くない服。でも服上下とインナーもついてきた。銀貨一枚は一万円くらいかなー。そうなると、金貨一枚って百万円じゃん。


 城でもらった小袋の中身を見ると金貨十枚入ってる。大金だ。確かに生活には困らなそうだなー。


 まっ仕事はしとこう。何もしないとすぐ無くなるもんな多分。


 道でギルドへの場所を聞いて向かう。途中で『あなたのスキル、詳細に鑑定します!〜鑑定したら超強いスキルかも。後から鑑定しとけば良かったなんて思ってももう遅いぞ!〜』って看板の店見つけた。


 なっが。でもありがたい。行ってみよー。


 鑑定屋で魔女っぽいお婆ちゃんに鑑定を依頼する。この人がさっきの看板書いたのかー。そんで銀貨一枚。たけー。



宇宙(そら)にたゆたう数多(あまた)の精霊達よ。迷える子羊の技能をつまびらかにしたまえ」



 すげー胡散臭い詠唱。魔法なのかなと思ったけど鑑定ってスキルだよね。今のいらねーじゃん。


 へー、そんでこのスキル、相手のエネルギーの一部をサンプルにして、その中のスキル情報を解析してるらしい。知恵神の力を借りてやってるんだって。すげー。


 って俺、何でこんなこと分かるの?


「ひっひっひっ、お前さんのスキル、鑑定終わったよ」



〔スキルが実行する処理(プロセス)を解析し、それを元にスキルをプログラミングできる。またスキルを対象にインストール可能〕



「だそうだよ。何か知らない言葉があって良く分からないねぇ。それでもお代は頂くよ!」


「えー?! すごいよお婆ちゃん! ありがとう!」


 銀貨二枚払っちゃう! お婆ちゃんびっくりほくほく。


 この世界でもプログラミング出来るかも! 俺はウキウキとして店を出た。




 とりあえず、先にギルド行ってみよー。


 ギルドに入ってカウンターに向かう。


「冒険者になりたいんすけどー」


 受付嬢に言うと、なんか色々教えてくれる。覚えられたのは、最初はEランクから始まるらしいってことだけ。


「こちら冒険者証です。頑張ってくださいね」


 受付嬢の営業スマイル。


「あざまーす」


 掲示板を見ると、沢山依頼が貼ってある。モンスターの討伐とかあるけど、武器も持ってないし無理。薬草の採集依頼やるかー。


 受付で薬草の情報を教えてもらい、レッツゴー。


 町の外にある森に生えてるらしい。行ってみたらあったあった。もうバッサバッサ生えてる。


 ギルドで教えてもらった通りに採集してっと。沢山必要みたいだから頑張ろー。


「気をつけろ! モンスターが出たぞ!」


 遠くで人の声。冒険者かな? 戦い見てみたい。


 見に行ってみると、角が生えたうさぎと戦ってる二人組がいる。戦士の女と魔法使いの男。


 敵は5匹いるけど、戦士の女が敵の攻撃を弾いては斬っていく。


 あっこれスキルだわ。


 剣神の力を借りて剣の攻撃を強化してるんだって。速度は秒速二百メートルぐらいの速さ。どの角度からでも同じ剣撃が打てるんだな。



「ズドーン!!」



 デカい火の玉。魔法だ。


 こっちは炎神の力を借りて、魔力を対価に火の玉を作り出したらしい。


 なんか解析できたし、プログラミングしてみたーい。


 暗くなってきたので速攻で薬草を採集し、ギルドに戻って依頼達成の報告をする。銅貨十枚もらった。どれ、ギルド近くの宿でも探すかー。



 すっげー近いこの宿で良いや。一泊銅貨二十枚だけど、一ヶ月先払いすると銅貨十枚で良いらしい。やっす。


 一ヶ月分、銀貨三枚払った。早速部屋に案内してもらう。早くプログラミング試したい。


 でも、どうやんだろー?


