表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/31

レインと悪魔は夜のピクニックに行く①

※説明会で目が滑ります。

読むのが怠い人用に、あとがきに簡単にまとめてあります。


 図書館でのサニーについての話題が尽きたところで、レインは、改めてグループ課題について、考えることにした。ピックアップしたい建築物を探すため、資料を眺めていたところに、ベルから提案された。


 課題はレポート形式ではなく、絵を描くのはどうだろうか。

 どうせならば、皆が知らない魔王城『魔王が封印されている祠』に行って、その絵を描こうと。


 絵画の場合、グループで一枚の絵を描いても良いし、メンバーが一枚ずつ描いても良い。

 トルス兄ちゃんからもらった画材もあることだし、それも良さそうだ。


 封印の地の情報は、秘匿されているのだろう。そんな場所への不法侵入……バレてはいけないが、忍び込むのはおもしろそうではないか。


 想像して描きましたと言えば、問題ない。

 説得力と迫力のある絵が描けそうだ。良い成績が付くかも……。

 レインは賛同することにした。


 『封印の地』という漲るワードに、好奇心が抑えきれず、さっそく今から、下見に行くことになった。

 既に晩御飯の時間に近いが、ベルが弁当を用意してくれているらしい。

 この美食家の、こういう所は準備が良くて有難い。


 いつものようにベルの通学用コートの後ろにへばり付くと、今回は瞬間移動だからと、ベルにマウスピースを嵌められた。


◇◇◇◇



 薄暗い祠は、凍える外気が届かないせいか、意外にも快適な環境だ。

 明りを灯して見て回ると、祠と言うよりも神殿のよう。

 

 入り口は小さな洞穴の様だったのに、中は意外に広く作られており、柱にも繊細な文様がある。状態保護の魔法が掛かっているのか、清潔で静かな空間は快適であった。

 

 大広間のような場所は、上位者の謁見の間の様になっている。


 まさに魔王城といったような趣、レインは存分に魔王ごっこを堪能した。

 日頃の「フハハハハッ」という高笑いの成果が、実るまたとない機会。

 これまで使うことの無かった様々なセリフも、広間の玉座っぽい椅子に座って繰り広げる。


 ベルはひれ伏したり敵対したりと、適切な合いの手を入れてくれた。

 物語の名シーンの再現にも、力を入れ励む。

 叫び過ぎて喉がカサカサになるのを避けるため、飴や水分補給も担当してくれたので、思う存分楽しんだ。


「はぁー、余は満足じゃ。……いい加減お腹空いたなぁ」


「そうだね。レインちゃん、そろそろ晩御飯にしようか」


 日の差さない洞窟の中なのに、庭園のように様々な植物が咲き乱れる広場で、ベルはレジャーシートとブランケットを引いてくれた。バスケットの中には、フライドチキン、フィッシュナゲット、ポテト、保温用容器に入ったスープ、片手で持てるサラダが詰まってた。


 養蜂所の近くで取れるスパイスは、最近のベルのお気に入りらしい。主婦雑誌を愛読しているマダムっぽい発想だ。


 スパイシーでジューシーなチキンはまだ暖かいく、肉汁が溢れそうだ。

 ポテトも外カリの中フワで、芋の風味しっかりして、美味しい。

 ナゲットも、白身の魚に下味のハーブが爽やか。脂がしつこく感じない。

 具沢山のミネストローネで、お腹の芯まで温まる。


「ヒンヤリしていて気持ちいいな。スープがうまい。こういう夜のピクニックも、たまにはいいなぁ」


「違った環境でのご飯もいいよね。一緒に食べるといつでもおいしいね」



◇◇◇◇



「封印の祠に来たわけだけど……そういえば、レインちゃんは魔王と聖女とプルヴィア家についてどれぐらい知っている?」


「あまり母様から聞いた話を覚えていないのだ。確か厄介な一族で……。だから母様は逃げて従軍薬師をしていた時に父様と知り合ったのだとか。

 知らない人にお菓子をあげるよと言われてもついていくな。特にプルヴィア家の人には絶対に。そう教わったな……。それが、聖女となんか関係あるのか?」


 全然参考にならない記憶しか残っていなかった。


「あれは、聖女の末裔なんだよ」


「聖女?」


 プルヴィア家とは、当主以外も直系男子は、貴族籍が残される信仰に関わる特殊な家門。

 祭事を司る一族で、子爵家当主となる家長以外の者でも、『司爵』という独自の叙爵を受ける。


 様々な神を祀るこの国では、特定の信仰や宗派への改宗を迫られることはない。


 けれど絶対不可侵とされる護国の祈りや、様々な儀礼祭事等を、途絶えさせる無いために、それらを司るこの一族は、国が認可した存在として、『司爵』という爵位を与えられている。


