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ようやく呪詛返しが

 午後一番、先ずは瞑想(めいそう)を行う。

 お題目は、どうすれば呪詛返(じゅそがえ)しが出来るのか。


 一先ず、午前中のおさらいをする。


 上手く行った時と行かなかった時とで、どのような違いがあっただろうか。

 上手く行った例として、先ずは清川様がやった時の様子を思い出してみる。

 確か清川様は、大麻(おおぬさ)で石を撫でるようにした後、大麻を細い(ひも)に引っ掛けるようにして呪詛返しをしていた。

 紐を引っ掛けると良いのかと確認した時、清川様は完全には肯定(こうてい)しなかった。

 何か、条件が違うのだろうか。


 次に、ムーちゃんが成功した時を思い出してみる。

 あの時は、一度ムーちゃんの尻尾に呪いが付いた後、それを払いのけるようにして呪詛返しをしていたように見えた。

 だが、あの時は呪いと術者を(つな)ぐ紐を意識していなかったので、正直言って参考にして良いかは謎だ。


 最後、私が成功した時はどうだっただろうか。

 あの時、私は重さ魔法で呪いを引き剥がし、紐が大麻に絡みついたので、それを振り払うようにしたらできた。


 今、分かっていることは、呪いと術者との間には細い紐があるという事。

 その紐を引っ掛けるような事ができれば、呪詛が戻っていくように思われる事。

 本当はあの紐を手で(さわ)っていろいろと試したいのだが、残念ながらそれは出来なかった。


 そういえば私が上手く行った時、手の返しで大麻についた紐を振り払った後から、古川様の方に戻り始めたように見えた。

 清川様も細い紐を大麻(おおぬさ)で引っ掛けるようにして、呪詛返しをしていた筈だ。

 恐らく、紐に対して振り払うようなことをすると良い筈なのだが、どう条件が違うのかが解らない。


 では、どのようにするのが正解だろうか。

 今、呪いに干渉できる事が分かっているのは、重さ魔法と白魔法。紫魔法はまだ試していない。

 重さ魔法は引き剥がすことは出来るが、清川様から根が残ると言われてしまった。

 白魔法だと、きっと消えてしまうのだろう。

 そうすると、残りは紫魔法だ。


 ひょっとすると、紫魔法で紐に干渉できるのではないか?

 最初に見た時、ムーちゃんは紫魔法を使ったように見えた。


 まだ、私の頭の中はまとまっていなかったのだが、清川様から、


「瞑想はここまでとするかの。」


と終わりを告げられる。

 私はもう少し時間が欲しかったのだが、


「分かりました。」


と返事をしておく。清川様が、


「では、午前中に持ち上げた石で試してみるが良いぞ。」


と少し笑いながら言ってきた。私としては、そのようないじられ方はして欲しくない。

 そんな事を思いながらも、私は、


「分かりました。

 では、これから試してみます。」


と言って石の前に移動する。


 清川様から大麻を受け取った後、一先ず何も考えずに石の上をさっと動かす。

 たまたま大麻が紐に引っかかったようだったので、また手の返しで振り払うと、そのまま呪いが石から離れ、古川様の所に帰っていった。

 古川様が慌てて白い盾を作り、戻ってきた呪いを防ぐ。

 清川様が、


「なんじゃ。

 まだ理解しておらんと思うておったに、もう解っておったか。」


と嬉しそうに話した。

 私は言いづらかったのだが、


「いえ、その・・・。

 たまたまでして・・・。」


と返した。清川様が、


「そうか?