 パソコン無いとできないし。あっ、パソコンあるわ。バッグに入ってる。


 愛用のノートパソコンを取り出して、電源をつけた。充電大丈夫かなーと思ったら、電池マークがMPってなってる。MPで動かしてんのこれ? ゲージは満タン。


 なんかしれっと改造されてんなこのパソコン。


 画面を見ると、見たことないアイコンがある。【スキル開発ツール】だって。あやしい。これだ。


 クリックして動かすと、俺が地球で使ってた開発ツールとおんなじ見た目と機能。これならいけるわ。


 早速プログラミング開始。


 剣神の力を借りるとか、斬ったり弾いたりするプログラムの書き方は分かってる。これを組み合わせて色んな攻撃を作れば良いだけ。


 上段斬り、下段斬り、袈裟斬りとか書いとこ。後は、敵の攻撃が1メートル以内に来たら自動で弾くっと。


 とりあえずこんなもんかな。ってかこれしか技見れてないからプログラム書けん。


 スキル作成ボタンをポチッ。



〔【剣術】スキル作成しました。インストールしますか? (スキル容量:100メガバイト)〕



 おっ、出来たー。容量あるのね。俺の容量が分からんわ、って思ったら見えました。



〔スキル容量:1ペタバイト〕



「ぶっ」


 ざっと【剣術】スキルが百万個入るな。要らんわこんなに。


 とりあえずインストールっと。


 明日スキルが使えるか試してみよーって思ったらもう朝。俺っていつもこれ。




 まぁ良いや。朝飯食ってまずは武器屋に。


 敵と戦うことになるし、剣と防具も買っとこーっと。昨日の戦士が使ってたのと似てるロングソードと皮の鎧を購入。銀貨十枚。


 ギルドの掲示板でうさぎの討伐依頼を探すとあった。早速依頼を受けて森へ。


 うさぎの魔物はホーンラビットって名前らしい。森に入ったらすぐに出会った。めちゃくちゃ好戦的で、早速向かってくる。


 【剣術】を発動してみたら、ホーンラビットの角攻撃を自動的に弾いてくれた。上手くいったみたい。


 上段斬りとか、作った攻撃を試したら、ちゃんと剣神の力も乗ってて良い感じ。


 すぐにモンスターを倒し切った。解体出来ると稼げるらしいけど、やり方分からんわ。面倒だからこのまま持ってっちゃおー。


 ギルドの受付で依頼達成を報告する。ついでにホーンラビットの買取をお願いした。全部で銅貨五十枚。まあまあだねー。


 とりあえず、スキルが普通に使えるのは分かった。これで討伐依頼をこなして暮らしていくことは出来そう。


 でも今はもっとプログラミングしたいんだよなー。スキル鑑定と炎魔法はそのうちプログラミングするとして、他にもスキル見たい。


「すいませーん。冒険者さんにスキルを見せてもらうにはどうすれば良いっすか?」


 受付嬢に聞いてみる。少しびっくりした後に、


「戦い方を学びたいということでしょうか? でしたら、合同依頼に参加するとか冒険者パーティーを雇うとか、いくつか方法はありますよ」


 と教えてくれる。


「なるほどーあざっす!」




 俺はそれから三ヶ月、教えてもらった方法で色んなタイプの冒険者の戦闘を観察し、スキルの解析をした。それと同時に、プログラミングも進めて、十個以上はスキルを作った。


 プログラミング漬け。楽しすぎる。


 次のネタ探しにギルドへ行くと、声をかけられた。


「レン様! ご無沙汰しておりますわ!」


 王女か。執事もいて、お辞儀してる。


「王女様、お久しぶりっす。どうしたんすか?」


「レン様の様子を見に参りました。どこかでお話できないでしょうか?」


「あーオッケーです。でもこの辺りに王女様を連れていける場所なんてあったかなー?」


「あのっ、レン様がお気に入りの場所で結構ですわ!」


 お気に入りねー。宿の部屋だけど、流石に連れてけねーわ。次点で、スイーツの店だな。


 徹夜明けに激甘スイーツは脳に染みるから、あの店好き。


「じゃあ、付いてきてくださーい」



 二人を連れて店に入る。王女だけはフードを被って顔を隠してる。さすがにバレたら危険だもんねー。


 王女と俺は席につくが、執事が立って王女の後ろに控えてる。


「執事さんも座ってもらえませんか? この店、そう言う店じゃないんでー」


「いえ、結構でございます。フリーデ様と同じ席につくわけには」


「爺、座って下さい! 郷に入っては郷に従えですわ!」


「……かしこまりました。それが主の命ならば」


 そんなこと言って座る爺。


「なんか食べたいものとかありますー?」


「えっ? 待っていたらお食事が運ばれて来るのでは?」


「この店、そう言う店じゃないんでー。じゃ俺、適当に頼みますねー」


 俺はクロノワールとか言う名前の、チョコが入った熱々パンケーキに生クリームとかハチミツがかかったやつが好きなんだよね。


 それを3つっと。


「なっ、なんですのこのスイーツ! 美味しすぎます!」


 王女大喜び。


 王女とこの3ヶ月で起きたこととかの話をする。城の方ではクラスメイト達、頑張ってるみたい。まだ魔物一匹も倒したことがないらしいけど。


 王女たまに城を抜け出して、孤児院に行っては食べ物を届けたり子供と遊んだりしてるらしい。


 お転婆だな。


 あと森で罠に捉えられた角があるうさぎを助けて手当したりもしてるんだって。


 それは冒険者が困るから辞めるように言っておいた。


「フリーデ様はお誕生日に国王陛下から欲しい物を聞かれたとき、ご自分の欲しいものではなく、孤児院へ沢山食料を送るようお願いする、それはそれは心優しいお方なのです!」


