普段の佳央は
私は、清川様、古川様、赤竜帝ときて、田中先輩に銚子を渡した。
そして、
「それで、以前このお店には、どのような理由で?」
と雑談を始めた。
田中先輩が、
「そうだったな。
確か、30前だったから29の時か。
前にも話したかもしれないが、水神との会合についていったことがあってな。
その帰りに里に着いた後、ここで飲んだんだ。」
と話した。赤竜帝が、
「うむ。
確かに、この場所だったな。
城からこっそり抜け出して、ここで合流したのだったか。」
と楽しそうに話した。私は、
「そうやって、昔から色々と迷惑をかけていたのですね。」
と赤竜帝に素直な感想を言うと、赤竜亭は、
「それでは、まるでいつも迷惑をかけているみたいではないか。」
と面白くなさそうな顔をした。
私は、
「つい先日の夜もあったではありませんか。
勿論、地下牢の揚屋に入っている私のところに顔を出してくれるのはありがたかったのですよ?
ですが、誰にも言わずに来たものですから、牢破りではないかと騒ぎになっていたではありませんか。
どう考えても、金石様に迷惑をかけしていたではありませんか。」
と指摘した。赤竜帝が、
「そんな事もあったか。」
と目を逸らす。
蒼竜様が、
「まぁ、いつもの事だ。」
と苦笑いしたのだが、紅野様は、
「それでは規律が乱れるではないか。
もう少し、上手く立ち回ってもらわねば。」
とお小言だが、やるなとは言っていないようだ。
紅野様は、バレなければいいという立場なのだろうか。
私は、
「それで、外で何かあったらどうするのですか。」
と心配したのだが、蒼竜様は、
「里の最高戦力なのだ。
暗殺しようにも、刃が通らぬ。」
と言った。
思い返せば、蒼竜様は寿司屋の時にも似たようなことを言っていた。
私は、
「そう言えば、前にも言っていましたね。」
と返したのだが、田中先輩は、
「そうだったか?」
と忘れているようだ。
私は、
「確か、雫様だったかが何かを言ったら護衛の話になりまして。
田中先輩が壁にもならないと言うと、蒼竜様が赤竜帝よりも強いくせにと返していたと思います。」
と説明した。赤竜帝も、
「そうであったな。」
と同意する。田中先輩は、
「なら、あったんだろう。
が、酒を飲んだ後の話はどうも記憶に残りにくくてな。」
と苦笑いした。
確か、あの時は飲み始める前だったように思ったが、ここは突っ込まないことにした。
水神の話はもっと聞きたかったが、話が一段落してしまったので、紅野様にお銚子を持っていく。
紅野様は、
「して、普段の佳央はどんな感じなのだ?」
と聞いてきた。
佳央様が紅野様に、
「本気で聞いてるの?」
と嫌そうな視線を向ける。
私は、
「まぁまぁ。」
と佳央様を宥め、どうせ話すなら気が抜けている時の話がいいだろうと思い、
「家では、面倒くさいと言っていつも竜人化を解いていますよ。」
と話した。
すると紅野様は笑顔で何か言おうとしたが、蒼竜様が一気に険しい顔に変わり少し大きめの声で、
「なぬ?」
と言って塗りつぶす。
間髪入れず、佳央様が私の頭を頭をスパンと敲き、
「和人!
最近はちゃんと竜人化してたでしょ?」
と怒られた。
この言い回しだと、以前は竜人化していなかったのを認めた形となる。
蒼竜様も気がついたようで、
「なるほど、最近は竜人化しておるのだな?」
と渋い顔で聞いた。紅野様が、
「大した話でもあるまい。
どのみち、外では竜人化しておるのだ。
蒼竜よ。
家でくらい、良いではないか。」
と助け舟を出すと、蒼竜様は、
「左様ではありますが・・・。」
と迷っている様子。紅野様が、
「そろそろ、長屋の大きさでは、竜人化を解いた時に家が狭かろう。
我が家に引っ越してはどうじゃ?」
と提案してきた。私は、
「家が狭いということはありませんよ。
そもそも、佳央様は両手で抱えられる程度ではありませんか。」
と普段の大きさを伝えた。すると紅野様は、
「ん?
という事は、小竜化しておるということか。
であれば、竜人化しているのとほぼ変わるまい。」
と感心したようだ。
私もなんとなく嬉しくなって、
「そうなのですか?」
と聞いたのだが、佳央様は、
「悪かったわね。
成長が遅くて。」
と、嫌そうな顔をした。
特に小竜化した訳ではなく、素の大きさだったようだ。
私は、
「なるほど、寝ている時も小さいままですしね。」
と納得した。
だが雫様が、
「いや、うちらも寝てる時、竜人化したままやろ?
寝てる時も、ずっと小竜化してても不思議ちゃうで?」
と言ってきた。
そう言えば、以前蒼竜様や雫様と一緒の宿に泊まった時、竜人化を解いた様子はなかった。
私は、
「では、佳央様の本当の大きさはどのくらいなのでしょうか?」
と思ったままのことを聞いたのだが、佳央様は不機嫌そうに、
「さっき言った通りよ。
文句ある?」
と突っかかってきた。私は悪いことを聞いた気分になったので、
「いえ、すみません。
なんか、ご免なさい。」
と謝った。
蒼竜様は、
「まぁ、それはともかく、約束を破るのは良くないぞ?」
と言い付けを守らなかったことを咎めた。
田中先輩が、
「他の竜人も似たようなものなのか?」
と聞いた所、蒼竜様は、
「いや、佳央には才能があるゆえ、一段上の事を課しておる。」
と返事をした。流石、佳央様だ。
だが、それを聞いた田中先輩は、
「本人のやる気はどうだ?」
と確認した。佳央様が困っている。
田中先輩は、
「そうだな・・・。
同じ年頃のやつよりも出来るようになりたいか?」
と聞き直した。すると佳央様は、
「他が追いついてくるのは癪かな。」
と返事をした。更に田中先輩は、
「なら、年上なら負けてもいいんだな?」
と聞き直した。すると佳央様は、
「ずっと上ならね。」
と返した。田中先輩は、
「蒼竜。
少し年上と同じことをさせているのか?」
と聞いた。蒼竜様は、
「いや、今は一回りくらいか。」
と返す。田中先輩は、
「そうか。
なら、本人の望む以上の事をさせているということか。」
と纏めた。蒼竜様も、
「なるほど。
つまり、少し上の連中がこの課題に取り掛かれば、負けず嫌いで自然と始めるということか。
であれば、今は家での竜人化は良いか。」
と条件を緩くしたが、
「そのうち、気づかずに追い抜かれたとしても、その時、頑張ればよい。」
と付け加えて。佳央様は、
「なんか、嫌な言い方ね。」
と眉を寄せた。赤竜帝が、
「焚きつけるのはいいが、そう言うのは一時的な効果しか無いぞ?
寧ろ、逆効果となる事もあるんじゃないか?」
と苦言を述べた後、
「どうせ、他の生き物と比べて我々竜人には時間があるのだ。
のんびり行けばよかろう。」
と笑いながら言った。
蒼竜様は、
「そういいつつ、赤竜帝が一番こなしていたのではないか?」
と聞くと、赤竜帝は、
「それはそれ、これはこれだ。」
と苦笑いした。
それを見ていた佳央様は、
「なによ。
結局、やるに越したことはないって事じゃない。」
と面倒臭そうに言ったのだった。
本日は江戸ネタはお休みです。(--;)シコメンカッタ...




