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スキルシートに記入した

 私は集荷場の二階の部屋に住んでいるので、朝は1階の音が聞こえてくる。

 まず、飯係の千代(ちよ)ばあさんがやってきて、釜の火を起こす音がする。

 薪が十分に乾燥していないからか、たまに、パチパチと小刻みな音が聞こえてくる。毎日ではないが、バチッッと木が大きく弾けるような音がすることもある。

 いつもならばこの辺で起き出すのだが、今朝は書類整理の日なので、日が差し込む少し前まで布団の中で寝ていた。

 しばらくして、米の炊ける甘い匂いが漂ってくる。

 そろそろと身支度を整えて1階に降りると、ちょうどご飯が炊き上がった様で、千代ばあさんが握り飯を握っていた。


「おはようさん。

 今日は寝ぼすけやね。」


と千代ばあさんが私に声をかけた。私も、


「今日は書類整理の日なのですよ。

 もう少し寝ていられるのですが、千代ばあさんの飯の匂いが美味そうなので、いつもつい起きてしまうのですよ。」


と答えた。すると、千代ばあさんは、


「世辞なんてよせやい。

 聞いたよ、あんたも隅に置けないね。

 早くその娘と所帯を持って、飯でも作ってもらえるようになりな。」


と、早速、更科さんのことをネタにされた。そこで、私は、


「食べたことはありませんが、やはり年季が違います。

 更科さんよりも千代ばあさんの方が飯は美味いと思いますよ。」


と言うと、千代ばあさんは、少し照れくさそうにしながらも、


「な~んだい。

 他人行儀にせずに、とっとと名前(なめぇ)で呼んじまいな。

 ほら、名前、なんてんだい?」


と、からかってきた。私も照れながら、


(かおり)と言います。」


と小さな声で答えた。すると、千代ばあさんは、


「なんだい?

 聞こえないよ?

 ばばぁは耳が遠いんだよ?」


とにやけながら催促してきた。私は口をむにゅむにゅさせながら、


「薫と言います。

 結構恥ずかしいので、このくらいで勘弁していただけませんか?」


と答えた。でも千代ばあさんは勘弁してくれず、


「な~んだい?

 そのくらい胸張って言ってやんなよ!

 ちゃんと本人にな?」


と言われた。私は、


「そのうち、本人の許可をもらったら呼びますよ。」


と少し口を尖らせながら言うと、千代ばあさんに、


「許可って、ダメチンが!

 そんなもの要るわけなかろぅに!

 よそに奪られんがぞ?」


と言われた。私が、


「すみません。

 でも、呼ぶ前に、私の心臓が緊張しすぎて止まってしまいます。」


と答えた。千代ばあさんは、


「止まりゃせんよ!

 あぁいうのは一回タイミングを逃すといつまでも言えんなる。

 すぐにでも呼ばにゃいかん。」


とけしかけられた。私は、


「含蓄がありますね。

 なるべく早く呼べるように練習します。

 あ、そろそろ掃除を始めますので、私はこれで失礼しますね。」


と逃げ出した。千代ばあさんは、


「ありゃ、長話悪かったね。

 まぁ、名前の話はいつまでも塩漬けにせんようにね。」


と言って開放してくれた。


 そうこうして掃除が終わり、いつもの報告書をまとめ、田中先輩の確認が通った頃には未の刻になっていた。

 田中先輩は、


「山上、これからスキルシートな。」


と言って、スキルシートの入った封筒を渡してくれた。

 私はスキルシートを封筒からだし、またしても書類とにらめっこすることになった。

 他の書類もそうなのだが、その書類で始めて出てくる漢字にはルビをふってくれているので、何とか読むことが出来た。

 ただ、意味が難しくて解らない所があったので、田中先輩に解説してもらった。田中先輩からは、


「来年は一人で読めよ。」


と言われた。


 スキルシートを一通り読んだ後、まずは、レベルなどの基本情報を記載した。幸い、先日冒険者組合で鑑定してもらった結果が手元にあるので、丸写しすることにした。


────────────────────────────────────────

 名前     :山上 和人

 年齢     :十五歳

 性別     :男

 職業     :歩荷

 物理攻撃レベル:二(第一武器:鉈) 十一(第二武器:素手)

 持久力    :十四

 物理耐性   :十

 魔法耐性レベル:九

 魔法レベル  :四十六

 魔法属性   :重さ→二十二、火→十四、風→十

 保有魔法属性 :なし

 スキル    :藁わら編み、威圧、重量軽減

────────────────────────────────────────


先日の先輩との話し合いで、レベル8を越えているものは全て8にした。ただ、私は自分の名前以外は漢字で書けないので、例えば『男』という字を『田』と『力』と書くのではなく、『日』を書いた後に上が大きく突き出た『力』を書いたりしたので、田中先輩から漢字の書き方がおかしいと指摘されてしまった。


