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先輩が子供の頃、盗賊団に襲われた時の話(簡略版)

田中先輩の闇期の根底に関わる部分ですが、グロ表現があるので苦手な人はスキップをお願いします。


 あれから2日が経ち、平村(たいらむら)を往復した後、仕事帰りに田中先輩と飲むことになった。


「こないだ大金が入ったから少しくらいいいよな。」


 そう言って、田中先輩は私を葛町(かずらまち)の少し高そうな小料理屋の前まで案内した。

 先輩は慣れた風で、高そうな敷居を軽々と踏み越えていた。でも、私に小料理屋は縁遠いので入るのに戸惑ってしまった。すると先輩は、


「女をエスコートしてんじゃないんだぞ。」


と文句を言いながら、手を引いて店の敷居をまたがせた。先輩は、


「一部屋頼む。料理は適当でいい。酒は、辛口の気分だ。」


と玄関の脇で来客が来るのを待っていた仲居さんに伝えた。

 仲居さんも慣れたもので、


「そいじゃぁ、奥手の二つ目の“朱雀(すざく)の間”に行っとくれ。」


と中で待っている仲居さんに聞こえるように少し大きな声で私たちに伝えた。

 中で待っていた仲居さんは私たちのすすぎを行った後、“朱雀の間”に案内してくれた。


 先輩は、


「どうせ他は誰も見ていないんだ。

 足も崩していいぞ。」


と言ってくれたので、私はあぐらを組みながら、


「田中先輩、恐れ入ります。」


と断った。

 まずはお通しとして、菜の花と油揚げをだし汁で煮た後、鰹節がかけられたものが出てきた。

 先輩は、


「まぁ、初日から変な体験をさせてしまったのは済まなかったな。

 この店は一見さんはお断りの店でな。

 詫びという訳でもないが、これでお前もこの店に出入りできるようになるぞ。」


と言った。私は先輩が何を言いたいのかよく分からなかった。先輩が言うには格を求める人物は世の中に一定数いるので、こういう店で顔で通れるというのは、それだけでアドバンテージになるのだそうだ。

 私は歩荷なのに、アドバンテージになる日が来るのだろうかと疑問に思った。


 そうこうして、しばらく飲みながら山菜の天ぷらや塩鮭の炭火焼など食べたころ、ふと国家魔法師のおじいさんからはどんなことを教えてもらったのか気になって聞いてみた。先輩は、


「冒険者同士ならNGなのだろうが、歩荷(ぼっか)には関係がないか。」


と前置きして語り始めた。


「あれは子供のころ、近所の悪ガキと一緒に貴族街の探索をしていたころだったか、前にも話したが、鑑定魔法で俺に火と闇の属性があることが判明した後の事だったか。

 じいさんは、ちょうどいい比較実験になると言って、全員に魔法を使うための集中の仕方や作法、精霊との意思疎通の方法なんかを教えてくてな。

 じいさんにしてみれば、どんなステータスのガキにどう教えたらどう伸びるのか確認したかったんだろうよ。

 で、俺だけは規格外に魔力量が成長してな。

 レベルを上げる前に基礎部分を大きくするとあれが、、、ステータスが大きく育つのだそうだが、それであれだ。じいさんは俺を大魔法師になれるとかどんどん褒めてな。」


先輩の語りが少し怪しいのはアルコールのせいだろう。私は


「それで?」


合の手(あいのて)を入れると、


「まぁ、この時点でだ。

 俺はな、魔力だけは中級魔法師レベルだとじいさんが言っていたよ。

 そこに、闇、火、水、、、まぁいろいろな初級魔法を教え込まれたんだ。」


と話してくれた。私は、


「初級ですか?」


と聞き返すと、先輩は、


「そりゃ、ガキに教えるんだ。

 暴走して大きな事故を起こさないように、大きな魔法はやらなかったんだろうよ。

 あと、属性が多いのはじいさんが実験材料にされたからだろうな。

 魔法の訓練はやればやるほど身について面白くってな。

 今でも暇つぶしにやることがあるんだぞ?

 あ~、いろいろ魔法で悪さもしたし。」


と語った。私はどんな悪いことをしたのか気になって聞いたのだが、


「いや、まぁ、若気の至りだ。

 本筋じゃないので今度な。」


と言って煙に巻かれた。


「で、俺がみんなよりも一足、どころじゃなかったが、まぁ、少しだけ中級魔法を教わったころ、家が盗賊団に襲われてな。

 小さな靴屋だったから狙いは(うち)じゃなくて、前の大店(おおだな)でな。

 最悪なのは、そいつら、面白半分に父親の足の肉を削ぎ落として俺たちに食わせやがった上に『こいつら外道だ』と言って大喜びしやがってな。

 一応、魔法で追い払おうとはしたが、あんな気持ちでは不発して何の役にもたたなかったんだ。

 その後、やつら、両親を俺に殺させて奴隷の呪いをかけた後、売っ払いやがったんだ。

 奴隷の頃はイラついては平穏だったころを思い出して基礎魔法の訓練をしたものさ。」


 私は目の前の猪鍋(ししなべ)を食べながら語る先輩を見て、先輩はとっくに乗り越えたのだろうと思ったが、私だったらと想像した瞬間に気分が悪くなり、暫く(かわや)のお世話になった。

 先輩はバツの悪そうな顔をしながら、


「悪かったな。

 聞き上手だからつい話しちまった。」


と言って店を出ることになった。


 私は集荷場の二階に社員優遇の格安家賃で住んでいるのだが、結局先輩に部屋まで送ってもらった。先輩は、


「女をエスコートしてるんじゃないんだぞ。」


と愚痴っていた。

 ちなみに会計は二人で銀10匁ほどでかなり高かった。


書き終えた後、冷静に読み返して「これ、さすがにR18だよね」的な体験談になってしまっていたので表現を修正しました。

まだキツいという方がいましたら申し訳けありません。


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