表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
595/685

掘り始めたが

 雪が積もる木々の中を、蒼竜様、雫様、佳央様と私の4人で移動する。

 足元は、1尺(30cm)を超える雪。

 あちらこちらからザザッ、ザザッと木に積もった雪が下に落ちる音がする。

 陽は、出ては(かく)れを繰り返している。

 そんな中、私達は門から続く、焔太様のものと思われる足跡を追っていた。

 足跡が少し丸っこくて大きいのは、焔太様もかんじきを履いているからだろう。



 周囲の景色に、違和感を覚える。


──こんなところを通っていたのだったか?


 ただでさえ、(ほとん)ど来たことのない山。

 だと言うのに、前よりも雪が積もっている。雪が積もれば、違った場所に見えてくる。

 そのせいで、私の不安はどんどん増していた。


 私は、


「すみません、佳央様。

 前、こんな所を通りましたかね?」


と質問をした。すると、佳央様は、


「多分、通ってないと思うわ。」


と返した。遭難(そうなん)しないか、不安な気持ちが(ふく)れ上がる。

 私は、


「ならば、引き返しませんか?

 迷ったら大変ですので。」


と提案したのだが、蒼竜様が、


「問題あるまい。

 聞いた話からするとではあるが。」


太鼓判(たいこばん)を押した。蒼竜様は、今いる場所を把握(はあく)しているようだ。

 私はそう考え、


「分かりました。

 蒼竜様が言うなら、安心ですね。」


と返すと、蒼竜様は、


「うむ。」


と満足気に(うなづ)いた。



 (しばら)く雪の上を歩くと、斜面が急になるのが分った。

 その足跡が、斜面に沿うように折れ曲がる。

 私は、


「この辺りだったのでしょうか?」


と確認すると、蒼竜様は、


「うむ。」


と同意した。

 雫様が、


「何が出てくんやろな。」


と楽し気だ。私は、


「借金が返せるものならば良いのですが・・・。」


と返すと、雫様が、


「うちは、綺麗(きれい)なもんがええなぁ。」


と笑った。蒼竜様が、


「目的が、違うであろう。」


と真面目な一言。雫様が少しムッとする。

 私は、


「まぁ、まぁ。

 私は、借金の足しになれば何でも構いませんので。」


(なだ)めると、蒼竜様は、


「山上がそれで良いのならな。」


と苦笑い。佳央様が、


「いくら想像しても、埋まってる物は変わらないわよ。」


と指摘。私は、


「そうですね。」


と苦笑いした。



 更に、足跡を追う。

 少し歩くと、傾斜(けいしゃ)の違うところに突き当たった。

 恐らく、ここが崩れた現場なのだろう。

 上の方に、焔太様の気配を見つける。


 蒼竜様が、


「上か。」


と言って、斜面を登り始める。私も、


「はい。」


と同意し、後ろについて登る。

 なんとなく雪崩にならないか不安を感じたので、慎重(しんちょう)に追う。


 その雪を登っていくと、雪の上に腰を下ろした焔太様が休憩をとっていた。

 隣には、紙屑屋(かみくずや)が使うような大きな(かご)が置いてある。中は、空っぽだ。

 除雪をしているだけあって、すぐ近くの斜面は、山肌(やまはだ)が見えている。


 蒼竜様が、


「ご苦労だったな。」


(ねぎら)いの言葉を掛ける。

 焔太様は挨拶(あいさつ)も返さず、


(ようや)く、見えてきた所だ・・・です。」


と面倒くさそうに山肌を指す。蒼竜様は、


「うむ。」


と頷き、私に、


「山上。

 探すとするか。」


(うなが)した。


──単純に見ただけで見つかるようなものがあったなら、焔太様が見つけている筈だ。


 私はそう考え斜面を掘ろうと思ったが、腰にはいつもの(なた)が1本だけ。

 私は、


「すみません、佳央様。

 何か、掘るものは持っていませんか?」


と聞いてみた。すると、佳央様は、


「これでいい?」


と亜空間から(すき)を出してくれた。

 私は、どうしてそんなものを持っていたのだろうと思いつつも、


「ありがとうございます。」 


とお礼を伝えて手に取った。


 まずは、除雪されている所を、慎重に掘っていく。

 軽く掘っても、何も出ない。

