2. 父の転勤と母の更年期障害
美成姉の通う高校はお弁当必須だが、作り始めたばかりの料理初心者にはハードルが高い。
一日目、卵を広げたままで白ご飯の上に詰めただけのお弁当が相当こたえたらしく、お弁当はいらないということになった。中学生はお弁当給食が出る地域なのでよかったと思う。
始業式が始まり、一週間がたった。
途中まで一緒の道だが、他人のフリをして歩く。
美成姉の朝は、髪を整えることで終わってしまうので、朝食は僕の役割になってしまう。
「明日はお母さん元気が出るといいけど」
「そうだね」
分かれ道に来た時にいつも美成姉が呟く言葉はお決まりの文句になっている。
更年期障害というものがそんなに単純なものならよかったのだが、母はホットフラッシュ、疲れやすい、イライラする症状に悩まされていた。
そんな中、父は沖縄県への転勤が決まり、家族を置いたまま行ってしまった。
「一緒に来るか?」
そう聞いてくれたのに家族全員が反対をして、いかにして自分の生活を変えないかということに重点を置いてしまった。
授業中は大根がどこに行ったら安く買えるのかを考えていた。
一週間で一万円の食費は少ない。
今まで感じていなかったが、母は上手にやりくりしてくれていたのだ。
野菜と魚を二千円分ずつ、肉四千円、千円で朝食のおかずになりそうなもの。残り千円でお菓子をという配分だったが、お菓子三百円まで落としてししゃもを買うことにした。
なめ茸、納豆、のり、ふりかけ、お茶漬けを切らさないようにするのが信条だったのにそれを崩してしまったために暴れ出した人が一名。
明日は暴れないように前対策をする。
ししゃもと納豆を買って、任務完了。
一週間分の買い置きは、日曜日に済ませているから普段の買い物は足りないものを買うが、これは別出費として計上するしかない。来週のお買い物分から拝借しているから、どうなるのか今からご飯を食べていけるのか不安しかない。
来週のことは来週考えようとスーパーを後にした。