 執事が熱を込めて言う。この人の教育が足りないんだなきっと。



 俺の方も頑張ってて、それなりに楽しんでる話もした。


「レン様がお元気で良かったですわ! ずっと心配してたんです」


 本当に安心した様子の王女。うん? 目の下にくまができちゃってどしたんだろ?


「王女様、なんか疲れてますー?」


「はい? え、ええ、まあ。何でお分かりになったのです?」


「目の下にくまが」


「きゃ、お恥ずかしいですわ! そう言うレン様もすごいくまですわ!」


「あー俺、いっつもなんで元気でーす」


「うふふっ、そうなんですね。私の困りごとなんて、大したことなさそうですわ」


「へぇ、困りごとって何すかー? 俺ができることなら言って下さい、王女様には色々教えてもらった恩がありますしー」


「恩だなんて。わたくし何もしていないですわ。困りごとの方は、自分で解決しないといけないですし……」


「……フリーデ様。宜しければレン様に少しお話してみてはいかがでしょう?」


 執事が王女に向かってそっと話しかける。王女は少しうつむいた後、顔を上げて話しだした。


「先程お話した孤児院の子供たちなのですが、最近わたくしが行くたびにひどい怪我をしてるんです。理由を聞くと階段で転んだって」


「全員がっすか?」


「はい。ちょっと信じられないですよね? わたくしを心配させないために言っているのかと」


「それで、王女様はどうしたい感じっすか?」


「……まずは怪我を治してあげたいです。あとはきっと何か子供たちに起きているので、助けてあげたいです」


 そう言うと、王女の目に涙が浮かぶ。


「フリーデ様……」


 執事も泣いとる。


「じゃあ、回復魔法インストールしますかー」


「……はい?」


「あっ、回復魔法を使えるようにできるんですけど、どうっすか?」


「……えっ? どういう意味でしょうか?」


「あー俺のスキルって、スキルをプログラミング、じゃなくて作って、誰かに覚えさせることができるんですー」


 愕然とする王女と執事。すると執事が


「レ、レン様。それは本当でしょうか? とても信じられないのですが……」


 と、少しぷるぷるしながら言う。確かに胡散臭いなー。


「じゃ、やってみますかー。要らなきゃアンインストールすれば良いし。多分」


 回復魔法、っていうか神聖魔法は、この前教会の偉い人が来たときに解析してスキル作っといた。


 結構難易度高くて面白かった。ちなみに魔法はヒールしかプログラムできてない。だってこれしか使ってくれなかったんだもん。


 王女の容量はっと。



〔スキル容量:10ギガバイト〕



 神聖魔法は1ギガだからいけるわ。ヒールしか使えないのにコスパ悪いー。


 バッグからパソコン出して、ターゲット:フリーデリーケにして、インストールポチッと。


「これでスキル覚えたと思いますー。ステータス見てみてもらえます?」


「はっ、はあ……」


 王女がステータスを確認してるっぽい。



「なっ、なっ、なっ、なんと?! 信じられませんわ?!」


「フリーデ様?! 本当なのでございますか?!」


「はい! 確かに【神聖魔法】と書いてあります!」


「そんなことが……」


「わっ、わたくし、早速孤児院に行ってきますわ!」


 王女はそう言うと、ダッシュで店を出ていった。執事が、


「このお礼は必ず! あと、レン様のスキルは口外しないことをおすすめいたします!」


 そう言って深くお辞儀すると、お転婆王女を追いかけていった。執事大変そー。


 後は孤児院で起きてる問題ってやつかー。調べてみるかな。




 ギルドでいくつか討伐依頼をやって、中途半端だったプログラミングを終わらせとく。


 どれどれ、孤児院見に行ってみますかー。


 孤児院についたので様子をうかがう。もう王女はいないみたい。子供たちは傷があるように見えないし、回復できたのかなー。


 暇だからプログラミングしながら待ってたら夜になった。孤児院の方からガチャガチャ音がして、窓から子供たちが続々外に出てくる。


 なんだなんだ?


