オカ研創始者
第二章です。まだ全部は書けてないので毎日投稿とはいかないのですが、よろしくお願いします。
「おはよう、千香ちゃん!」
「おはよう、誠吾」
挨拶を返して席に座る。新しい私の日常だ。
「あとで部活のことで話したいんだけど、いいかな?」
「ええ、いいわよ」
肝試しの後遠山さんとは話しておらず、私が勝手にはぐれて怪我をしたという事になっている。別に訂正する気はない。もう関わらずにいけたら一番良い。遠山さんはあれから誠吾にもあまり話し掛けなくなった様だ。私が仲良くなったからかな。
誠吾とはこうして、たまに部活、と言ってもまだ人数が足りなくて廃部寸前なのは変わってないのだが―の話をすることもあった。主に人数を増やすためにはどうするかとか、この学校には結構幽霊や妖怪が多いとかそんなことだ。
今回は何だろうか。この学校にいる幽霊を根絶やしにするとかだといいな。じゃないとそろそろ私の心臓が持たない。まあ、今はクロが名前をあげたことで強くなったので、夜だけではなく昼間からも守ってくれるようになったので前より安全になったのだが。
放課後、部室として使っている空き部屋に集合する。さて、今日は何だろうか。肝試しで行った山のことかな。あそこにいる奴は私達二人でも問題ないらしいけどどうなんだろう。一応人を食べようとしてくる奴がいるから、他の被害者が出ない内に何とかしたいんだけどな。
「千香ちゃん、今度の三連休って予定空いてる?」
「空いてるけど、どっか行くの?」
「須賀さんが今のオカルト研究会のメンバーに会いたいって言い出して、誠兄ちゃんが乗り気なんだ。ネタ探しの調査にも行くらしいから、出来れば三連休泊まりで行ってほしいみたいで…」
「灯先生と三連休…!行くわ」
「即決だなぁ。そんなにオカ研は興味なかったのか」
「アンタが何も知らないと思ってたからね。毎日しつこいったらありゃしなかったわ」
「それはごめんって」
灯先生と会えるだけではなく三連休ずっと一緒とはファンにとっては堪らないわね。
「もし金曜も放課後空いてたら須賀さん家に集まって顔合わせとかあるけどどうする?」
「金曜ね、問題ないわ」
「了解。じゃ詳しくは後で連絡するな」
「ええ」
今日はそれで解散になり、帰路に着く。灯先生の自宅かぁ。少し、いやかなり楽しみだ。
あっという間に金曜日になった。放課後に誠さんの車で灯先生の家に送ってくれるらしい。一旦家に帰り制服から私服に着替え、誠さんが到着するのを待っていると、目の前に七人は乗れそうな車が止まる。中には誠吾と誠さんがいた。そういえば、五人兄弟で両親が乗るならちょうど七人乗れないとだめか。
「千香ちゃん、お待たせ!」
「そんな待ってないわ」
「いきなりすいません。今日と明日からの三連休、よろしくお願いします」
「誠さん、お久しぶりです。こっちこそ、灯先生の家に行けるなんて夢みたいですよ。よろしくお願いします」
誠さんの車に乗り込み、灯先生の家に向かっていると、クロが膝に頭を乗せてきたので撫でてやる。しばらく撫でていると、誠さんが話し始める。
「広瀬さん、明先輩の家に行くにあたり注意事項がいくつかあります。まず、クロのことは話すのは結構ですが、憑かれているのは貴方ではなく知り合いにしてください」
「どうしてですか?」
「先輩は霊や妖怪の類が全く見えないんです」
「え」
「霊や妖怪が大好きで部活も創設してしまうほどですが、一度も見た事はありません」
「いやいや、誠さんもいるのに一度も無いっていうのは流石に無いと思うんですけど」
「先輩に害を与えようとする類のは全て僕が排除していたからという事もありますが、それ以前に、先輩は零感なんです」
「零感?」
「見るどころか触れない感じない人成らざるものたちへの力がマイナスまでいってるんです」
「それはなんとも…」
「ただ、直感はそこに幽霊がいるなど分かってしまうくらい鋭いので、何か相談するのも良いと思いますよ。きっと先輩なら素晴らしいアドバイスを仰るでしょう」
まさかオカルト研究会を作った人に霊感が無いとは思わなかった。それにしても肝試しの時からだけど誠さんの灯先生推しは何なんだ。まさか灯先生が小説家になったからって担当編集者になったとか言わないよね?
そうしてる内に灯先生の家に着いたようだ。結構綺麗なマンションで、防犯もちゃんとされているらしい。誠さんがチャイムを押すと、程なくしてドアが開いた。
「待ってたぞ!よく来たな、今のオカ研メンバー!」
そう言って迎えてくれたのは、洋服の上に羽織りを着た、肩までの黒髪を結び、丸眼鏡を掛けた女性だった。しかしそれよりも、手に持った持ち手の部分が鳥の顔になっている杖に目が行ってしまう。やはり普通の人とは違う雰囲気を持っている気がする。この人が、あの灯先生!
「広瀬千香子と言います。灯先生に会えるなんて歓迎です!よろしくお願いします」
「久しぶりです、須賀さん!誠吾です!」
「おお、よろしく!誠吾も久しぶりだな。まずは上がってくれ。話はそれからだ」
そう灯先生が言ってくれたのでお邪魔する。玄関に入った瞬間に、全身に寒気が走る。まるで、何人もの人に見られているような視線が四方八方から感じる。慌てて周りを見てみたけど、私たち以外は誰もいない。強いて言えば、靴入れの上に置いてある日本人形くらいか。
リビングに行くと、さらに視線を感じる。部屋のいたる所に置いてある古そうな家具や人形、置物から感じるような気がするのだ。どうかしてしまったのだろうか。そんな大勢から見られているような視線から気を反らしたくて、杖のことを聞いてみる。
「あの、灯先生は足が悪いんですか?」
「須賀でいい。足は悪くないんだが骨董品店で一目惚れして買った杖でな。カッコいいだろ?」
そう言って灯先生、もとい須賀さんは笑って杖を撫で、杖は気持ちよさそうに目を細めた。
いやいやいや、ちょっと待って。先程から感じていた、気のせいだと思いたかった視線の正体が理解できてしまった。さっきの家具などから視線を感じていたのは間違いでは無かったのだ。ここには、人ではないものが多すぎるのだ