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平村の飲み屋にて

何分筆不精な上に拙い話で申し訳ありませんがよろしくお願いします。

しばらくは休日更新しますが、そのうち、月に1~2回の投稿になると思います。

それでもよろしければ、お付き合いしていただけると幸いです。


* 2019/08/13

 長さと時刻の単位を変更しました。

 その他、微修正。

 先輩歩荷(ぼっか)田中 厳吉(たなか ごんきち)は単独で黒竜をも一撃で(ほうむ)るほどの規格外。

 これは、後輩歩荷の山上 和人(やまがみ かずと)に断片的に語った先輩の歩みである。




 その日、私は、初めて歩荷の仕事で集荷場のある葛町(かずらまち)から平村(たいらむら)に行った後、荷物を運び終えて先輩と一杯やっていた。私は、平村に来る途中に遭遇した黒竜と田中先輩の戦いを思い出しながら、


 「先輩はあんなのにも勝てるのに、どうして歩荷なんてやっているんですか?」


と聞いた。すると先輩は、たらの芽の天ぷらを摘みながら


「俺はな、靴屋の(せがれ)として生まれたんだ。

 だけどな、運悪く盗賊に襲われた後、ポーターとして奴隷契約の印を押されたんだ。」


と話し始めた。私は


「あれ?奴隷契約ですか?違法ですよね?」


と聞いたのだが、先輩は苦笑いしながら


「盗賊が法律なんて守るわけがないだろう。

 そもそも、子供のころ冒険と称して貴族街に潜入した時に知り合った酔狂なじいさんがいてな。

 このじいさんから魔法を教わっていたから、本来ならポーターになんてなることはなかったんだしよ。」


と答えた。私は、


「あぁ、それでですか。」


相槌(あいづち)を打った。先輩はドブロクを飲みながら、懐かしそうな目をして子供の話を始めた。


「そうそう。そのじいさんがな、実は元は国家魔法師の偉い人だったっんだ。

 当時、俺たち子供の間で貴族様の庭先を探検する度胸だめしが流行っていたんだ。

 見つかったら、場合によっては切り捨てられても文句が言えない状態でな。

 この日も大きめの屋敷の庭に潜り込んで度胸だめししていたんだが、庭先でじいさんに見つかってしまったんだよ。

 で、じいさんに呼ばれた訳だ。おっかなかったなぁ。

 でも、たぶん、暇だったんだろうな。

 そのじいさんは俺たちを並ばせると、鑑定魔法でステータスを見始めたんだ。」


 鑑定魔法は滅多に使える人がいない。

 鑑定魔法が使える人は、国家公務員や格の高い商家で雇われるようなエリートになる。

 人間に鑑定魔法を使うと、いわゆるステータスを視ることができる。

 私は、


「それでどうなったんですか?」


と聞いた。すると、先輩は事もなげに


「いや、ヤバいとは思っていたけど、殺されたりはしなかったよ。

 それで、一人一人見て頷いていたんだが、自分の時だけ大きく目を見開いて、鍛えれば高位の魔法使いになれると言っていたな。

 あとは、属性も、火とか闇が使えるので護衛向きだと言っていた。」


と言った。私は魔法とは縁がなかったので、


「属性ってなんでしょうか?」


と先輩に聞いた。すると、


「あぁ、魔法使いはな、何でも一通り魔法が使えるわけではなくて、得意不得意があるんだよ。

 でな、俺は焚き火の種火がわりに使える火魔法と、気配を決して森を歩くような闇魔法に適正があったんだ。

 まぁ、ポーター向きだな。」


 私は不思議に思った。


 「ポーター向けなんですか?」


 すると先輩は


「ポーター向けだな。

 夜は火魔法で獣を追い払えるし、魔物に追われた時は闇魔法で気配を決して逃げるのにも使える。

 あの黒竜だって闇魔法で煙に巻いたものだ。

 もっとも、あの時は死ぬかと思ったがな。」


と言った。私は今日の出来事を思い出し、


「あの黒竜ですよね。そんなに強かったんですか?」


と聞いてみたところ、先輩は、


「あれは凄かった。

 動きは素早く、目で追うのがやっとだったし、周囲に精神波を出して集中力を乱してくる。

 一度(ひとたび)炎のブレスを吐けば15間(30m)先まで焼け落ちる。

 格下相手だからだろうな。ブレスの後には延焼を防ぐために必ず水魔法で鎮火していたよ。

 あの時は勝てる気がしなかったな。」


とその時の状況を語った。私は


「黒竜には、当時も反撃できるようなことを言っていましたよね?」


と聞いた。先輩は


「いや、実は当時は闇炎どころかそれより弱い魔法もおぼつかなくて、逃げるのが精一杯でな。

 あの時、偶然なんだが、黒竜が気配の薄い所に俺たちがいると考えて襲っていることに気がついて、闇を飛ばすことを思いついたんだ。

 それが大当たりでな、黒竜は俺が放った闇につられてあっちに行ったんだ。

 闇を飛ばした後は、気配が適度に残るように遮断するようにして何とか逃げ帰れたという訳だ。」


と話した。先輩は続けて


「それから一刻(2時間)ほどして、遠くで黒竜が咆哮(ほうこう)しまくってたのを聞いたが、おそらくその時に卵が盗まれたことに気がついたんだろうな。

 本当に背筋が凍るような咆哮だったよ。」


と言って苦い顔をしたかと思うと、欠伸をして


「今日の話はここまでな。」


と言って解散する事になった。


 帰り道、ふとお金を出していないことに気がついた。

 おそらくは先輩が、知らないうちに出してくれたのだろう。

 明日にでもお礼を言っておこうと思った。


 私は実家に帰った後、そう言えば先輩が歩荷になった時のきっかけの話を聞く筈だったのに、全然聞けなかったことに気がついた。

 また別の日にでも教えてもらおうと思ったのだった。


酔っ払いの話なので、ちょくちょく脱線します。


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