 雫様も隣で掘っているたが、同様だ。

 蒼竜様は地面を(なが)め、佳央様は休憩を始める。


 焔太様が、


「山上。

 そんな掘り方じゃ、夕方になっても何も出ないぞ。」


と指摘する。私は、


「もし、水晶が出たら割ってしまうかもしれないじゃありませんか。」


と反論したが、雫様から、


「ここに水晶が出るんやったら、そこら辺に大小、ゴロゴロしとる筈や。

 今、ないんやったら、慎重に掘っても意味ないで。」


反駁(はんばく)された。私は、


「そうなので?」


と確認すると、雫様は、


「大体、こういうもんは層になっとるんや。

 そやから、何か出るまで気にせんでええで。」


と助言した。私は、


「そうなのですか。」


と返すと、蒼竜様から、


「金や銀も、同じ層から見つかるのだ。」


と付け加える。私は、


「その、層という物を探すように掘らないといけないのですね。」


所感(しょかん)を伝え、


「ところで、層とはどのような物なのでしょうか?」


と質問をした。すると、佳央様が手のひらを上に上に重ねる動きをしながら、


「こんな感じで、土や岩が積み重なっている地形を地層というのよ。

 色が変わるのが目印ね。」


と説明した。蒼竜様が、


「少々違うが、まぁ、そのようなものだ。」


と半分だけ肯定する。私は、


「つまり・・・。

 色が変わったら、慎重に掘ればよいのですね。」


(まと)めると、蒼竜様は、


「まぁ、そのような手順でも良いだろう。」


と肯定した。今度は、深めに鋤を使う。

 焔太様が、


「まぁ、頑張れよ。」


と声を掛け、斜面の除雪を再開した。



 半刻(1時間)が過ぎた頃、蒼竜様から、


「山は日が落ちるのも早い。

 もう後半刻(1時間)で、区切りとするか。」


と言ってきた。確かにその通りなのだが、時間を区切られると妙にソワソワする。

 私は、


「もう少し、延ばせませんか?」


と聞いたのだが、蒼竜様は、


「山上には、寒いのではないか?」


と指摘した。だが、今は体を動かしているので、耐えられない程ではない。

 私は、


「まだ、大丈夫ですよ。」


と主張したが、雫様から、


「今は良うても、帰りは寒いで?」


と指摘する。佳央様からも、


「そうよ。」


()められた。3人に言われては仕方がない。

 私は渋々(しぶしぶ)


「分かりました。」


と返事をしたが、半刻(1時間)などあっという間だ。

 私は今まで以上に急いで、次の地層を目指して鋤を振るったのだった。


 今日も短め。。。(--;)


 作中、「紙屑屋」というものが出てきますが、こちらは江戸時代の古紙回収業者となります。

 和紙は()き返す事で再生紙として使えたため、江戸時代の頃は紙屑を買ったり拾ったりする紙屑屋と呼ばれる職業があったのだそうです。

 この紙屑屋、名前に()とは付いていますが、紙以外にも回収していました。

 紙屑屋は落語にもなっているのですが、その中で紙の他、みかんの皮などのゴミも分別する場面が出てきます。

 このみかんの皮、「陳皮(ちんぴ)と言って七味唐辛子や(漢方)薬の材料になる」といったような下りがあるのですが、本当に使われていたなら、衛生的に問題になりそうだなと思うおっさんでした。


・屑屋

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%B1%91%E5%B1%8B&oldid=96589675

・古紙回収

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%8F%A4%E7%B4%99%E5%9B%9E%E5%8F%8E&oldid=96189377

・紙屑屋

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E7%B4%99%E5%B1%91%E5%B1%8B&oldid=99086928

・陳皮

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E9%99%B3%E7%9A%AE&oldid=92373419

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