初めて社長と会った件
引き続き不快指数が高めですみません。(--;)
お休みが終わったら、昨日を除いてPV数がほぼ通常運転に戻り、なんだかほっとします。
↑小心者なので(^^;)
* 2019/09/19
誤記修正とルビ強化をしました。
大杉町の冒険者組合で更科さんが少し落ち着いたころ、部屋に二十歳くらいの体格もそれなりにしっかりしている爽やか系の青年が入ってきた。
「先生、しばらくぶりです。
今日は先生が新人冒険者と一悶着あったと言う話を聞いて来たのですが、何があったのですか?」
と、田中先輩に確認した。私は、この人も田中先輩のことを『先生』と呼んでいるのを聞いて、実は田中先輩は高名な先生だったりするのだろうかと思った。
「あぁ、社長か。
こいつらが、ろくでもない方法で溜まったものを発散していたらしくてな。
お前は大丈夫だろうな?」
と聞いていた。この人は、どうやらどこかの会社の社長らしい。
「先生、これだけでは良く分かりませんよ。
まず、何が溜まっているのですか?」
と聞くと、
「そりゃ、あれだ。
性欲だ。手頃な学校の女子を手篭めにして、みんなで回していやがったのさ。」
と答えた。私は、今頃になって更科さんが何をされたかが分かり、憤りを感じた。
すると爽やか系の社長は、
「学生のころは仕方がありませんよ。
若気の至りと言う奴ではありませんか。
僕が学生のころも、半分位はそれで発散していたみたいですし。」
と、悪びれもせずに言った。私の中の爽やか社長の好感度が下がった。
田中先輩が、
「で、社長はどうだったんだ?」
と聞いたところ、
「僕は、学生のころから今の妻と付き合っていましたが、夜遅くに連れ出しては二人で盛り上がっていましたから。
まぁ、若気の至りですよ、先生。」
と返した。
「あぁ、そうだったな。
社長は新人教育中もしょっちゅう、二人でよろしくやっていやがったな。」
と田中先輩も納得したようだ。しかし、私は爽やか社長が奥さんと純愛で結婚した点は好感が持てたが、学生時代、他の女子がされていたことについては、見て見ないふりをしていたようなので、私の中の好感度は下がったままだった。
田中先輩は、
「そういえば、こいつの紹介がまだだったな。
これが例の問題児の山上だ。
今朝、狂熊が出たが、普通に物理でやっつけたぞ。」
と言った。私は田中先輩に問題児といわれて意見したいのを我慢して、
「先ほど田中先輩から紹介に与りました、山上 和人です。
春先から山並運送にお世話になっている、新人歩荷です。
まだ、社会人になりたてですので、至らぬ点などありましたら、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
と、爽やか社長に丁寧に対応をした。好感度が低い相手だからと言って、無下に扱ってよいというわけではない。爽やか社長は、
「君が山上君か。
まぁ、問題児というのは言い過ぎとしても、いきなりレベル制限に引っかかったり、いいとこのお嬢さんをひっかけたり、次から次へといろいろやらかしているそうじゃないか。」
と言ってきた。私がレベル制限に引っかかった事実を知る社長はそう多くない。というか、普通に考えれば、自社の社長ではないのだろうかということに思い至った。私は、好感度云々の事はすっかり忘れ、
「その、どれも流れと言いますか、不可抗力と言いますか、気がつけばそうなっていまして・・・。
社長は田中先輩から経緯は聞いていませんか?」
と言って確認した。すると社長は、
「一応、先生からは報告は聞いているが、先生はいろいろと省略して喋る癖があるので、やはり本人からでないと正確なところは分らないとは思っていたぞ。
折角だ。
今夜、時間があるなら一杯どうだ?」
と、私を飲みに誘った。私は、
「申し訳ありません。
本来でしたら私に断る選択肢なんてありませんが、今日は冒険者組合にお世話になる事件もありましたので、せめて明日の晩で如何でしょうか。」
と言った。すると田中先輩も、
「まぁ、今日は事が事だけにそっとしてやるべきだろうな。」
と同意した。すると社長は、
「まぁ、先生のおっしゃるとおりですね。
では、明日、葛町に用事があるので、その後に呑むとしましょうか。」
と、飲み会の延期を受け入れてくれた。田中先輩は、
「そうだな。
昨日、山で一泊だったので、直ぐにでも風呂にも入りたいしな。」
と言った。この言い回しだと、田中先輩にとっては社長の威光よりも風呂の方が大事という事になりそうだが大丈夫なのだろうかと少し不安に感じたが、社長を見ても、特に怒った様子もなかったのでほっとした。社長も、
「山で一泊か。
そういえば、春高山で研修だったな。
山上君、その辺の出来は・・・、まぁ、明日聞けばいいか。
葛町に戻るなら、そろそろ出た方がいいだろうしな。」
と言った。その後、社長が身元引受人となって冒険者組合を後にし、更科さんを実家の裏まで送った。
私は、本来、更科さんのご両親にお会いするのに買ったはずのだんごの包みを渡しながら、
「今日は大変だったけど、側にいなくても大丈夫ですか?」
と聞くと、更科さんは、
「うん。
家族やムーちゃんもいるし。
和人、今日は元気出たよ?
ありがとう。」
とだけ言って、ペコリと会釈をしてから裏戸を開けて、ムーちゃんと一緒に実家に入って行った。
その後、田中先輩と私は、葛町の集荷場まで帰った。
「今日はまぁ、いろいろあったが、一応、講評しないとか。
あれだ。
今日は途中までは良かったが、最後の威嚇が余計だったな。
そう考えると、不可か。
無論、心情を考えれば仕方ないがな、仕方がないで済まないのが世の中というものだ。
だから、今日のことはちゃんと真摯に受け止めて、次、どうやったら上手く行くかちゃんと考えろよ。」
と、田中先輩から〆めの言葉があった。私も言い返す余地もないと感じていたので、素直に
「精進します。」
とだけ返した。
明日は、田中先輩と一緒に狂熊を売りに葛町の冒険者組合に行く事になった。もちろん、明日、更科さんが来るようであれば、ムーちゃんの登録もすることになるだろう。
こうして、今日は解散となったのだった。
昔は会社案内を見ながら就活している訳では無いので、山上くんは社長がどんな人か見たことが無かったようです。
ただ、実際問題、同じ建物にでもいない限り、社長の顔なんて知らなくても社会人は勤まるわけで・・・。
(↑ぉぃ!)