-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-

基本情報(きほんじょうほう)

 冒険者組合(ぼうけんしゃくみあい)簡易鑑定結果(かんいかんていけっか)記載(きさい)してください。


 名前(なまえ)

  山上 和人


 年齢(ねんれい)

  十五歳


 性別(せいべつ)

  男


 物理攻撃(ぶつりこうげき)レベル ※『武器(ぶき)種別しゅべつ→レベル』の形式(けいしき)()きます。

  第一武器(だいいちぶき):鉈   → 二

  第二武器(      ):素手  → 八


 持久力(じきゅうりょく)

  八


 物理耐性(たいせい)レベル

  八


 魔法(まほう)レベル

  八


 魔法耐性レベル:

  八


 魔法属性(ぞくせい) ※『属性→レベル』の形式で書きます。

  重さ  → 八  / 火   → 八  / 風   → 八

      →    /     →    /     →

      →    /     →    /     →


 保有(ほゆう)魔法属性 :なし

 スキル    :(わら)編み、威圧、重量軽減

-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-


 魔法の修行をしていないので仕方がないとは言え、魔法属性のレベルが8もあるのに保有魔法がないというのは、自分で書いていてもバランスが悪いなと思った。今度、田中先輩に何でも良いので魔法を教えてもらいたいものだ。


 次に、業務スキルのアンケートを書いた。

 こちらはありのままを書いた。

 『一人で歩荷の仕事がこなせる』の項目は『ハ:できる』を選択した。


-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-

業務(ぎょうむ)スキル】

各設問(かくせつもん)()んで、回答(かいとう)右側(みぎがわ)にイ~ホのあてはまる()()いてください。


 イ:指導(しどう)できる ロ:効率的(こうりつてき)なやり(かた)改善(かいぜん)できる ハ:できる

 ニ:指導されればできる ホ:できない


(一)数人(すうにん)歩荷(ぼっか)仕事(しごと)がこなせる

   回答.ハ


(二)一人(ひとり)で歩荷の仕事がこなせる

   回答.ハ


(三)地元(ぢもと)受注(じゅちゅう)が取れる

   回答.ハ


(四)地元以外(いがい)で受注が取れる

   回答.ホ


(五)数人で魔物(まもの)(たお)せる

   回答.ホ


(六)一人で魔物が倒せる

   回答.ホ


-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-


 最後に戦闘スキルの欄があった。

 こちらは第一武器が『鉈』である以外は特に書くことがなかった。

 田中先輩でもあるまいし、魔物の欄は埋まらないことを願いたいものだと思った。


-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-

【戦闘スキル】


(1)使用(しよう)できる武器を書かいてください。


  ┌──────────────┬──────────────┐

  │第一武器          │第二武器          │

  ├──────────────┼──────────────┤

  │鉈             │              │

  └──────────────┴──────────────┘


(2)(たお)したことがある魔物がある場合は魔物の種類(しゅるい)(かず)を書いてください。

  ┌──────────┬───┬──────────┬───┐

  │魔物の種類     │数  │魔物の種類     │数  │

  ├──────────┼───┼──────────┼───┤

  │          │   │          │   │

  ├──────────┼───┼──────────┼───┤

  │          │   │          │   │

  ├──────────┼───┼──────────┼───┤

  │          │   │          │   │

  ├──────────┼───┼──────────┼───┤

  │          │   │          │   │

  └──────────┴───┴──────────┴───┘

-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-


 この後、田中先輩から


「重さ、火、風、全部レベル8なのに魔法レベルも8ということはないだろ。

 魔法レベルは全部足すので、これだと24になるぞ。

 そもそも、保有魔法が無いのにこのレベルは無いな、、、ってこれは事実か。」


といった具合で、いろいろとツッコミが入った。

 こうやってちょこちょこと田中先輩と話しながら修正したせいで、スキルシートを書き終わったのはお昼ころになった。田中先輩は、


「そろそろ(めし)に行くか。

 午後からはいつもの業務報告な。」


という、無情の一言がかけられた。

 その後、昼食を食べたあと、業務報告を書き始めた。

 田中先輩は、外に誰かいたようで、たまに気にしているようだったが、その他は何事もなく、酉三つ時までかけてようやく書類を書き終えたのだった。



 

 地元が「ぢもと」となっているのは旧仮名のためです。

 中途半端に古い表記を持ち出しているせいで読みにくくなっていますが、お付き合いして読んでいただいている方には感謝です。


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