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少しだけ魔法を教わった

初ブックマークがあり、感激してをります。

これからも続けられるように頑張ります。(^^)/


* 2019/09/14

 誤記を修正しました。


 田中先輩は山に持っていく荷物について話し始めた。


「さっき、更科の乱入で話せなかったが、今回の登山演習の目的だ。

 まず、山小屋に登れるだけの体力をつけてもらう。

 平村(たいらむら)との往復と違って、斜面が急だから今までとは違う筋肉を使うんだ。

 なので、実際に登る山道とは違うが、(やぶ)の中を往復してもらう。

 この時、まわりの動物に気がつかれないように気配隠蔽のスキルを身につけてもらう。

 あと、魔力に敏感な魔物もいるので魔力制御もやってもらう。」


 私は、山小屋なのか野宿なのかを確認しようと思っていたことをすっかり忘れて、


「どのようにすればスキルが身につくのですか?」


と聞いたところ、田中先輩は、


「気配隠蔽についてはある程度は練習もできるが、やはり実戦あるのみだな。

 魔力制御は魔法を覚えないことには仕方がないから、これから四半刻(30分)で魔法の感覚だけ覚えてもらう。」


と返事が来た。私は、


「魔法を四半刻(30分)で覚えられるものなのですか?」


と聞くと、田中先輩は、


「ちょっと裏技があってな。

 まずは俺が子供の頃にじいさんに教わった呼吸方法を教える。

 手の動きをするから真似ろ。」


と言って、手を前で合わせた。そして、


「大きく息を吸いながら手を突き上げるように上にあげる。

 次に大きく息を出しながら、手を横から回すようにして突き出す。

 ゆっくり深く息を吸いながら手を胸のところまで玉を持っているイメージで引きつける。

 この時、手の中に風が吹くイメージをするんだ。」


すると、田中先輩の手の中が少し歪んで見えた。私も真似をしたところ、手の中に少し風が吹いた気がした。


「おっ、一発かよ。

 裏技、いらなかったな。

 普通、裏技を使わないと数日か、下手すれば数年かるんだぞ・・・。

 まぁ、じゃぁ、次に同じ要領で重さも行っておくか。」


と田中先輩が言った。私は同じような感じでやったのだが、何も起きなかった。

 そこで田中先輩が、


「こんな感じだ。」


と言って、実演してくれた。今度も田中先輩の手の中が少し歪んで見えた。さっきは緑の歪みのイメージだったが、今度のは透明な歪みのイメージだった。


「魔法によって色が違うのでしょうか。」


と言いながら田中先輩を真似たところ、今度はうまく行った。田中先輩は、


「お前、実は魔法の才能があったんだな。

 色で見えるというのはあまり聞かないが、温度とか、匂いとか、確かに五感で表現する奴はいるな。

 まぁ、それなりにレベルが高いからというのもあるのかもしれんが。」


と言って、少し顎にてを当てて考えると、


「部屋ん中だからな。

 火は止めておこう。

 次は水だな。」


と付け加えた。私は、


「水の属性は持っていませんが。」


と言うと、田中先輩は、


「気合で属性なしでもいけるぞ?

 ほら、水はこんな感じだ。」


と実際にやって見せた。私は、田中先輩の手の中が水色に歪むイメージを見たので、同じようにやって見たところ、水色というよりも青い色に近い歪みになって現れた。


「これで出来ているのでしょうか?」


と聞いたところ、田中先輩は、


「これは多分、水と重さが混ざってるんじゃないのか?

 山上、おまえ水にどんなイメージで作ったんだ。」


と言った。なので、私は


「えっと、流れる川や滝のイメージでしょうか。」


と答えると、田中先輩は、


「普通は(かめ)に入った水をイメージするもんだぞ。

 まぁ、一応、目的は果たしたか。

 これが初級魔法を覚える前の準備運動だ。」


と言った。私は、


「これから初級魔法をやるのですか?」


と聞くと、田中先輩は、


「これから一泊分の荷物をまとめて行けば、冒険者組合が開く時間になるはずだ。

 その後でな。

 更科と合流した後に町から出たら何が使えるか見て、どのルートで山頂に行くか決める。

 まずは、荷物をまとめてこい。」


と指示したので、私も


「はい。」


と答えて上の部屋で1泊分の荷物を1袋にまとめた。


 集荷場に降りた時には、後藤先輩は既に平村に向けて出立していた。

 私は早速荷物を背負子(しょいこ)に結わえようとすると、田中先輩が


「おい、遊びじゃないんだからな。

 山上の荷物は最後だ。」


と言って待ったをかけられた。そして部屋の隅のほうを指差して、布がかかっている箱を指差しながら言った。


「山上、あそこに今日の荷物があるから、まずはあれを(しば)れ。」


私は、


「はい、わかりました。

 ところで、どのくらいの重さなのですか?」


と聞きながら箱に近づくと、田中先輩は、


「持てば分かるさ。」


と少しニヤニヤしている。こう言うときの田中先輩は意地が悪いので、結構重いのだろうと感じた。


「わかりました。

 まずは持ってみます。」


と言って布をとると、荷物と薪が出てきた。ひとまず荷物を持ち上げたところ、予想外に持てない重さではなかった。


「先輩が脅すからどのくらい重いのかと警戒しましたが、予想よりも軽いですね。」


と言うと、田中先輩は、


「山ん中で()()()()からな。

 まぁ、今はわからんか。

 1ヶ月の体力作りだからな。

 徐々に重くして最後にはこの倍の重さになるぞ?

 明日の晩にこのことを思い出して覚悟してもらえばいいさ。」


と返ってきた。私は山を登るのだから動き回るのも当たり前だし、この倍の重さの荷物を平村まで運んだこともあったので、なぜ『覚悟』が必要なのか解らなかった。


 重りと自分の荷物を背負子に縛ったところで、田中先輩が


「次は冒険者組合に行って登録だな。」


と言った。私も、


「はい。

 冒険者組合に登録するのは緊張します。」


と返した。田中先輩は、


「誰にでも初めてはあるものだ。

 気負うな。」


と言った。


 こうして、田中先輩と私は背負子を背負い、集荷場を後にして冒険者組合に向かったのだった。


実際の歩荷さんも、季節の初めは軽い荷物から始めて徐々に重い荷物に慣れていくのだとか。

あと、温度は五感ではありません。(^^;)

次回、山上くんが冒険者登録をします。


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