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魔力色鑑定の秘密

 晩御飯を食べ終わって後片付けをしていると、また蒼竜様が奥の山の方を見ていた。

 蒼竜様の隣でムーちゃんも同じ方向を見ている。

 私もそちらの方を見たが、暗くて何も見えない。

 ふと、大杉町からの帰りに襲われたときのことを思い出し、魔法の色が見えないか確認した。

 すると、山の上の方に赤くて大きな魔法が見えた。

 私は蒼竜様の近くに行って、


「蒼竜様、山の上の方にいますね。」


と言うと、蒼竜様が驚いたように私を見て、


「分るのか?」


と聞いてきた。なので、


「はい。

 なんとなく、あの辺りでぼんやりと赤いのが見えます。」


と返した。すると、


「竜の眼か。

 普通は人間には発現しないのだが、黒山のやつ、何をやったのだ・・・。」


と言った。私は、


「鑑定では、『魔力色鑑定』と言っていましたが、『竜の眼』とも言うのでしょうか?」


と聞いた。すると蒼竜様は少し考えてから、


「・・・!

 なるほど、そういうことか。」


と自分で納得してから、少し私を見つめて、


「竜の眼は、まぁ魔力以外にも色々見えるのだがな。

 山上には竜の眼の力を分割して与えたようなのだ。

 おそらく、他の眼の力も十分な経験を積んだ時に覚醒するはずだぞ?

 ただ、ひょっとしたら眼以外にもスキルを与えられている可能性もあるが、拙者の鑑定では、それ以上は見えなんだ。」


と説明してくれた。更に蒼竜様は、


「ふふっ、ここからは推測になるのだがな。

 竜の眼の力は竜の魂に宿(やど)るゆえ、普通に与えようとしても身に付かんスキルなのだ。

 が、魂の継承先に山上を選んで移譲(いじょう)した上で、魂にスキルを上乗せする裏技を編み出したのではないかと思うのだ。

 もし、この推論が正しければちょっとした騒ぎになるぞ。」


と楽しげに話した。私は少し動揺(どうよう)して、


「それは、私が実験台にされるということでしょうか?」


と聞いた。すると蒼竜様は、


「ふむ。

 確かに、魂の移譲(いじょう)ができるほどの竜はそうはおらんし、親族か、まぁ、後継者がいないにしても竜以外に移譲する酔狂(すいきょう)(やつ)もおるまいからなぁ。

 事実上、実験をするなら山上だけか。」


と肯定とも取れる話しぶりだ。私は背中に冷たい汗をかいたが、蒼竜様は呑気(のんき)に、


「なに、貴重ゆえ殺されることもあるまい。

 (むし)ろ、竜のスキルを色々と(もら)えるかもしれぬぞ?」


と付け加えた。私は、


「そうなるなら、よいのですが・・・。

 (おり)に閉じ込められて飼われるのであれば、それは勘弁(かんべん)です。」


と肩をすくめて言った。

 その後も、二人で山の中腹を眺めていると、炉の辺りから安塚さんが、


「山上くん!

 (なま)けていないでこっちを手伝いなさい!」


と言って怒られたので、私は蒼竜様に挨拶してから、片付けに戻った。


 私が片付けに戻ると、安塚さんと更科さんが少し()めていた。

 更科さんは、


「だから、天幕(テント)を事前に渡してくれれば、設置したと言っているじゃありませんか。

 安塚さんが出さなかったのに、設置していないって言われても困ります。

 てっきり、私は寝袋で寝るものとばかり思っていましたし。」


と怒っている。安塚さんも、


「そんなわけ無いでしょ?

 携帯の天幕(テント)くらい持ってきているわよ。

 ちょっと聞いてくれれば出したのに、ちょっと意地が悪いんじゃないの?」


と怒っていた。私はできれば首を突っ込みたくなかったが、更科さんに、


「薫、蒼竜様に挨拶をしている間に、何があったのですか?」


と聞いた。すると更科さんが、


「和人は、私と蒼竜様と、どっちと一緒に寝たい?」


と聞いてきた。安塚さんが、


「私でもいいわよ?」


と茶々を入れてきた。私は、


「安塚さんとは寝ないとして、どちらでも大丈夫ですよ。

 ただ、大きいテントが二つですから、元々、薫は私と一緒に寝るつもりだったのですよね?」


と言った。すると更科さんは、


「まぁ、そうよ。

 でね、安塚さんも自分の天幕(テント)を持ってきていたの。

 でも、私が設営している時に出さなかったから、てっきり寝袋で一人で寝るものと思っていたのよ。」


と説明した。しかし安塚さんは、


「山上くんは、外には虫がたくさんいるのに、寝袋で顔を(さら)して寝たいと思う?

 こんなこと、ちょっと考えれば分るのに、何も聞かなかったのよ?」


と、私に近づきながら説明してきた。そして、


「更科さん、ちょっとひどいと思わない?」


と、私の右手を両手で握ってきた。

 更科さんが慌てて安塚さんと私の間に入って、


「ちょっと、近い!」


と怒っりながら手を離させた。安塚さんは、


旦那(だんな)の事、信用していないんだ。」


とニヤついていた顔をした。私は話が散らかるので、


「安塚さん、話がややこしくなるので、一旦、私の話は置いておいてください。

 先ず、安塚さんは薫にどうやって寝るかも説明しなかったし、天幕(テント)も渡さなかったのですよね?」


と聞いた。すると、安塚さんはバツが悪そうに、


「山上くんは、薫ちゃんの味方って事なのね。」


と言った。私は眉間(みけん)(しわ)を寄せ、


「仲裁に入ろうとしたのですから、どっちの味方とか、そういうことは言っていません。」


ときっぱりと返した。しかし今度は更科さんが、


「なに?

