表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/31

マクマノハレマ

その頃のサニーちゃん。


※台詞内で用いる『☆』を減量させて頂きましたが、目にも心にも頭にも、負荷の掛かる文章です。

体調の悪い方、お食事中の方は、ご注意ください。

※女性蔑視・児童搾取・差別的表現・未成年の犯罪等を思わせる表現がありますが、そのような行為を推奨する意図はありません。

 学園に入学して初めての冬休み、クラウドくんとの聖夜祭のデート、幸せだったなぁ。


 クラウドくんは、辺境からやってきた男の子で、すっごくカッコイイの!!

 子爵家の貴族様だけど「貧乏貴族の三男だから畏まらないで」って。


 少しシャイな照れ屋さんだけど、いつも丁寧に接してくれて、お話ししていると安心するの。

 彼と過ごしていると、時間はあっという間で。

 ずっとこうして二人で入れたらいいなって思うようになってきて……。

 

 優しい彼は、病弱な幼馴染のレインちゃんのことも心配してあげてるの。

 恋人ではないみたいなんだけど、何だか妬けちゃうなぁ。

 あたしだけの彼になってくれたらいいのに、な・ん・て。キャー☆


 ちょっと体が弱いだけでクラウドくんに気にしてもらえるなんてズルいなぁ。

 

 お兄様が急に亡くなられて『スペア』となった三男のクラウドくんは、複雑な立場で、重圧や葛藤があるみたい。そんな悩めるクラウドくんのこと、何だか放ってはおけなくて……。


 穏やかで、優しくて、ひたむきな彼の姿に、いつもキュンとしちゃうの。


 最近はクラウドくんも、あたしのことを意識してくれてるみたい!!!


 放課後もいつも一緒だけど、 寮生の彼とはお出かけは難しかったの。

 だから、冬休みについに初デートが出来て、本当に嬉しかったわ。


 (とっても幸せ。あぁなんてロマンティックな夜なのかしら。胸がいっぱい過ぎて眠くならないわ。夜を照らすあちこちの明りの元に、あたしみたいに素敵な聖夜を過ごしてる人たちがいるのかしら。

うふふ。みんなが、もーっと幸せに過ごせますように!あたしとクラウドくんも、もーっと仲良しになれますように!……えへへ。なんちゃって!!!)


  夜更かしして夜空にお祈りしていたら、不思議な鳥さんが!!


 『君を幸せに導くために舞い降りた幻鳥ハミングだよ。よろしくね』って素敵な髪飾りをくれたの!!

 あたしとクラウドくんの愛の力で、みんなを幸せを届けようって……、うふふふ☆


 翌朝に目が覚めたら、どこにもいなかったけどね……。

 まぁ、こんなに素敵な夢が見られたんだもん。この恋の幸先は悪くないのかも!!



◇◇◇◇

 

 二度目のデートはあたしから誘って、今度は夜の学園へ七不思議を見に行ってみたの。

 またしても何も起きなかったけどね……。

 

 親にも内緒でこっそり抜け出して学園に忍び込んだだけでも、充分ドッキドキの大冒険よ。

 

 手元灯の明りだけの薄暗い中で二人っきり過ごしてると、怖さとは違うドキドキが止まらないわ。

 ……いい雰囲気になれたんだけど、見回りの女の先生が来ちゃった!!


『勝手に入っては駄目。学園側には内緒にしてあげるから、もう帰りなさい』


 先生はクラウドくんは寮の入り口に、あたしは門まで送ってくれた。

 

 嘘っ……!!酷くない!?女の子に一人で夜道を帰れってことっ?

 ……少し怖いけど、冬休みの夜に忍び込んだせいだから、しょうがないよね。


『さぁ、気を付けてお帰り。これはあなたの行く先を照らす道しるべよ」


 先生はそう言って私を励ますように、キャンディをくれた。

 ふふ、なんか変わってるけど、お茶目で良い人ね。

 キャンディなんて子供だましの気休めだけど、舐めていたら少しは不安が紛れるよね。


 そう思って、口に入れたら、何このキャンディ、すっごくおいしいっ!!

 ナニコレ。初めて食べたわ。ハチミツ風味のシンプルな味なのに、いい!!

