表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
広瀬千香子の非日常  作者: 飛鳥
第二章 須賀明
8/9

調査内容

八話目です。書き終わってないので投稿が不定期になると思います。

 混乱している私を置いて須賀さんはお茶を入れてくると言ってキッチンへ向かってしまった。手伝いを申し出たが断られた誠さんが教えてくれる。


「すいません。先に言っても混乱させるだけだと思いまして、黙っていました」

「視線は気のせいじゃないんですね。なんかいるんですね」

「はい。ここには付喪神と呼ばれる、長い年月が経過した器物に宿る妖怪が多くいます」

「須賀さんは気付いてないんですよね」

「はい。ですが直感で分かるのか、こういった物ばかりを買うので、この家にはもはや付喪神がいない物のほうが少ないくらいになっています」

「直感パネェ」

「人に友好的な存在ばかりなので気にしないでください。先輩にはバレないようにしたいんです」

「分かりました」

「待たせたな!お茶淹れて来たぞー」


 見えなくても直感で分かるとかヤバい。もしかしてこの湯呑みにも付喪神がいるのかな、と思いつつお茶を頂く。お茶が凄く美味しい。須賀さんは茶道とかやってるのかな。


「凄い美味しいです。茶道とかやってるんですか?」

「やってないな。何でか皆言うんだよ。アタシが淹れたお茶は美味しいって」

「須賀さんの特技だね」

「照れるなー」


 やってなくてもこんなに美味しいんだ、と思っていると、側に置いてある急須に和服を着た小人が座っていた。


「ゴハッ!?」

「千香ちゃん大丈夫?」

「ティッシュ使ってください」


 誠さんからティッシュを受け取りつつ小人を見る。私の反応に気を良くしたのか小人はサムズアップして消えた。どうやら付喪神が憑いていたのは湯呑みではなく急須だったようだ。ふざけんな。

 吹き出したのを誤魔化して話を進める。私がオカ研に入った理由として肝試しの話をしたところ、須賀さんが反応した。


「千香子ちゃんと誠吾も行ってたんだな、学校の裏山。昔からあそこは出るって有名だったんだ」

「須賀さんが行った時はどうだったんです?」

「アタシの時はな、何も出なかったんだ。元々山に住み着いていたであろう動物まで。まるで、誰かが追い払ったように」


 その言葉に、誠さんが少し肩を揺らす。わざわざ誰かが追い払ったって言うことも直感だろうか。何も出なかったのは十中八九誠さんが追い払ったのだろう。もしかして、そこであの猿の化物と何かあったのだろうか。そうだ、クロのことも聞いておかないと。


「あの、知り合いが犬の妖怪に守って貰ったって言ってたんですけど」

「ふむ、犬か…。犬は、世界中でいろんなヤツがいるから絞るのは難しいかもしれないな。日本では送り犬や犬神、狛犬なんかもそうだし、北欧神話や中国とか犬の怪物や伝承はあるが」

「犬はそうなんですけど、黒い犬なんです」

「黒い犬なら、ブラックドッグがあるな。ヨーロッパに伝わっていて、黒い犬の姿をした死を司る不吉な妖精だと言われている。でも、人を守るなら違うと思うぞ」


 そんなに犬って神話とか伝承に出てくるのか。前に調べた時は日本のしか調べてなかったな。ブラックドッグは見た目的に似てると思うので今度調べよう。


「それで、明日から何の調査に行くんですか?まだ僕も知りませんよ」


 誠さんの言葉に良くぞ聞いてくれた、という顔になった須賀さんは自信満々に言う。


「ふっふっふ…今回調査するのは…ズバリ!!『百キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん』だ!」

「な、何ぃー!?『百キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん』だってぇー⁉」


 いや何それ。心の声が顔に出ていたのか、誠吾が驚愕した表情のまま言ってくる。


「知らないのか千香ちゃん!『百キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん』を!」

「知らないわよ、そんな何とかおじさん」

「何とかおじさんじゃなくて、『百キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん』だ!!」


 お前それ言いたいだけだろ。


「『百キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん』は、名前通りの怪異だと思ってくれていいぞ。それの目撃情報が頻繁に寄せられている高速道路があるから其処へ向かう」


 わざわざ二泊三日でその何とかおじさん探しに行くの?やだなー。


「それ一つだけではないでしょう。もう一つを言ってあげてください、先輩」


 そっか。泊まりでネタ探しに行くくらいだもんね。そりゃ何とかおじさんだけの筈がない。誠さんの言葉に嬉々として須賀さんがもう一つの調査内容を話す。


「もう一つは…『山犬トンネル』だ!」

「山犬トンネル?何それ、千香ちゃん知ってる?」

「アンタが知らないやつを私が知ってると思う?」

「聞いたことがあります。何でも行くと大きな山犬に襲われたり、怪奇現象が起こるとか。その筋の人には危険だと有名な心霊スポットです」

「そう、その山犬トンネルに行く!」


 山犬トンネルねえ。熟と私には犬と関わりがあるように感じる。


「ですが先輩、本当に山犬トンネルに行くのですか?行方不明者も出ているという話ですが。考え直したほうがいいのでは?」

「これも取材の醍醐味だろ?いいじゃないか、頼むよ」

「くっ、しょうが無いですね。分かりました、行きましょう」

「よっしゃ!」


 チョロすぎるよ誠さん。そんな危険な所ならもうちょい粘ってくれても良かったのに、須賀さんが首傾げて頼んだら即落ちだった。


「ねえ、誠さんって須賀さんのことが好きなの?」

「そうだよ。高校の時に一目惚れしてからずっと好き。好き過ぎて担当編集になるくらいだから筋金入りだな」

「告白しないの?脈ありそうだけど」

「今の関係を壊したくないんだってさ。振られると勘違いしてるみたいで、大丈夫だって言っても信じてもらえないんだ」


 小声で誠吾に聞くと思ったよりも凄い答えが返ってきた。好きだからって仕事決めるのはちょっとやり過ぎだ。それにしても焦れったいな、早く告白しちゃえばいいのに。そんな事を思っていると、何やら声が聞こえてくる。


『行かないでください、三日も貴方様に会えないなんて!』

『杖は持って行くのでしょう!ズルいですよう!』

『寺の子、お前もちゃんと止めてくれ!』

「ちょっ、何これ」

「この家にいる付喪神だ。みんな須賀さんに懐いてるから大丈夫」

「うわぁ。あんなに群がってるのに全く気付いて無い。見えないってホントだったんだ」


 わらわらと小さい和服を着た小人やら動物やらが須賀さんに集まって来た。どうやら旅行に行かせないようにしたいらしいけど、全く気付かれないから何も出来ないようだ。誠さんも須賀さんにバレないようにしたいって言ってたし、申し訳無いけど何も言わないほうがいいよね。こんなに沢山いるのに、物凄く懐かれてる須賀さんは何をしたんだろうか。

 その後も須賀さんは付喪神たちに気付かず、持ち物や集合場所の確認などになり、明日のために早めの解散となった。何とかおじさんと山犬トンネル…明日からどんな三連休になるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