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レインと悪魔は夜のピクニックに行く②

※残酷な表現、女性に対して差別的な表現を含みます。ご注意を。


目が滑る長文説明なのでまとめがあとがきにあります。

 …というのが、公に知られている聖女物語の概要だよね。


 だけど、本当はただの権力思考で色欲に塗れた無責任な害虫女の話なんだよね……。


 冒険なんて、男漁りの、綺麗な言い換えさ。


 彼女は、姉の婚約者を奪い、男の魔術師を篭絡して、勇者とも楽しみ、王子とも仲良くして、魔王をも誑かしただけ。


 そのまま勝手に全員で幸せになっていればよかっただけなんだけど……、そうはならなかった。


 それぞれの男に『あなただけ……』と囁いては勘違いさせていたせいで『五人で仲良く』とはいかなかったんだよ。当たり前だよね。


 勇者と魔術師と聖騎士の三人組は結界周辺の魔物を狩るただの優秀な冒険者パーティで、元々は魔王とも親しくしていたんだ。

 ある晩、男だけの四人で酒を飲み、打ち明け話をしたところ、全員がローズと関係してると知ってしまった!ローズに詰めよると、四股どころか王子も含めての五股だとも、明らかに!


 そんな彼らによる、壮絶でバカげた痴話喧嘩の果て……、うっかり魔王が封印されてしまったという何とも傍迷惑な話なんだ……。


 厄介なことに、ローズは複数の男を誑かす口の上手さだけでなく、魔王や英雄級の男どもと渡り合える聖力を持っていたからね。


 魔力の根源たる王、通称『魔王』はこの『界』におけるその管理者の尊称だったのに、全く酷い話だよ。


 慈悲深い彼が、それまで各地に魔素の澱みや魔物の異常発生などを察知しては、土地の者に報告していたことを、魔王軍による襲撃予告だったと言い換え、悪と断罪した。

 

 封印してしまったものの、解除の仕方が分からなかったから面倒臭くなったんだ。だから魔王を悪者にした。

 秘密を知る残りの三人含めた、ローズにとって都合の悪い元カレたちは口封じにまとめて罪を被せて排除した。王子の権力を嵩にきてね。

 

 素直に謝って、封印を解く方法を探していれば、良かっただけのにね……。


 彼の存在は、各国の上層部にしか知られていなかったし、人族との交流もあまり多くは無かったから、様々な誤解もあったようで、意外にもその主張はあっさりと受け入れられた。


 自分の犯した過ちを、偉業へと変換したローズは、そのまま王宮へとのし上がった。

 そして、それっきり知らんぷりを決め込んだ。

 

 王子妃になるぐらい程度には、王子の眼をしっかりと曇らせていたから、そのまま音信不通さ。


 こうして、国中に、いやこの『界』全体の滅びの契機を作ったという大惨事を引き起こした元凶は、その責任を一切取ることなく逃げ切った。


 けれど魔力の根源たる魔王をむりやり封印したことで、様々な弊害が生じたんだよ……。



◆◆◆◆



 一番その泥をかぶったのは、ローズの実家で、その姉が当主となったプルヴィア一族だね。


 冤罪被った聖騎士は、姉と元さや。

 見事な仮面夫婦が誕生したよ。

 ローズの尻拭いもあったにしろ、この2人は最悪の組み合わせだった。


 魔王の不在によって、魔素の新たな供給も、調整も、全てが途絶えてしまった。

 この『界』の気候は、もうめちゃくちゃ。

 それまでの結界も、まともに機能しなくなってしまった。


 元凶のローズに問い合わせるも、宮廷での男漁りに忙しい。

 呼び出しをかけても、無しのつぶて。

 妹の王子妃をやっかみ言いがかりをつけている卑しい姉とその一族だと、中央からも締め出される始末。

 これでは詳細が不明で、解除の手も足も出せない。


 そこで解除は一旦置いて、まずは現状に合わせた結界の再構成を考えることにした。


 当時のプルヴィア一族の聖女の張る結界とは、大きな蚊帳な形状のものだった。

 網目が大きく、大気中の魔素や小さい魔物は中へと取り込めるようにしていて、潜る時には魔物が程よく弱体化するような、そんな簡易的な仕組みのものだ。


 当時はより文化的で豊かな生活を営むために、人族は土地の実りが多く、強力な魔物の発生も少ない、穏やかな結界の内部での生活を選択していた。


 けれど、大気の魔素が濁り澱んでしまったことにより、人族は外の世界を諦め浄化作用を持つ結界中での生活が必然となった。

 穏やかな内を選んだのではなく、外へ出られくなってしまったんだ。


 同時に澱んだ魔素の影響で、これまでのような脆い仕組みでは、網が腐食して破れてしまい、その維持にも支障が出てきた。


 高性能な浄化の機能が追加された強固な仕組みの構築なんて、おいそれとはいかないものなんだ。

 応急処置的に、蚊帳内部に浄化に類する効果を追加しつつ、適切な環境となるよう、調整を嵩ねつつ、日々の腐食の補修を行った。当主以外にも、一族の複数の聖力を持つ複数の女たちの力によってね。誰にも理解はされなかったけど、少しでも人々が過ごしやすい空間を維持し続けるために。