 いつも食べてるのと、全然違うわ。


 一袋に五粒ぐらい入っていたんだけど、袋にはどこの商品かの記載もない。

 小さいお店の商品なのかなあ。なんだか本当に癖になる味。


 お陰で、不安やモヤモヤやドキドキも全部吹き飛んじゃって、すっごく幸せな気分になっちゃった。

 えへへっ……えへ。いいなぁ。これ、また食べたいわぁ。なんかすっかりハマっちゃったぁ……。



◇◇◇◇



 あのキャンディ、町のお菓子屋さんをあちこち回ったけど、どこのお店ものか、分からなかったの。

 他のお店のハニー味を、どれもこれも試したんだけど、全然違う。

 あれとは比べ物にもならないの。


 あの先生なら知ってそうだから、学園内で探しているんだけど、見つからない。

 あの人……、実は先生じゃなくて、雑務係とかだったのかな?


 内緒にしてくれたけど結局バレて、叱られたのかも。

 報告しなかったことや、深夜に生徒を家まで送らなかったことで、首になってたらどうしよう。

 

 寮の使用人や清掃員、庭師まであたっているけど、まだ見つからない。

 やっぱり首になったのかな。もしそうなら、マズイことしたかも……。

 もう、キャンディが手に入らなくなっちゃうよぉ!!!


 けどあたしは学園から叱られてないし、大丈夫だったのかもしれないよね。

 事情が分からなくて、うーん、悔しいっ!!

 

 気になるなぁ。女の人も、キャンディのことも、分からないままだと、余計に。


 キャンディぐらいで、って思うかもしれないけど、本当においしかったの!!

 食べた後も、うっとりとしてしまうぐらい、幸せな気分になれる素敵な味で。

 

 また夢だったとかは、無いわよね。さすがに。


 クラウドくんだってあの人と会ったんだし、あの夜のことは絶対に夢じゃないはず。

 喋る鳥なんかどうでもいいけど、あのキャンディーだけは、どうしてもまた食べたいの!!!

 本当に、おいしかったなぁ。


 クラウドくんといるとドキドキするし、彼のことは変わらず気になっているんだけど、最近はこの謎が解けないもどかしさの方が、どうにも気になって……それどころではないのよね。



◇◇◇◇



 意を決して、夜にまた学校行ってみた。


 あの時の女の人に会えた。良かった、また会えて本当に良かった!!!

 見回り担当って言ってたから警備員さんみたい。

 女性の人では珍しいけど、学園なら安全だし、高等科の教師見習いの副業なのかしら。

 仕方ないわねってまたキャンディをくれた。

  

 これは養蜂所から直接入手しているものみたい。

 お菓子屋さんじゃなくて、養蜂所!!

 それは気づかなかったわ。遠くの地方のみたいだし、そんなの絶対に知らないよね。


 自分では入手できないお菓子だから、あの人に貰いに、夜に学園まで何度も通っちゃうよ。

 

 『これが欲しいなら次からはちゃんと対価を払いなさい』って三回目に言われて、それからはお小遣いで払うようになったけど、すぐお金なくなっちゃうんだよねぇ。

 

 すっごく貴重な、限定品みたいで、お値段もそれなりにするんだ……。

 そりゃそうだよね。こんなに幸せな気分になっちゃう味だもんね。その辺の駄菓子とは違うもの。


 貴族のヒトってこういうの食べてるの?って聞いたら、特別なコネが無いと手に入らない物みたい。

 だから大事に大事に食べるんだけど、すっかりハマっちゃったみたいで、我慢できなくて……。


 お金が無いならアルバイトを紹介するって言われて、魔術師街の裏路地の店を教えてくれたの。

 見本の通りに、スクロールの『記載』をするだけで、たくさんお金貰えるようになった。

 才能があって頑張ればプロじゃなくても任せられる、そういう特殊な仕事なんだって。

 

 あたしはすぐに上手く出来るようになったのよ。

 君のような選ばれた人間に相応しい仕事っぷりだって、褒められちゃった!!