 動きだけ見れば、完全に分かってやったように見えたのじゃがな。

 何が分らぬか、言うてみよ。」


と言ってきた。

 私は、


「まず、私はどの魔法を使おうかと思っていたのですが、まさか大麻を振っただけで出来るとは思いませんでした。

 次に、紐を引っ掛ければ出来るということは分かっていましたが、午前中、清川様はそれでは完全な正解ではないと(おっしゃ)っていました。

 何がどう違うのか、解っておりません。」


と話した。清川様は、


「なるほどの。

 先ず、最初の疑問じゃが、大麻をよく見てみよ。

 (おの)ずと答えが解るはずじゃ。」


と言ってきた。私は何かあるのだろうかと不思議に思いながら、


「分かりました。」


と答え、大麻をじっくりと観察した。


 変わった所はない、只の棒と(さかき)にしか見えない。

 魔法で観察してみる。

 やはり、変わったことはない。

 だが、清川様が言うくらいだから、何かあるに違いない。

 そう考え、大麻をじっくり見ていると、よくよく見ると榊の部分が薄っすらと白く光っているのが分かった。

 私は、


「これは、なるほど。

 白魔法が掛けられているのですか。」


と見たままを話した。すると清川様は、


「うむ。

 きちんと清めた榊には、白魔法のようなものが周りに(しょう)ずる。

 邪というか、まぁ、(のろ)いを(はら)う力とされておるが、これは一種の結界であると判明しておる。」


と説明した。

 私は、


「それで、紐に干渉(かんしょう)が出来たのですか。」


と納得したのだが、清川様が、


「なんじゃ。

 気がついたから『なるほど』と言うたと思うたに、話しすぎてしもうたか。」


と苦笑いした。古川様が、


「私も、・・・てっきりそうだと思った・・・わ。

 山上に、・・・(だま)された・・・かな。」


と人聞きの悪いことを言ってきた。私は少し早口で、


「その様に言われましても、私は見たままを伝えただけでして。

 決して騙そうなどと考えてなどおりません。」


と否定する。

 古川様は、


「冗談・・・よ?

 私達が勝手に、・・・勘違いしただけだから・・・ね?」


と言われてしまった。姉がいたら、こんな感じで揶揄(からか)われれるのだろうか。

 私は、


「そうでしたか。」


と苦笑いで返し、清川様に、


「それで、次の回答はどうなりますか?」


と質問した。清川様が、


「そうじゃな。

 まぁ、同じ様に引っ掛けたつもりでも、角度によっては返らぬ事があるのじゃが、古川が山上は脳筋と言っておったからの。

 数をこなさねば、納得行くまい。」


と答えた。

 私は、


「数をですか。

 言葉では説明しづらいということですか?」


と聞くと、清川様は、


「そうじゃな。

 少し、感覚的なところとなる。」


と答えた。

 清川様は(てのひら)を大麻に見立てて振りながら、


「この角度では返る。」


と説明したかと思うと、掌を別の傾きで振りながら、


「この角度では返らぬ。」


と説明した。更に、先程の二回の中間くらいの角度だろうか。また掌て振りながら、


「この間の角度では、呪いの掛かり具合によっては途中で失速する事もある。

 この場合、無関係な人にへばりつくことがある。

 このようなことになれば、迷惑千万(めいわくせんばん)・・・と、まぁ話がズレたが、角度の説明はこんな感じじゃ。」


と付け加える。私は掌の角度で説明されても無理だと判断し、


「なるほど、それは感覚で憶えるしかありませんね。」


と顔を少し(しか)めて返す。

 清川様が、


「そうであろう?

 じゃから、残りの石を使って試してみるが良いぞ。」


と指示を出す。


 残りの石も、呪詛返しで解呪していく。

 確かに、角度によっては返らない場合があるのを確認する。

 私は、


「呪詛返しは、奥が深いですね。」


と感想を言うと、清川様は、


「何でもそうじゃ。

 (もち)餅屋(もちや)と言う。

 誰でも出来るなら、本職など要らぬわ。」


と苦笑いしたのだった。


 本日、江戸ネタは仕込んでいませんでした。(^^;)


 なお、今回の呪いの紐を引っ張ると戻っていくというのは、掃除機等の電源ケーブルに着想を得ています。なので、上手に引かないと戻っていきません。

 この理屈だと近づけば紐がたるんでしまう筈ですが、このあたりは上手く縮むと言うことでお願いします。ご都合主義というやつですね。。。(^^;)


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