 俺はバレないように【気配遮断】を使っておく。この前シーフの人に教えてもらいました。


 子供たちはこそこそと目的地へ移動する。なんか裏路地に入っていくなー。


 看板もない店舗の中に入って行った。中にはガラの悪い大人たちが沢山。


「もう十分手伝ってきたはずだ!」


「そうだ、もうやりたくないんだ! やめさせてくれ!」


 子供たちがリーダーっぽい男に懇願する。


「うるせぇ! 王女がどうなっても良いのか! あんなバカ娘、いつでも誘拐できるんだぞ?」


「バ、バカ娘じゃない! 優しいお方なんだ、あの人は!」


「黙れっ!」


 そう言って強く殴られる子供。


 あーそういうこと? 怪我って、このチンピラ達にやられたのか。王女ってこともバレバレなんだねー。


「さあ仕事だ! 野郎ども、準備しやがれ!」


「へい、お頭!」


 そう言ってぞろぞろと出ていくチンピラと子供たち。


 後ろからこっそりついていくと、町を少し出た街道で、影に隠れて待ち伏せしてる。


 遠くから荷物をたくさん積んだ馬車がパッカパッカ走ってくる。周りを冒険者が囲んでる。


 馬車が近づいて来るとチンピラ達が動き出した。


「野郎ども! 今だー!」


「「「うおー!!!」」」


 ぞろぞろ出てきて馬車に襲いかかるチンピラ。子供たちは後ろの方で見張りとかしてる。


 馬車を守ってる冒険者達は町が近いから気を抜いてたみたいで、不意をつかれて防戦一方だ。そのうちに別のチンピラが馬車を破壊しようとしてる。


 そろそろ行こーっと。


 気配を消したまま後ろから剣で殴りつけていく。5人ぐらい殴ったらバレた。


「何だお前ぇ?! よくも仲間をやりやがったな!」


 そう言って俺に突っ込んでくるチンピラA。



「ズッドーーーン!」



 ファイヤーボールでそいつを沈める俺。どんどん突っ込んで来る奴らを、ファイヤーボールで沈め続ける俺。


 気づいたらリーダー一人になってた。


「くっそー! お前の顔は覚えた! 覚えてやがれっ!」


 そう言うと、リーダーは煙玉を投げて逃げようとする。視界が真っ白で何も見えない。リーダーが逃げる足音も聞こえない。


 でも俺の【プログラミング】がスキルの発動を検知した。解析が始まる。音神の力借りて、足音を完全に消してるらしい。これがリーダーのスキルか。


 これ逃げられちゃうんじゃね?


