表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/685

あちらがどうなったか

 こちらの戦いも一段落した所で、雫様が蒼竜様に、


雅弘(まさひろ)、こっちも一服したし、田中んとこ行ってやったらどうや?」


と言った。蒼竜様は、


「いや、不要であろう。

 田中だぞ?

 田中。

 あれがどうにかなる姿など、想像できぬ。」


と返した。私も同感である。しかし、雫様が、


「いや、でも今まで戦ったんと数もちゃうやろ?」


と言うと、蒼竜様は、


「ここまで届く威嚇(いかく)なら、かなりの数、気絶した筈であろう?

 その時点で結果も見えているはずだが。」


と返した。蒼竜様は、田中先輩のことはこれっぽっちも気にもしていない様子だ。

 雫様は、


「それでも、結果は自分の目で見たほうがええんちゃうか?」


と言った。私が、


「蒼竜様に、ここにいてもらったら困る何かがあるのですか?」


と聞くと、雫様は少し困った顔をして、


「そんな理由はないで。」


と返した。私は蒼竜様に、


「念話で聞いてみたら如何でしょうか?」


と聞くと、蒼竜様が、


「そうしてみるか。」


と言って、春高山の方を向いた。

 蒼竜様は、念話を使うのに竜化する必要はないようだ。

 私は蒼竜様が竜の姿になるのを少しだけ期待したので、残念に思った。


 蒼竜様は、


「ふむ。」


と言って(うなず)くと、


「あちらも終わっておるようだ。

 が、なんでも、空鯨(くうげい)3()頭も出たそうだ。

 田中が闇炎2()発で沈めたそうだが、これからが問題かもしれぬ。」


と言った。私は、


「どうしてですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「空鯨は、空だけでなく、海の中に(もぐ)って(えさ)を取ることもあるのだ。

 その時、肺に塩水が残ってな。

 海から出た時、(ほとん)どは潮吹(しおふ)きして外に出すのだが、一部は肺・・・まぁ、体の中に残るのだ。

 そこを何も考えずに解体すると、塩水が溢れ出るのは、容易に想像できるであろう?」


と教えてくれた。私は、


「海の水は、塩水なのですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「そこからか・・・。

 まぁ、山育ちゆえ、仕方あるまい。」


とため息をついた後、


「海の水には、塩が含まれているのだ。

 あれが、植物には毒でな。

 かかると枯れてしまうのだ。」


と解説をしてくれた。私は全体的に解っていなかったが、昔、次兄から塩が植物には毒になるという点だけは聞いていたので、


「そういう事ですか。

 では、どのようにするのですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「ふむ。

 いくつかやり方はあるのだが、その場で肺から海水を取り出して蒸発させ、塩を取るのが一般的であろうな。」


と説明した。私は、


「蒸発させると、塩が出てくるのですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「そのとおり。

 さっきも言ったが、海の水には、塩が含まれておる。

 海の水を蒸発させると、溶けきれなくなった塩が出てくるのだ。」


と教えてくれた。私が、


「溶けきれなくなるとは?」


と聞くと、蒼竜様は、


「なるほど、そこも知らねば質問となるか。」


と納得顔をした後、


「山上は『溶ける』といえば、何を思い出すか?」


と質問した。私は、


「溶けるものですか。

 お味噌とか、お薬でしょうか。」


と答えると、蒼竜様は、


「ふむ。」


と困った表情をして言った。

 蒼竜様は、


「なるほど。

 確かに味噌も()くと言うし、薬も白湯(さゆ)に入れて溶かして飲むものもあるな。」


と言った。

 ここで手持ち無沙汰にしていた佳央様が、


「実際にやればいいじゃない。」


と言って、空間から湯呑(ゆのみ)を取り出した。

 蒼竜様は、


「なるほど、それもそうか。」


と言って、その湯呑に、魔法で水を注ぐと、


「ここの湯呑には水が入っておる。

 これは普通の水である。

 少し()めてみよ。」


と言って私に湯呑を差し出した。私は中の水を指で触って舐めると、普通の水だった。

 蒼竜様が、


「ふむ。」


と言うと、袋から半透明の粉を出し、


「これが塩である。

 少し()めてみよ。」


と言った。流石に塩は梅干しや漬物を作るのに使うので知っていたが、言い出せずに少し舐めた。

 私が塩っぱくて顔を少ししかめると、蒼竜様は、


「ふむ。」


と言って、塩を水に入れた。

 指で混ぜると、水に入った塩の粉が全てなくなる。


「これが、溶けるということだ。」


と言った。私は、今更見たことがあるとも言い出せず、


「なくなりましたね。」


と見たままの感想を言った。蒼竜様は、


「ふむ。

 では、これを蒸発させるぞ。」


と言うと、火魔法で湯呑を(あぶ)り、水を蒸発させ始めた。

 私は、湯呑を炙っては行けないのではないかと思ったが、佳央様もそう思ったらしく、嫌そうな顔をしている。きっと、佳央様は鍋を出せばよかったとか思っているに違いない。


 水かさが減ると、湯呑の底の方に何かが出てき始めた。


「このように、蒸発させると、水に溶けていたものが出てくるのだ。」


と説明した。私は、梅干しの漬け汁が乾燥して塩が出てくるのを思い出しながら、


「これが、溶けきれなくなって出てくるということですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「そういう事だ。」


