第五話:恋の疑問
あれから、俺はいつの間にか眠ってしまったらしく、皆せわしなく荷物を棚から下ろしている。俺も例外というわけにはいかず、一緒になって荷物を下ろそうと席を立とうとした瞬間、
「ねぇ……勇助、何か寒くない?」
弓の声がした。まあ隣にいるからと言えばそこで終わりだが、あまりにも不意な感じがしたのである。
「そうか?別にそんな………、あれ?」
俺はいち早く異常に気がついた。
「お前、顔色悪いぞ……?」
「えっ………」
弓はとっさに自分の顔に手をあてたが、どうみても健康そうには見えない。というか、かなり危ない気がする。
「そ、そうかなぁ……」
自分の手鏡を見て確認する弓を、俺は力強く、そして静かに言った。
「お前、何か俺に隠してないか?」
気がつくと、俺は弓の肩を両手で強く掴んでいた。
「えぇっ?いや……、無いよ?」
嘘に決まっている。何故なら弓は俺から目をそらしているからだ。おかしい。
「…………弓、言ってくれ」
人生で初めてこんなに真剣な顔をしたことは、恐らく無いだろう。電車のスピードが落ちてきた。もう時間は残り少ない。
「………あのね」
「はーい!もう降りるんで、皆荷物を持ちましたか〜?」
弓が何かを言いかけた瞬間、先生の大声が車内に響く。運が悪い、というか先生が物凄く恨めしい。
「……あ、ほら!勇助君、降りるよ!」
そう言うと、弓は旅行カバンをガラガラと引っ張ってドアへと、逃げるように走っていった。
「おい!ゆ………」
俺の呼びかけは虚しく、皆の話し声に掻き消されてしまった。
「こら、新岩!何やってんだ!早く降りろ!」
「す、すいません!」
俺は何とか下車できたが、さっきの弓の、あのね、という言葉がずっと頭でリピートされている。あのとき弓は何を言おうとしたのか?なぜ、逃げるように下車したのか?いつまでも胸に残りそうで、少し嫌になった。