 お陰でいつでもキャンディが手に入るようになったし、自分に自信もついて来たわ。

 

 切っ掛けはお菓子でも、自分で稼いで好きなもの買うって、なんだか大人になった気分。

 お小遣い貰ってるだけの周りの子がちょっと子供っぽく見えてくるわね……。

 うふふっ☆



◇◇◇◇



 冬休み明けに、転校生がやって来たの。

 すっごくカッコイイ男の子、あのレインちゃんと既に仲良しってどうして?!


 食堂のおうどんまで運ばせてまた『お世話係』にしてるレインちゃんにはちょっと呆れちゃうなっ。


 ベルくんだって、もっといろんなお友達を作った方がいいのに。

 七不思議の噂を話して、一緒に見に行こうって誘ったんだけど、断られちゃったわ。残念☆


『転校生のプルヴィア令息が早く馴染めるように声をかけたのは良いことだけど、身内のインバルス嬢と話している最中に割り込むように、口を挟むのは感心しないわ!!』


 委員長にも怒られちゃった……。


『インバルス嬢が食堂でご飯食べてるの初めて見たよ……。慣れるまでそっとしておいてあげようよ』

『うどんとの対話を邪魔するのはギルティ!!』

 

 他の子も何かと文句言ってくる。

 なんだか盛り下がって、誘いにくくなっちゃった……。


◇◇◇◇


 職場のセクシーなお姉さんに『あなた綺麗な顔立ちしてるわね。……選ばれたものだけの特別なお店を紹介してあげる』って会員制のカフェバーを教えられたの。


 芸術家や思想家が通う、ちょっと退廃的な雰囲気のお店。


 本当に、オシャレで素敵な人ばっかり!

 芸術論や思想とか話題は少し難しいけど、聞いているだけでも、ためになる。

 お客さん同士で盛り上がって、いつもすっごく楽しいの!!!


 ノンアルコールのドリンクを飲んでるのに、お酒を飲んでいるみたいにハッピにーなっちゃう。

 ついつい時間を忘れちゃう……。


 若くて可愛いあたしは常連さんたちにも、可愛がられてるの。

 話しているだけでも想像力が湧いてくるって、チヤホヤしてもらえるの。

 何だか特別な女の子になった気分!!


 職場も、アットホームでとても親しみやすい雰囲気なの。

 向上心のある大人の人ばっかりだから、わたしも元気が貰えるの。

 必要なのは、やる気と笑顔、焦らなくても大丈夫よって。

 

 バリバリ頑張ってたら、たくさんこなせるようになって、褒められることが多くなった。

 わたしはエースなんだって。


 ここでもときどき難しいお話もあるけど、深くてためになる事が聞けちゃうし。

 みんな見てる世界が広くって、生き方の参考にもなるのよね!!


 難易度の高い重要なスクロールの記載はまだ出来ないから、魔力を込める補助の担当なんだけど、『将来性を見込んでいるから、君の実績としよう』とまで言ってくれちゃうんだから。


◇◇◇◇


 今後の運営を考える会議をするからって作業が早く終わった晩、いつものお店に行ったら素敵なお兄さんが『今夜は二人で語り明かそうよ』って……。素敵な夜だったなぁ。


 それから、お兄さんとは何度も会うようになったの。お友達まで紹介されちゃった。

 皆ハンサムで、すごく素敵な人ばっかり!!!


 田舎育ちの素朴な男の子じゃあ、こういう都会のお兄さんみたいなリードはできないよねっ。

 こんなふうにわたしを満たしてくれることもないわ。


 お兄さんたちが、『一つ上の価値のある女にならなくっちゃ』ってイカしたお店を教えてくれた。

 先鋭的なアクセサリーや香水を扱っているお店。


 『貴族の多い学園に通ってるなら、いつもみたいにおねだりしてごらん。君みたいなかわいい子が、上手におねだりしてくれたら、なんでもしちゃうって人がたくさんいるはずさっ』


 わたしみたいなミューズにはパトロンも必要よね。

 同級生の貴族の男の子か……。若い子は何回も出来るのよね。まぁ悪くないかもなぁ。

 