と言った。

 私は、


「なるほど、勉強になりました。」


(うなず)いてから、


「他にも、解体に注意点はあるのですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「空鯨は良質の油を持っているのだが、あれが漏れ出るのも良くない。」


と言った。私が、


「油ですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「ふむ。

 これは鯨油と言って、行灯(あんどん)の油などに使うのだ。」


と説明した。私は、


「行灯ですか。

 そう言えば、臭う行灯と、臭わない行灯がありますよね。」


と聞くと、蒼竜様は、


「ふむ。

 良い着眼点である。

 実は、知っておったのではないか?」


と聞かれたが、私は、


「何をですか?」


と返した。蒼竜様は、


「まぁ、よいか。」


と言ってから、


「魚の油を使ったものが臭いのだ。

 安いが臭う上に、暗いので、あまり好まれぬ。

 だが、空鯨の油は臭わぬ上に、明るいのだ。

 それゆえ、高値で取引されておる。」


と言った。私は、


「お金になるのですか。

 ・・・あれ?

 でしたら、今回の空鯨は誰の収入になるのですか?」


と確認した。蒼竜様は、


「そうであるな。

 恐らく、国が接収して予算に使うであろうな。

 戦争は金がかかるのだ。」


と言った。私は、


「田中先輩には入らないのですか?」


と聞くと、蒼竜様は、


「そのようなことはあるまい。

 が、普通に狩った時と違い、金一封といったところであろう。

 ただ、3匹ともなれば、通常の金一封とは桁は違うやもしれぬがな。」


と返した。私は、


「なるほど、でしたら田中先輩も当分はお金に困らなさそうですね。」


と言うと、蒼竜様は、


「ふむ。

 時折、広重(ひろしげ)が妙なことをしでかすから断言は出来ぬが、まずはそのようになる可能性が高かろうな。」


と苦笑いした。私は、


「いずれにせよ、空鯨の解体には神経を使いますが、お金になるということですね。」


と言うと、佳央様が、


「まぁ、普通は落とせないけどね。」


と言った。蒼竜様も、


「ふむ。

 であるから、高値が付くのであるしな。」


と付け加えた。私は、


「実物を見ることが出来ず、残念です。」


と言うと、蒼竜様は、


「ふむ。

 恐らく、暫くすると塩漬けになった鯨肉が出回るであろうから、そのうち食べてみるのもよかろう。」


と言った。私は、


「ぜひ、お願いします。

 その時は、佳織も一緒にお願いします。」


と返すと、蒼竜様は、


「無論である。」


と頷いた。佳央様も、


「その時は、私もお願いね。」


と言うと、蒼竜様は、


「ふむ。

 後は雫か。」


と言った。野辺山さんが、


「鯨肉か?

 丸膳(まるぜん)でも出している筈だから、女将(おかみ)に聞くといいぞ。」


と教えてくれた。蒼竜様も、


「あそこであるか。

 酒も美味いし、期待できるな。」


と言うと、雫様が、


「決まりやな。

 雅弘(まさひろ)、田中に鯨肉の美味しいとこ持て帰るように連絡しといて。」


と言うと、蒼竜様は、


「私用の連絡で念話は如何かと思うのだが・・・。」


と言いつつも、念話で連絡していた。

 そのうちではなく、近日中に食べられそうだ。


 そう言えば、蒼竜様は念話で誰と話しているのだろうか。

 私は、ふとそんな事を思ったのだった。


 作中で空鯨の解体の話が出てきますが、江戸時代の頃も捕鯨は行われていました。

 当時は作中のように魔法でドン、という訳にもいきませんから、主に網を使ったそうです。

 鯨組というのが獲っていたそうで、解体して加工した鯨肉や鯨油を売っていたのだそうです。


 そういえば、おっさんが小学生の頃にも、かろうじて給食に鯨の竜田揚げが出ていましたが、当時、なんとなくパサパサしていて美味しくなかったように思います。←歳がバレる。(--;)

 10年まではいかないにせよ、そのくらい前に行った鯨料理のお店では、美味しくない鯨料理は出なかったように思いますが、一緒に行った先輩も、小学生の頃の鯨肉は美味しかった記憶はないと言っていました。

 wikiにもちらっと書いてありますが、冷凍技術がすすんだおかげという事なのでしょうね。(^^)


・捕鯨

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%8D%95%E9%AF%A8&oldid=77266735

・鯨油

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E9%AF%A8%E6%B2%B9&oldid=74082824

・鯨肉

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E9%AF%A8%E8%82%89&oldid=78030257

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