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レインと悪魔は買い物に行く

 翌朝というより、日付が変わっていたので、同日の午後。


 『ベルくん』と深夜4時まで話していたので、レインが目覚ると十四時だった。


 最初は『ベルさん』と呼びかけたのだが、友達だから「呼び捨てか、くん付で」とい言われたので『くん』にした。


 彼は異界の人だから、年上のように見える今の外見も、『いくらでも調整可能』らしい。

 さすが、身体の仕組みが違うだけのことはある。


 レインと同じぐらいの年齢の見た目もなれると言われたが、買い物に行くのに荷物がたくさん持てるように、今のままのレインよりだいたい十歳ぐらい上に見える『お兄さん』の状態の継続をお願いした。


「僕らは友達だから、遠慮しないで」


 そう『ベルくん』に言われたので、丁寧語は辞めることにした。


 紳士のような見た目のベルとタメ語で話すのは、大人になったようで、すごくイイ。


 ここはやはり『友達』としてレインも、普段通り偉大なる未来の発明家として振る舞おうではないかと、切り替えることにした。



 ブランチというにも遅い時間だったが、()()()を飲みつつ打ち解け合って、一緒に食料品の買い出しへと出かけた。



◇◇◇◇



 レインは冬休みになってから、婆様に教わった冬支度の作り置きの保存食、秋に買いあさった果物で作った果実ゲル、野菜のゲル酢漬などと共に、固形食の乾パン、エネルギーバー、エネルギードリンク、などを食べて生活してきた。


 けれど、せっかく()()が遠い異『界』から、やって来たのだ。 


 ここは暖かくておいしいものを、たくさん食べて欲しい!!


 レインに作れる料理らしい料理は、パンケーキだけだ。

 あとは保存食のゲル状のナニカしかない……。

 

 なので、本当は食堂での外食や、持ち帰りを想定していたのだが、今は年末でそのような店は予約が必要か、早くに閉まってしまうのだ。


 非常時である以上、余り自信はないが……、ここは責任をもって頑張るしかないだろう。


 塩漬けの肉と乾燥ニシン、それに玉ねぎがあれば、いいだろうか。

 玉ねぎは、よくスープに入っている。

 臭みが取れるらしい。

 生でも食べられる。

 

 肉の日と魚の日で日替わりのスープと、スライスオニオンのサラダ。

 さらにはベルも、大絶賛のパンケーキ。


 これで、3品だ。

 肉類と野菜の両方がとれる、なかなかバランスの良い食事ではないか。



 そう提案したら、ベルが、料理をすると言ってくれた。


「安心して。この『界』の住人が食べられるものは理解したし、ちゃんとレインちゃんと、おいしく共有できるものを作るよ。僕は『美食家』として、粗食は許容出来ないんだ。お世話係としても、レインちゃんには栄養とカロリーの摂取を、楽しんで貰いたいからね」


 そこから食の大切さを、延々と語られた。


 今回は食材の選択と夕食作りを、レインが監督することを条件に、お願いすることにした。


 お目当てのエネルギードリンクと、小麦と塩漬けの肉と乾燥ニシン玉ねぎは、無事に購入できた。


 それ以外のレインには、使い道のよく分からない食料品は、ベルに言われるまま選んだのだが、その目利きは確かなようだったし、調理も完璧だった。


 家にあった調理器具に、全く戸惑うこともなく、肉や野菜を慣れた手で刻み、フライパンを使いこなした。

 

 口に入れてはいけないものを混ぜたり、調味料を入れ過ぎることもなく、レインの知るこの『界』の常識的に、不自然な点は何一つなく、かつ熟練の技を見せつけたのだ。



 そして、完成された料理は、非常に……美味であった。



 チキンのハニーマスタード焼き。香草と根菜のさっぱりパスタ。スープ。サラダ。アイスクリームの栗ゲル掛け。


 久々に、贅沢な夕食となった。


「二人での最初のディナーだから、本当はもっと御馳走を振る舞いたかったんだけど……。レインちゃんはこれまで食生活が、疎かだったからね。まずはゆっくりと優しく、胃を慣らす所から、始めようね」


 なんと……、これで控えめらしい。

 さすがは『美食家』である。


 レインは、不摂生な暮らしを明日からは改善することを決意した。


 早寝早起きして、朝昼晩とオヤツを、ベルにお任せすることにすれば、全て上手くいく。

 

 何の問題もない。


 お世話係として『あーん』や、チキンの譲渡、デザートの贈呈をされそうになったが、それはさすがに遠慮しておいた。 


 乳幼児や病人の介護のようで、どうにも落ち着かない。

 

 まずは職場度同僚のお世話に、留めてくれるそうなので、これで安心だ。



◇◇◇◇



 その後、なぜか学園への散歩に誘われたが、丁重にお断わりをした。


 「七不思議を見にいこう」と言われても、寒いのは嫌だ。


 それに、深夜にぼっちが行くには怪しすぎる。

 悪戯や嫌がらせの仕込みを疑われて、休み明けにヒソヒソされる羽目になるに決まっている。

 学園とはそういう冷たい場所なのだ。世の中は、世知辛いのだ。


 そう訴えると、1月からベルが転校してきてくれることになった。


「こうして外見も揃えるから、年齢はあまり気にせず、仲良くしてね」


 試しにレインぐらいの大きさになってもらうと、もはや完全に同級生だ。


「この『界』のことを、レインちゃんのことを、もっといろいろと知りたいから、学園に通うのはちょうどいいよ」


「やったぞっ。これで二人組にも困らない!!」


 これを期に大嫌いな寮からも飛び出そう。


 せっかく大きくも小さくもなれるベルがいるのだ。

 『大人ベルくん』と屋敷で生活すると届を出せば、全く問題ないはずだ。


 中等科の場合は自宅からの通学者が多いが、地方出身者向けの寮も完備されている。


 自宅もしくはタウンハウスで保護者、家族や使用人との同居が出来ない者は、こちらを利用するよう義務付けられているのだ。

 レインもこれまでは寮生活をしていたが、保護者との居住を申請すれば、退寮が可能だ。


「ふははっ。ランチぼっち。夕食ぼっち。登下校ぼっち。の3重苦を強いられた寮部屋からは、もう卒業だっ!!」


 なんという完璧な計画。


 保護者と生活&保護者と通学ってありなのか? という疑問も一瞬発生したが、「友達でお世話係だから、当たり前だよっ」というベルの甘い言葉に、レインは全力で流されることにした。


 大らかなレインは、そのような些細なことを、気にしてはいけないのだ。

レインは、謎スープを飲まされてる事、不審者と同居する危険性、部外者が編入手続きをできる謎にも、全く気が付いてません。こういうタイプのとっても大らかなチョロインです。 

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