 じゃぁ、私が困っていても安塚さんに味方するの?」


と少しご立腹(りっぷく)なようだ。私は、


「だから、私は仲裁に入ろうとしているので、私が話を聞いて正しいと思えた方につきます。」


と立場の説明をした。更科さんは、


「正しいかどうかなんて問題じゃないの。

 味方になってくれるかどうかが問題なの。

 解かる?」


と聞いてきた。しかし、ここは曲げられないと思ったので、


「解りません。

 仲裁でないのなら、薫の味方ですが、時と場合によります。」


と言った。すると、安塚さんが、


「それはあんまりじゃない?

 自分の旦那には、何があっても味方して欲しいものよ?

 私だって恋人がいたら全面的に味方でいて欲しいもの。」


と、今度は二人が私を標的にして怒り始めた。私は、


「だから、話がずれています。

 今は天幕(テント)の話ですよね?」


と言ったのだが、更科さんが、


「ちょっと、話をはぐらかさないでよ!」


と怒り始めた。いつの間にか、ここで決着すべき最優先の話題が『敵か味方かの話』にすり替わったようで、私は困惑した。

 そこに蒼竜様が、


「あぁ、見ていられん。

 まず、今夜は拙者と山上が同じ天幕(テント)で寝て、安塚と奥方がもう一方の天幕(テント)で寝る。

 そして、山上は仲裁者として入っているなら、公平さを優先させるのは(もっと)もな話だ。

 安塚も奥方も平等に見てくれんと、仲裁なぞ頼めんだろ?

 最後に、明日は安塚も自分の天幕(テント)を張る!

 これでよいな?」


と言った。私は、途中で全員が同時に寝ることはないので3交代で見張りをするのであれば実は問題ないのではないかとも思ったが、波風も立てたくなかったので、


「蒼竜様の仰るようにします。」


と言ってから、下を向いて何か言いたそうな更科さんに、


「薫?」


と返事を(うなが)した。すると更科さんも、


「はい。

 そのようにします。」


と言った。私が、


「安塚さんは?」


と聞くと、安塚さんも、


「そのようにします。」


と言った。ようやくこの話は一区切りとなったので、私は蒼竜様に、


「仲裁いただき、本当にありがとうございました。」


とお礼を言うと、蒼竜様も、


「なに。

 構わんが、話を先送りにしたに過ぎんからな。

 後でちゃんと話しろよ?」


と言った。私は、二人がまだ納得していない様子だったので苦笑いし、話題を変えるために、


「ところで、今日の見張りはどのようにしますか?」


と確認した。すると蒼竜様が、


「そうだな。

 最初に拙者が見ていよう。

 次は山上だな。

 そして最後に安塚と奥方でどうだ?」


と言った。私はまだ喧嘩中と思われる二人が一緒に見張りをするのもどうかと思ったので、恐る恐る、


「その、出来れば二番目は私と薫でお願いしたいのですが・・・。」


と聞いてみた。更科さんの顔がすっと上がった。だが蒼竜様は、


「夫婦で一緒にやりたいのは分るが、近くに他の竜がおるからな。

 女性が一人で見張りをするというのは、ちょっと大変かもしれぬぞ。」


と言った。私は、


「それはそうかもしれませんが・・・。」


と心配で言うと、更科さんが、


「それだと我侭(わがまま)になっちゃうからね?

 私は最後の番にまわるわ。」


と言って、よく分からないが少し嬉しそうだった。安塚さんを見ると少し困ったような呆れ気味な顔をしていたので、なお心配になった。しかし、蒼竜様は、


「それでは決まりだな。

 なに。

 よほどのことでもない限り、拙者も何かあれば気づくゆえ、安心して良いぞ。」


と言って、話を打ち切ってしまった。

 それから私達は残っていた後片付けをして、見張りの時間を決めた。

 私の見張りは、子の刻(0時)ごろの半月よりも丸みがかった月が沈む直前から始まる。

 更科さんが、


「今夜は月の位置で時間がわかりにくいから、寝坊しないように気をつけようね。」


と言ってきたので、私も、


「そうですね。

 寝過ごさないように気をつけないといけませんね。」


と返した。そして、お休みの挨拶を済ませて蒼竜様を残し、それぞれの天幕(テント)に入った。

 私は喧嘩中の安塚さんと更科さんが同じ天幕(テント)なので心配だったが、天幕(テント)に入ってからも特に口論をしている様子も無かったので、一先ず安心して寝たのだった。


蒼竜様:最初に拙者が見ていよう。次は山上だな。そして最後に安塚と奥方でどうだ?

山上くん:(喧嘩中の二人が一緒は不味いよな。)その、出来れば二番目は私と薫でお願いしたいのですが・・・。

更科さん:(もう、和人ったら、私の味方はしないとか言っていたくせにっ♪ふふっ♪)

安塚さん:(なっ!もう、仲直りの一手?ちょっと女の扱いに慣れ過ぎじゃない?)

ムーちゃん:(キュイ?)

蒼竜様:夫婦で一緒にやりたいのは分るが、近くに他の竜がおるからな。女性が一人で見張りをするというのは、ちょっと大変かもしれぬぞ。

山上くん:それはそうかもしれませんが・・・。(やっぱり喧嘩したままだと心配だし。)

更科さん:(寂しいのは分るけど、)それだと我侭(わがまま)になっちゃうからね?私は最後の番にまわるわ。

安塚さん:(本当に、ちょっかい出したくなるくらい相思相愛ね。)

山上くん:(安塚さんもあんな顔しているし、薫、大丈夫かなぁ・・・。)


本文の山上くん視点の感想と他の人の思いは、結構ずれているようです。(^^;)


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