『君は非常に優秀な生徒だったよ。これからは、君が誰かを導く番だ』って促されたから、学園でいろんな男の子に声をかけるようになった。


 お金持ちで若い子も将来性があるから、いいよね。

 最初はヘタクソでも、初物を育てる楽しさもあるって教わったから、頑張らなくっちゃ。


 うちはパン屋だから、店の売れ残りを手作り☆って差し入れしたり、お弁当作ってきたの☆ってサンドイッチを渡すと、運動系の男子は食いつきがいい。


 簡単ね。人間胃袋を満たせばどうにかなるって。本当だったわ……。


 グループワークや演劇の練習の合間にも、買い出しや稽古に誘ったら、何人もあたしの虜になった。


 あのお店で買った、食欲増進のスプレーをごはんにかけて、特別な香水を纏ったわたしは無敵なの☆


 スプレーと香水は、あたしの魅力を引き立ててくれるんだから!!

 みんなあたしに堕ちて、なんでも買ってくれるようになっちゃうの。


 カッコイイ転校生のベルくんにも、何度か差し入れしたの。

 貧乏なクラウドくんとは違って、同じ子爵令息でも彼はリッチそうだから。

 でも、全然脈がなさげ……。


 ベルくんちは特殊な家って聞いたけど、一夫多妻で正妻は血族に限るんだって。

 なにそれ、それじゃあ結局はあのレインの下ってこと?

 何人も他に女がいるんじゃあ、あんまり貢いでもくれなさそう。


 それなら別にいらないかな。貌はいいから、味見ぐらいしたかったけど……。

 宗教関係の家なら、お堅いのも仕方ないか。はぁーつまんないの。



◇◇◇◇



 クラウドくんがバレンタインにチョコ持ってきた。

 センス悪い安物でこのあたしには相応しくないけど、心意気だけは受け取ってやるとしましょう。

 感謝して欲しいものね。あたしは聖愛祭デートを梯子しなきゃで、忙しいんだから!!



 文化祭よかったわぁ。

 あたしの聖女ローズ役は、大好評だった。

 

 中庭で、宰相子息役と騎士団長子息役の二人としたのも、すごい燃えちゃった。

 こういう時のスパイス役に、クラウドくんって便利よね。


 皆の前では気を持たせるようにふるまって、裏ではこうして過ごすのって、最高!!

 童貞に無駄な夢見させるのって、キュンキュンしちゃう。



◇◇◇◇



 文化祭の後、一緒にお芝居に出てたみんなは学校に来なくなっちゃった。

 もう、つまんないなぁ。


 他にもあたしと遊んでた子は、ほとんど休学しちゃって本当つまんなくなっちゃった……。

 暇そうなのは、クラウドくんだけだからクラウドくんで遊んでる。




 学期末試験のある3月、テスト結果が却って来たと同時にあたしは退学になった。


 嘘っ?なんで退学?

 多少成績悪くても、学年末までに取り返せば良いはずじゃなかった?

 それか留年でしょう?普通。

 

 はぁ!?学内での淫らな生活態度?

 あー、最悪。せっかく貴族の男の子が、あたしの信奉者になって食べ放題だったのに……。


 家に帰ったら王都警備団が駆けつけてきて、警備所に連行された。

 麻薬の使用、魅了や媚薬を用いての複数の貴族令息を篭絡、違法スクロールの作成と売買。

 

 え?バイト先のあれ違法だったの?!まじか……!!


 よくわかんないけど、未成年でも厳罰になるらしい。

 何かこれから、裁判に掛けられるらしいんだけど、学園中の保護者が怒ってて、ただでは済まないって……。


 何でよ。みんなだって喜んでたじゃん。別にいいじゃん。

 楽しくて気持ち良ければ、それでいいじゃん。

 

 これからあたし、一体どうなっちゃうのかな……。


 


 聖女の素質があるからって、刑務所行きはナシで、修道院での奉仕活動をすることになった。

 あー、良かった。助かった。超怖かった。

 警備団に目付けられたのはさすがにヤバいし、しばらくは大人しくしてようかな……。

ざまぁされるヒロイン目線って大好物で、読む時はいつもウッキウキなんだけど


書く作業が、こんな吐き気を催す類のものだなんて知らなかったよ……。

おじさん構文とか古のギャル語を打つのって、内臓に深刻なダメージを与えるんだ。

推敲作業は、この罪の証と向き合い続ける苦役なんだよ。

次書くなら健康被害をもたらさないようなヒドインにします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