 貴族籍に入れることは、伝統を損ねずに正しく文化を受け継がせるための措置であるとされている。


 内部のみで行われている様々な儀礼の、認知は低いが、聖夜祭や、聖愛祭、聖花祭など、この国独自の季節行事に関しては、広く受け入れられている。


 プルヴィア家は、祭事を司ることで崇められているが、内情を知る者からは、堕ちた聖女の末裔、国営の種馬、という俗称でも呼ばれているらしい。


 聖女とは、『聖女物語』の伝説の聖女ローズのように聖力と呼ばれる特殊な力、それを用いて封印や結界を張る特殊技術を持つ女性を指す尊称だ。


 元々は、プルヴィアの血を引く女性は、聖力を発現することが多いことから、聖女の家系として名高く、代替わりごとに一番力のある女性が爵位を受け継ぎ、結界を管理維持する役目を担ってきた家だそうだ。


 現在のように、男性が爵位を継ぐようになった時期やその詳細は不明。

 儀礼や外部交渉の担当者、結界管理者とを分けた故、結界管理者の安全確保のため存在を秘匿した為とも言われているのだが……。




◆◆◆◆


『聖女物語』



 三百年前、当時の聖女たちは、一族で結界を維持し、国の守りを担ってきた。


 結界とは、人の暮らしを守るゆりかごである。

 巨力な魔物の侵攻を抑え、土地の魔素が過剰にならぬようにならし、人々が健やかに過ごせるような、環境を整えるのがその役目。



 しかし、時期当主の妹で聖女のローズは、ある決意をする。


『このまま、結界を維持し守りに徹するばかりで良いのか。今こそ攻めに転じる時である。我らは自然の脅威と戦い打ち勝つべきである。それこそが真の護国であり、発展への道である。魔物の長である魔王を、我が力による封印で弱体化させ、打ち倒すのだ!!』


 そんな彼女の志へ、多くの者が、共感した。


 多くの支援者に支えられたローズは、辺境から来た勇者と、彼の幼馴染である魔術師、そして姉の婚約者であった聖騎士と共に、魔王を討伐するため旅立った。


 やがて苦楽を共にする生活の中で、聖騎士とローズは心通わせ、恋仲となる。

 けれども彼は姉の婚約者。けして許されぬ仲だ。


 ならばこの旅が終わり、大願成就の結果を持って、親や姉に認められよう。

 そして正式に婚約を、と約束を交わす。


 けれども、雪山で遭難しかけて、山小屋に勇者と二人っきりで、一夜を過ごしたローズは、冷えた体を温めるためとはいえ、乙女の柔肌を晒した以上、思いあった聖騎士とは涙ながらに別れることとなる。


 命の危機から救われたことが、きっかけとは言え勇者も、誠実にローズを愛すようになり、2人はぎこちなくも新たな関係を始めることとなる。


 仲間内での蟠りや葛藤、様々な壁や試練を乗り越え、四人はどんどん強くたくましく成長する。


 幾多の困難の果て、魔王の拠点へとたどり着いた四人。


 勇者、魔術師、聖騎士の三人が魔王をひきつけているうちに、聖女の祈りの力による封印の儀を、成功させたのは良いものの、ローズは、命を引き換えにした魔王の最期の反撃に合ってしまい…、彼女を庇った勇者は、不幸にも呪われてしまう。

 

 魔王を沈め、国へ帰還した4人の姿は、国中の皆に祝福された。



 四人は英雄となるも、勇者は呪われ病んだ自分では、ローズに相応しくないと身を引こうとする。

 残された時間がないならばせめて愛しい人には惨めな姿は晒したくないのだと。そのまま振りほどくように王都を離れると、故郷の辺境へ向かってしまった。   国の平和と彼女の幸福とを祈りつつ、静かな終わりを迎えるために。


 傷心のローズは王都に残り、教会にて祈りの日々を送る。国を救った英雄として聖女として、勤めにひたすらに励む。健気な彼女の姿にさらに名声が高まる。


 やがて王宮で務めを行うようになったローズは、ついに王子に見初められ、王子妃という新たな形で、国を守護する礎となる事を、誓うのであった。

魔王ごっこ楽しんでたら、プルヴィア家と聖女の話になったよ。


封印、結界の力を持つ、聖女の家系なのになぜだか男が管理するよ。


『聖女物語』

次期当主の妹ローズは仲間と魔王討伐に向かったよ。

聖騎士の姉の婚約者を寝取り、勇者ともヤって付き合うけど、最終的には王子とくっついたよ。


勇者なら呪われたから辺境に引っ込んだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