更科さんがいじめられていた件
不快指数が高めのお話です。
苦手な人はすみません。
累計PVが1000を越えまして、この場を借りて御礼申し上げます。
あと、昨日95PVものアクセスがありまして、こちらも有難うございました。
今日で私の夏期休暇も最終日。
次回から週末投稿に戻ります。
明日から、朝、ちゃんと起きられるかが心配です。。。
* 2019/09/07
人名を間違える致命的な誤記を修正。
私たちは、咲花村を出て街道を歩き、大杉町に入った。
田中先輩はまっすぐ更科さんの実家に向かっていたのだと思っていたが、更科さんが、
「こっちの道から行きませんか?」
と別の道を指差した。田中先輩は、
「こっちの方が近いだろ?」
と言うと、更科さんは、
「あまり同期と顔を合わせたくないものでして。」
と返した。そういえば、町には言ったころから更科さんはずっと顔を下に向けている気がした。更科さんは実家のある大杉の冒険者組合ではなく、隣の葛町の冒険者組合に登録していた事を思い出したので、冒険者学校で黒歴史でも作ったのだろうかと思い、田中先輩に小声で、
「そこはきっと薫にも事情があるのでしょうから、黙ってあちらの道にしませんか?」
と言った。田中先輩は渋々と言う感じで進行方向を変えると、更科さんは
「すみません。」
と言って田中先輩に謝っていた。しばらく行くと、同い年くらいの冒険者五人組と遭遇した。
四人が剣を腰にぶら下げており、残り一人は杖をもっているので魔法師のようだ。
五人の中で一番偉そうな頭っぽいのが、
「おい、久しいな。
ちょっと来な。」
と、更科さんに声を掛けてきた。更科さんは嫌そうな顔をして、
「すみません。
今はちょっと。」
と返すと、他の背の高い一人が、
「来なよ。
判んだろ?」
と言って田中先輩や私に一瞬だけ視線を送ってきた。更科さんに、暗に『ばらされたくないだろ?』と言っているようだった。私は、
「薫は嫌がっているじゃないですか。
ここはお引き取り願います。」
と言うと、頭っぽいのが、
「ひょっとして更科のこれか?」
と言って親指を横に立て、続けて、背中の荷を見て
「歩荷か。
おめぇ、怪我したくないだろ?
歩荷も多少、体を使う仕事だから自信があるのか知らんが、儂らには勝てんぞ?」
と諭すように言ってきた。私は、
「冒険者の方なら、さぞお強いのでしょうね。
でも、今は私たちと同行していますので、顔を立ててもらえないでしょうか。」
と下手に出て返事をした。すると、五人の中で一番がたいの良さそうなやつが、
「お前、喧嘩売ってんのか?
人が下手に出ればいい気になりやがって。
こいつはな、冒険者学校の同期なんだよ。
判るだろ?
同期のお付き合いってやつさ。」
と言ってきた。私は徐々にイラついてきていたが、なんとか平静を装いながら、
「同期のお付き合いというのは、どのようなものですか?」
と聞いた。すると、背の高いのが、
「察しの悪い奴だな。
こいつの実家、家柄がいいだろ?
そういう奴には何をやっても『無かった』ことになるんだぞ?
そろそろ察しろよ。」
と言ってきた。更科さんがどうしようもなく逃げ出したいような表情をしていたので、酷いことをしていたのだけはよくわかった。私は怒りで顔を赤らめながら、落ち着いた口調で取り繕って、
「何が無かったことになるのですか?」
と聞くと、更科さんが我慢できずに、
「和人、ごめん。
これ以上は聞かないで!」
と、泣きながら後ろからしがみついてきた。すると、頭っぽいのがニヤニヤしながら、
「おめぇ、何泣かせてんだよ。
クフッ、今泣くか、後で鳴くかか。
どうせ、おめぇも散々楽しんでんだろ?
なぁ、穴兄弟。」
と言った。私は『穴兄弟』が何をさしているかは判らなかったが、ろくでもないことを指しているのだろうと、思うと心の底から苛立ちが湧き上がってきた。
私は、
「もう、黙れ。」
と一言、腹の底から威圧した。すると、さっきまで静観していた田中先輩が慌てて、
「お前、それやり過ぎだぞ!
まわり見ろ!」
と言って、急いで周囲の人に駆け寄っては気付けの魔法で意識を戻していた。私は何がなんだか良く判らなかったが、私の前方、2~3丈ほどの人が気絶している様子だった。更科さんは、私の後ろからしがみついたまま、キョトンして私の顔を見ていた。足元でムーちゃんもキョトンとしている。
田中先輩は、私がまわりを見たのを確認してから、続けて、
「街中であんな本気の威嚇をする奴があるか!
気の弱い人が混じっていたら、死人が出ていたぞ!
だいいち、空気まで震えるような威嚇なんてどれだけだ!