 そう思ってたら、馬車を守ってる冒険者からもスキルの発動を検知した。



「ビューーーーウ!!」



 強い風が起きて煙が晴れる。あっ、いた。


 この魔法、風神の力を借りて、魔力を対価に強風を生み出すらしい。



「ズッドーーーン!」



 俺は姿を見せたチンピラのリーダーを沈めた。


「ありがとうございます! 助かりました!!」


 そう言ってお礼を言う商人らしき人。この馬車の荷主か。


「いえいえー。無事で良かったっすねー」


 冒険者達は焦げたチンピラたちを拘束してくれてる。周りを監視してた子供たちが近づいてくる。


「あっ、あのー……」


「盗賊の仲間か?!」


 身構える冒険者たち。


「君たちも警備隊のところに連れてくけど、黙ってついてこれる?」


 俺が聞くと、子供たちが黙って頷く。


「そーゆーことなんで、拘束しないで大丈夫っすー」


「そっ、そういうわけには」


「俺が保証しまーす」


「分かりました」


 冒険者に代わり、商人が答える。


「さっ行きましょっか」




 警備隊にチンピラ共をつきだして、子供たちも連れてきた。軽く事情を話したが、とりあえず拘束されるって。


 明日孤児院の院長を呼んだりして、色々調査するらしい。まぁ当然だわなー。


 商人から名前を聞かれたりしつつ、もう疲れたから帰ることにした。




 ここ一ヶ月ぐらい、俺は冒険者稼業をしつつ、孤児院の様子を見に行ったりしてた。


 子供たちは次の日すぐに釈放されてた。情状酌量もあるんだろうけど、王女の力だねきっと。


 それで、迷惑かけた人達にごめんなさいとか、無償奉仕とか色々するんだって。


 大変だろうけど、もう怪我する子もいなくなったみたいだし良かったねー。




 ギルドに行くと、ここ最近協会に現れた聖女の噂をよく耳にする。クラスメイトか? 行かないでおこー。


 すると久し振りの王女と執事の姿。


「レン様! お久し振りですわ!」


「あっどうもー。今日はどうしましたー?」


「先日スキルを下さったお礼が出来ていなかったので!」


「あー、別に要らないっすけどー」


「そっ、そう言わずに、とりあえずあのお店に連れて行ってくださいませ!」


 そんなに気に入ったかー。


「オッケーっす」



 スイーツの店に行って、クロノワールを3つ頼む。


「相変わらず美味しいですわっ!」


「ですねー」


「まずはスキルの件、本当にありがとうございました」


「いえいえ、役に立ってますー?」


「もちろんですわ。孤児院の子供たちの怪我を治せましたし、最近では教会でもお仕事しておりますの」


 聖女ってあんたかーい。


「ただのヒールなのに失明などのひどい怪我まで治せるので、とっても嬉しいのですわ! この頂いたスキル、普通のヒールと違う気がしますが、レン様のしわざですの?」


 しわざー。


「いやー俺じゃないっすー。王女様の元々持ってるスキルの効果っすね」


「【慈愛】の、ですか?」


「はいー。回復魔法とか支援魔法とかの効果を倍増するみたいっすよ。【スキル鑑定】で見たんで」


 そう、鑑定屋のお婆ちゃんのスキル、使ってみた。


「なっ、なるほど、そう言うことでしたか。レン様には何から何まで、ありがとうございます」


「いえー、少しでも恩が返せてれば良いなーってとこっすね」


「それで、お礼なのですが、爺」


「はっ」


 執事が小さく返事をすると、小袋を俺に渡す。中を見たら金貨五枚。


「なんすかこれー」


「とっても少ないのですが、まずは頭金です」


 頭金ー。車でも売りましたっけー俺。


「わたくしが毎日働いて得たお金ですわ。どうかお納めください」


「いやいや要らないですってーまじで。もらっても速攻で孤児院に寄付しますよー」


「そっ、それは困りますわ!」


「じゃあこれで貸し借りなしってことで」


「ぐぬぬっ」


 王女がぐぬぬっ、はダメ。


「フリーデ様。レン様が良いとおっしゃっておられますので、今回はフリーデ様が引くのがよろしいかと。それよりも、あのお話はされないのですか?」


「はっ、そうでしたわ! レン様、一つお願いがありますの?」


「スキルっすか? まだまだ色々取り揃えてありまーす。ふふっ、どれを覚えさせようかなー」


「レン様。フリーデ様を魔改造しようとするのはお止めください」


「あっ、そっちじゃないんすか?」


「……レっ、レン様! わたくしとお友達になってもらえませんか?!」


「あ、いっすよ」


「そうですよね。やっぱり落ちこぼれのわたくしではレン様と釣り合わない…………って良いんですの?!」


「はいー。でも俺友達いたことないんで、良くわかんないっすけど」


「わたくしもなので同じですわ! じゃあよろしくお願いします!」


「はーい」


「爺、わたくしやりましたわ! お友達を初めてゲットしましたわー!」


「おめでとうございます、フリーデ様! 本日はお祝いですな!」


 とかなんとかひとしきり喜んだ後、王女たちはそろそろ帰るみたい。


「それではまた参りますわ!」


「あーいつでもどうぞー」


 笑顔で明るく手を振る王女。くまも無くなって、随分キレイな顔だ。それは元々か。



 執事が俺のそばに来て、


「レン様、孤児院の件、大変お世話になりました。盗賊どもはフリーデ様に代わり、私の方で制裁を加えておきましたので」


 執事こっわー。俺がやったのバレてるー。


「はて、何のことやら分かりませーん」


 とぼけとこー。また王女にお礼とか言われても困っちゃう。


「そういうことでしたら、フリーデ様には秘密にさせて頂きます。今後ともフリーデ様をよろしくお願いいたします」


 そう言うと、深々とお辞儀をしてから去っていく執事。


 よーし、じゃあ俺は日課のスキル解析しに行こー。


 友達できたし、なんだかんだでこれから楽しい異世界ライフが過ごせそうだなー。




 おしまい。

お読みいただき、ありがとうございます。ブックマークや★★★★★など、応援していただけると大変励みになります。



『追放コンサル』という長編を書き始めたので、もしお時間あればそちらも読んでみてください。

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