審判の時
目が覚めて起き上がる。寝起きのぼんやりした頭を
横に振ると、目の前に人がズラリと並んでいるのが見えた。
思わず身構えると中心の男(と思われる)奴がニヤリと笑った。
「起きたか、小僧。」
「ここは…?」
見回すと法廷のような場所だった。ただ、テレビとかで
よく見ていた法廷とは全く違う内装をしていた。
俺がいる椅子を取り囲んで、一段高い場所に席がズラリと
並んでいる。
「お前は死んだんだ。」
「何だって…?」
昨日はいつものようにストロング○ロを飲んで、
床についたはず…
「死因はどうでも良かろう。重要なのはお前の処遇だ。」
死後と言ったらやっぱり天国と地獄だろうか。
さしずめ、ここは生前の罪を審判する場と言ったところか。
悪いことはしていないから天国のはずだ。
「天国ですか?」
俺がそう言うと一同が呆れたような反応を見せる。
「バカ言うな。お前は自分の人生を振り返って何かあの世界に残すことはできたのか?」
そう言われるとグウの音も出ない。
「でも、悪事はしていません。」
「確かにそうだ。外界との接触を断ち自分が生きるためだけに行動した。善行もまたしていないのだ。」
男が諭すような口調で言う。
「このままでは、お前は転生も許されないで一生幽霊と
して過ごすことになる。」
「そんな…。」
引きこもってポテチばっかり食らってたのはやはり罪だったか。
「そんなお前に一つチャンスをやろう。」
「チャンス?」
俺が聞き返すと男の横にいた女が小さな端末を投げて寄越した。
「それは、お前の魂の記録を見ることができる端末だ。画面をタップしてみろ。」
画面に触れると、文字がパッと映し出された。
書いてあることはシンプルだった。識別番号と思わしきもの
の横に、カルマ値というものが書いてある。
「お前のカルマ値は0だ。見事だな。」
マジで何もしてなかったのか俺。自分でも恥ずかしくなってきた。
「簡単なことだ。そのカルマ値を1万貯めろ。そうすれば転生させてやる。」
多いのか少ないのかいまいち分からない数字だ。
「何かヒントは…って!」
俺の周囲が禍々しく光り出し、目の前の法廷がすうっと消えた。