第十話:恋の発見
二階へ上がると、一階よりも美術品が多く展示され、一見すると休憩コーナーは近くに見当たらない。仕方がないので、先程受付にあったガイドを持って来て正解だった。
だが、描かれている地図はお世辞にも丁寧とは言え難く、大まかな位置しかわからない。
「えーと……、こっちか……」
まずは、一番近くの休憩コーナーを目指す。少し歩くと他の組の人達が、大きな骨董品を見て話していた。
「これって三百年前のだって〜」
「へぇ〜。そういや何で三百年前ってわかるんだろう?」
「だってここに書いてるもん」
いや、そういう事じゃないって。と思わずツッコミたくなったが、今は別のミッションがあるため、その場を後にした。
更に歩くと、最初の休憩コーナーがあった。それにしても、かなり目立つ感じの場所にある。どうも秘密の事を話す雰囲気は漂っていない。それなら弓はここにいないのか?それに弓は、骨董品コーナーの近く、とは言ってない気がするのでここはボツ、ということになる。
さて、次の場所はというと、割と近くにあった。ここからでも十分目視できる。俺は第二の休憩コーナーへと足を運んだ。
結果的に言うと、誰もいなかった。というか、清掃中だった。何となく、切ない気持ちで一杯である。落ち込み気味で、腕時計に目をやると、もうタイムリミットまで十分しか無い。だが俺はあまり心配にはならなかった。なぜなら、最後の休憩コーナーには必ず、弓が待っているからである。
ガイドを見てみると、二階の端の方にあるのがわかり、また弓の場所選びに納得した。この場所ならあまり人目には付かず、秘密とやらを話しやすいからだ。
俺は目的地に向かうと同時に、弓の話す秘密をあまり聞きたくは無いと、密かに心の奥で思い始めた。まさか、このタイミングで別れてくれ、等と言われたらこの修学旅行は、俺にとって辛い修行になるのは間違いない。
そう思い始めたが最後、めっきり行きたくなくなってしまった。だが行かなくては、弓を裏切る事になる。もし違う内容だったら?何てことない話だったら?そうだ、さっきはお互いに嫌な思いをしたので、互いに謝罪出来る空間を作りたかったのであろう。と、都合良く解釈し、弓が待つと思われる場所へと、小走りで向かう。
一分程経っただろうか。俺は目的地の休憩コーナーへとたどり着いていた。近くには絵画がたくさん展示されている。そういえば、弓は絵画コーナーの近く、とか何とか言っていたのを、今頃思い出す俺の頭は相当使えない事が、この瞬間確認された。
休憩コーナーの前には白い壁があり、外からは確認出来ないようになっている。俺はゆっくりと中の様子を確認しようと、中を覗き込んだ。
「……あれ?」
中には誰も居らず、花瓶だけが寂しく置いてあった。おかしい。これは弓に騙されたとしか思えない。
この俺が珍しく憤慨した。後で文句を言ってやろうと決意し、一階に戻ろうとした矢先の事である。
「勇助、何で帰ろうとするの?まだ何も話してないよ?」
その人物は、聞きなれた声で俺を呼び止め、見慣れた微笑を浮かべていた。