 当時この国は、あらゆる国から非難を浴びたよ。

 これまでのような魔王からの異変の報告がない上、これまで以上に、様々な被害が発生したのだから。

『封印の影響ではないか?』『明らかに弊害が出ている』と問い合わせるも、上層部は完全否定。挙げ句英雄への言いがかりだと逆切れする始末。



 そんなふうにしてこの『界』は、そしてこの国は、乱れに乱れた。



 当時この国で、現実が見えていたのはプルヴィアの聖女たちだけだった。

 彼女たちだけは、身内のやらかしたことの責任を、なんとか取ろうとした。

 どう考えても、このままでは、人族に明るい未来は存在しなかったからね……。


 異国の聖女たちと密かにやり取りをして……、何年もの間結界の研究を重ねて……、そうしてようやく新たな結界を構築することを達成したんだ。


 ただの蚊帳ではない、しっかりと内を守れるだけの丈夫な屋根壁に、内部の大気の魔力循環の仕組みをも組み込んだというような、それまでの結界の概念をも塗り替える、強固な代物を生み出したのさ。


 しかしその維持には、これまでとは桁違いの聖力が、必要とされるようになってしまう。


 一人の力で維持することなぞ、到底不可能だ。

 だから複数の女たちで、補い合いながらそれを行うこととなった。


 一族の女たちは、各国へと渡りあちこちで身内の責を責められながらも、ズタボロになるまで酷使されることを受け入れたんだ。

 

 『界』全体の異変を引き起こした責任を取ってね。



 けれどそのような日々が長く続けば、次第に無理が祟るようになるよね……。


 いつまでも、報われることない、繰り返す苦役の日々。攻め続けれれる毎日。

 

 それもこれも一族の恥さらしのせいだが、本人はのうのうと王宮で自堕落な生活を送っている。モチベーションも下がる一方だ。


 そうやって、かつては使命感に支えられていた彼女たちの体力も、気力も、聖力も、やがて弱っていった。



 数十年後、ついに当主の姉聖女が力を使い果たし病に倒れた。その隙に元聖騎士が権力を掌握した。

 自分の浮気を棚に上げ、ローズへの恨みを拗らせた彼は、聖女と言う存在自体に反発を感じていた面倒臭い中年男は、ずっと復讐の時を待っていたんだ。


 彼によって聖女という尊称は剥奪された。彼女たちが主体的に結界を維持する時代は終わりを迎え、より多くの消耗品として使われる聖女、通称『乙女』たちが使役される時代を、迎えることとなった。


 たくさんの女がいれば、1人当たりの負荷も減る、替えも利く。使えないものは新たな『乙女』を産ませる母とすれば良い。


 そういう訳で彼らは、たくさん仕込み産ませ働かせ出荷するという、管理者になったのさ。

 それが司爵。たくさんの血族の妻子を扱う上で、爵位があった方が、何かと面倒が少ないのだろう。ヒト属の社会では。


 血が近くなり過ぎないように、調整はしているらしいけど、なかなか悍ましい一族だよね。


 自分の母や姉や妹たちを、平然と家畜のように扱い管理するだなんて、特殊なお役目を代々引き継いできただなんて、さぞかし質の高い教育を受けてきたのだろうね……。


 けれど皮肉にも、その悍ましい転換は、一族を繁栄へと導いたのさ。


 頭を下げ耐え偲んできた崇高な聖女たちよりも、彼ら管理者が出荷を渋ることのほうが、よっぽど取引先との立場を、改善させたのだから。


 命綱ともいえる結界を維持するには、高額を積んで家畜にお越しいただくしかなくなったのだからね。

 

 ここでようやく正確な状況判断が出来るようになった王家や国内の上層部への影響力も含めて、プルヴィア一族は、強大な力を持つようになったのさ。


 こうなってからでは、元凶のローズの罪を明らかにするよりも、救国の聖女として偶像化しておいた方が、一族にとっても都合が良い。

 

 かくして聖女伝説が、生まれたのさ…。




◆◆◆◆




 レインちゃんの母上は、お勤め開始前の洗脳教育の期間中に、疑問を感じて脱走したようだね。

 身を隠し転々としながら生活を送る中で、父上と出会い結婚した。


 父上は、母上から一族の話を聞いて……、聖女の血筋に頼らない、聖力ではなく魔力による新たな結界の概念を構築したんだ。


 まぁ三百年も前の急ごしらえの術式だからね。

 いい加減、別の方法が見つかってもおかしくないよね。


 彼の発案による、結界装置は試験運用で実績を積み、国の正式認可も受け、魔法伯を叙爵した。

 そして今後は広く国内においても、使われていくはずだった……。


 けれど念願のボルト領での、大幅設置計画を実施中に、何らかの妨害があり、計画は全面休止。


 状況確認と、今後の進捗の問い合わせ中に、大規模スタンビードが発生。



 そうしてレインちゃんの両親、ボルト領の人々、結界の装置、増幅スクロール等、すべては魔物と共に闇の中へと、消え去ってしまった……。


クソビッチ聖女ローズ


魔王と聖騎士、勇者、魔術師、王子と五股。

王子がいない時に四人に詰められたので逆切れして魔王を封印。知らんぷり。


魔王は悪者じゃなくて、大切なものだったから、さあ大変。世界は大混乱だ!


王子の権力でローズそれでも好き勝手。みんなを冤罪で嵌めて知らんぷり。


ローズの姉と一族の女が責任取ってめちゃ頑張るも、ズタボロに。

ローズ元彼の聖騎士は、そんな女たちを結界の道具件孕み袋にしてしまったよ。


それから三百年。レインのママはそんな一族から逃げてきたよ。

パパは新しい結界を作って、ママやみんなを救おうとしたのだけど、邪魔されたよ。

両親は死んじゃったしサンダースさんちも大変なことになったよ!

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