・・・まぁ、気持ちは分からんでもないか。
あの五人組にはいい薬だったろうがな、時と場所は考えろよ。」
と怒られた。途中から勢いがなくなったのは、なにか身に覚えがあったからなのかもしれない。
私は、
「すみません。
あそこまで頭に来ると、次も制御する自信がありません。」
と返すと、田中先輩も、
「あんなことを言われたら、そりゃ今回は仕方ないだろうがな。
流石に被害者が出たから、ちゃんと冒険者組合に報告しておかないとだ。
内容が内容なだけに、ちょっと厄介な事になりそうだが、これから行くしかないか。
普段は制御出来ている体で言えよ。」
と言って、まだ気絶していた五人を起こし、あまり協力的ではない更科さんを連れて大杉町の冒険者組合に出向いた。
冒険者組合に入ると、田中先輩は、受付の男性に
「すまん。
今日は長谷川さんか縦島さんはいるか?
いたら、呼んできてもらえないか。
『ポーターの田中が来た』と言えば会う筈だ。」
と言うと、
「これは、田中先生ですね。
お初にお目にかかります。
早速呼びに行かせていただきます。」
と言って、小走りで呼びに行った。そういえば、里見さんも先生と呼んでいた気がするが、何を教えていたのだろうか。
しばらくすると、さっきの受付の人が戻ってきて、
「では、ご案内します。」
と言って、長谷川さんのいる組合長室に通してくれた。長谷川さんはここの組合長らしい。
「久しぶりだな、田中。
こいつら、何かやらかしたのか?
それともお前か?」
と聞いてきたので、田中先輩は、
「いや、内の山上がな、街中で威圧を使って10人ばかり気絶させたんだが・・・ですが、その報告とだ・・・ですね、こいつ等が冒険者学校時代にろくでもないことをやっていたみたいだったからな・・・ですね、少し説教をだ・・・ですね、してもらおうと思いまして。」
と、普段使わない敬語に四苦八苦しながら概要を説明した。長谷川さんは、
「おまえ、喋れない敬語なんて使われても解らんじゃないか。
面倒くさいし、話も進まんから普通でいいぞ?」
と苦笑いしながら言った。田中先輩は、
「じゃぁ、遠慮なく。
いや、長谷川さんはそこいらの石頭と違って話が分かる御仁なので助かる。」
と、中途半端に丁寧な言葉遣いで、さっきよりは幾分話しやすそうにしゃべっていた。長谷川組合長は、
「山上くんだったかな。
君への説教は田中君に任せることにするよ。
流れから、この五人がきっかけだったんだろう?」
と先読みしてくれた。私は、田中先輩から事前に、『普段は制御出来ているように言え』と言われていたので、
「はい。
お恥ずかしながら、私が至らなかったばかりに、無関係の人も含めて9人ほど、気絶させてしまいました。
その、こちらの五人が私の伴侶になる更科を侮辱しまして、どうにもたまらず、制御できませんでした。」
と話した。長谷川さんは、
「はははっ。
若いというのはよいな。
で、どんな侮辱を受けたんだ?」
と行ったので、単刀直入に、
「『同期の付き合い』で『穴兄弟だ』と言われまして・・・。」
と答えたところ、長谷川さんは未見に皺を寄せ、怒りを押し隠すように五人に向けてゆっくりと、
「お前ら、それは事実か。」
と聞いた。
しばらく、全員が無言でいたのだが、長谷川さんが鋭い視線で一人づつじっくりと目を見ていくと、魔法師の男が沈黙に耐えかねてぽつり、
「事実です。」
と告げた。長谷川さんは、
「分かっているとは思うがな、こういうことがあると学校に優秀な女子生徒が集まらなくなるんだ。
だから学校では、そういうことが無いように指導していたはずだがな。
誰が教えていたんだ?」
と聞くと、頭っぽいのが、若干ふるえながら、
「その、先公にはバレないようにしてたから誰ということはないだす。」
と、語尾を少し噛みながら話した。すると、長谷川さんはそれだけで、
「あぁ、清白先生んところか。
そういえば、昨年度の卒業生の担任だったな。」
と話した。端から聞いていると、なぜこれだけの情報で先生の名前が特定できたのか、さっぱり分からない。さらに長谷川さんは、
「他の奴もやっていたのか?
はっきり言うが、お前ら五人とも『師』の免許は剥奪だぞ。
お前らだけだと割が合わないだろ?
みんな、巻き込んじまえ。」
と言って、他にもいたのか確認していった。更科さんは終始うつむいて泣いていたので、私は軽く頭を撫でた、すると、更科さんは、
「私の事、軽蔑しない?」
と聞いてきた。私は、
「なんで?」
と返すと、胸に額を擦り付けながらむせび泣いたので、また、私は更科さんを少し抱き寄せて頭を撫でたのだった。
冒険者学校の方は、のちに大量の退学者と「師」の冒険者組合資格剥奪者が出ます。
↑山上くんは直接関わる立場には無いので、誰かとの飲み会で聞くはずですが、それはまだ先の話となります。。。(--;)