表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学三年の恋  作者: NoRo
2/11

第二話:恋の初心者

あれから数日が経ち、修学旅行前日となった。俺は家で心をときめかせ、旅行カバンに下着やら何やらを詰め込んでいた。

 ちなみに彼女は元気を取り戻し、いつも通りの笑顔に戻ったので、俺は一安心というところだ。

 一通り荷造りが終わったので、俺はパソコンを開いてみた。あまりメール等は得意ではないが、一応タイピングはできるので、メールアドレスも持っている。

「なんだ一通だけか……」

 微妙に切なくなるのは俺だけか?

「弓か……」

 彼女からメールが届いていた。しかも五分くらい前にきているではないか。

『こんばんわ!荷造り終わった?』

 やはり、こういう会話をしている時が一番癒される。

「『ばっちり、そっちは?』と……」

 現状報告をし、更に相手の話題へとつなげるのは、会話を弾ませる基本であろう。

 俺は修学旅行のしおりを読みふけっていると、彼女からのメールが返ってきた。だいたい三分くらいの間隔である。

『まだ準備中〜。そういえば列車の座席どーなんだろうね?』

 列車というのは、行きと帰りの列車の事で、行きと帰りとでは座席が違うらしい。それにその座席というのが全くのランダムらしく、当日に先生が決めてくるという、生徒の人権全て無視な決め方なので、その方針が発表された数日前には、クラス中が揉めに揉めた。

「『わかんない。俺は窓際がいいな』と……」

 それにしても、何とも真面目な文章である。まるで作文を書いているような感じだ。これが彼女とのメールでいいのか?こんな境遇は初めてなのでよく分からないが、あまりソフトな文章とは思えない。

 修学旅行の前日の出来事であった。『一緒に座れたらいいね(笑)』

 ああ、やっぱり付き合うっていいなと、感じさせてくれる一文だが、最後の笑というのが気になる。一緒に座りたいのか、座りたくないのか?

「『(笑)って何?』」

 ちょっときつかったか?いや、でも真実を知るには一番てっとり早い方法だと思う。

 ……返ってこない。急に不安が押し寄せてきた。その瞬間、メール着信音がなった。

 正直ホッとした。

『んー……、特に意味はないっ!何かあった?』

 特に意味が無いならあの間はなんだったのか。

「『いや、なんとなく』と」

 支離滅裂になってきた。でも、これでいい。こんなほのぼのしたメールはとても心地が良い。男友達とのメールは、罵詈雑言が飛び交う無法地帯となんてしまうので、こういうメールはとても新鮮である。

『そっか、勇助の口癖だしね』

 これは呆れられているのか?それとも他の意味があるのか?

「『別にいいじゃん』と」

 何度も言うが、癒される。もうパソコンの画面から、マイナスイオンが出まくってるような気がする。

『わかった!明日早いからもう寝るね。遅刻しないように!おやすみ〜』

 そういえば、既に時計は夜十一時を回っていた。もう寝なくては。電車で居眠りしてしまう。

「『おやすみ』と」

 多分見てくれないだろうが、ここら辺は礼儀というものである。

 パソコンの電源を切った俺は、ベッドに寝転がり、修学旅行のしおりを読み始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