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003 エルフの森と七大悪魔

 ゴブリン討伐の依頼を終えた2人は、近くにある辺境の都市バーブリングに向かった。

「いやー。初クエストのクリアか。達成感があるな」

「あんなショボい依頼で達成感を覚えるのなんて、最初だけよ。次の依頼は、戦争なのよ。あなたは、気を引き締めないと死ぬわよ」

「怖いこと言うなよ」

「何を言ってんのよ。冒険者が死ぬのなんて、日常茶飯事よ」

「だから、怖いって。霊装とやらを使わせてくれよ」

「どーしよっかなー。使用料取ろうかなー」

「おいおい…俺一文無しなんだけど」

「あっ、見えてきたわよ」

「んっ?何処だ?」

 リョウマの目には山や森は見えるが、人工物は見えない。

「私は今、魔法で望遠鏡みたいに遠くまで見えるようにしてるのよ」

「魔法って便利だなー。俺も覚えよう」

「いや、あなた、水の魔法以外は何の適性もなかったでしょ」

「そうだった…普通はみんな、いろいろな魔法が使えるもんなのか?」

「そうねえ…まともに使える魔法は、10種類くらい、極められるのは5種類くらいかしら。私は、あらゆる魔法が使えるけど、得意や不得意はあるわよ」

「それなのに、俺は1種類かよ」

「まあ、適性の数が少ない人ほど、極めれば強い人も多いけどね。あなたは極端すぎるけど」

「へ〜、そうなんだ」

「さて、近くまで跳びましょ」

「おっけー」

 シエラがリョウマの手を握ってくる。転移魔法を使う際に一緒に跳ぶには、何処かを握る必要があるからだ。

(いやー、至福の時だなー…って、変態か俺は)

 阿保なことを考えているうちに、転移が完了する。

 そこは小高い山の頂上だった。

 依頼をしてきた都市と、周辺の森が見渡せた。

「うおっ!真っ最中じゃねえか」

「そのようね。如何しようかしら…」

 まさに、都市と森を挟んでの戦争の真っ只中だった。

 人間とエルフの戦い。両軍共に数千人規模。どちらも剣や魔法を使っているが、エルフはやはり矢を使う者が目立った。

「とりあえずは、この争いを止めましょう」

「如何やってやんだよ」

「こうやるのよ」

「うおっ!」

 シエラの右手から、凄い火力の炎が吹き出る。

 少しすると、だんだんと赤く丸い塊になっていった。

「何やってんだ?」

「爆弾を作ってるのよ」

「はっ?爆弾!」

「そろそろ、できるわよ」

 真っ赤な球が出来上がり、シエラの手のひらの上に浮いている。

「爆弾も作れるのかよ」

「私の得意な5種類の内の一つ、"凝縮魔法"よ。そして、これが…ほいっと」

 真っ赤な球を、エルフの軍勢の方に投げ込む。

 まっすぐ飛んでき、軍勢の真ん中あたりに到達すると、大爆発を起こした。

 周辺にいたものは、焼けて即死。

 爆風の威力も凄まじく、両軍共にほとんどの者が吹き飛ばされた。

 爆発の後には、隕石でも落ちたかのような大きなクレーターができていた。

「これが、"拡散魔法"よ。爆発を見るのが好きで、かなり極めたわね」

「そんな理由かよ…」

 シエラの狙い通り、当然、戦闘は一時中断された。

 そして、依頼してきた都市の長である"杖の勇者カーミラ"を訪ねることにした。







「今回は、ありがとうございました。爆発のおかげで、こちらにそこまでの被害が出ることなく戦闘が終わりました。ただ、爆発に巻き込まれたこちらの兵士も多かったです。今度は、できれば他の手段でお願いします…」

 困った顔でお礼を言うのは、フードを被った髪の長い女性、杖の勇者カーミラ。

「ええ、そうするわ」

(いや。多分こいつは、またやるだろうな)

 爆発の後、杖の勇者に会いに行ったリョウマとシエラは、意外なことにすんなりと彼女の部屋まで通された。

「シエラ様。あなたのことは、友人に聞いておりました」

(なるほど。だから、すんなり通されたのか)

「『決して怒らせるな。丁重におもてなしをしろ』と言ってました」

「何よそれ。嫌な言い方ね」

「ははは…」

「それで、今回の争いが起こった理由なんですが…」

 理由はエルフと人間の合意によって、人間が管理していた森にある木が生え始めた。その木は"魔戒樹"と呼ばれていて、様々な薬品の素になる貴重な木。人間達は、喜んで魔戒樹を活用しようとした。しかし、エルフ達が、魔戒樹が生え始めたのは森の民である自分達のおかげだと言いだして、よこせと言いだしたらしい。そして、エルフ達は森を占拠した。それを許さないと人間達も兵を出して争いになった…

「長い、長い。そんなこと如何だっていいわ。要するに、森からあいつらを追い出して、木を奪えばいいんでしょ」

「そうです。我々がここで屈しては、人間全体が舐められてしまいます」

「任せなさい。やり方ば自由でいいわよね」

「お任せします」

「そう、了解したわ。行くわよ、リョウマ」

「おお…」

 リョウマが口を挟む暇などなく、話は終わった。







 リョウマとシエラは、エルフ達が占拠しているという森に入った。

 そこは前に入った村の森と比べて、木がかなり高く、草などは少なかった。

「歩きやすくて、いいわね」

「ああ、まあな。そろそろ、エルフがいるっていうエリアだろ。どうするんだ?」

「私がさっきの爆弾の小さいバージョンを撃ちまくるから、あなたは消火担当。どう?」

「まあ、いいけど」

 他に作戦が思いつくわけでもないので、構わないのだが、どんな大惨事になるか不安だった。

「あっ、居たわよ」

 ガタイのいいエルフが、矢を構えて出てきた。

「ここはエルフの森だ!人間が立ち入ることは許さん!それ以上来れば矢で撃ち殺す!」

「あなた達こそ、降伏するなら、殺さないであげるわよ」

「ふざけるな!死ね!」

 エルフが矢をこちらに向かって放つ。

 矢は魔法を帯びているようで、風をなびかせながら、通常ではありえない速度で飛んできた。

 シエラは、神器オートクレールを取り出す。

「交渉の余地はなしね。"炎槍"」

 飛んでくる矢に向かって炎の槍を放つ。

 炎の槍は、矢を溶かし、エルフの上半身を消しとばす。

「隊長ー‼︎」

「よくも隊長を!」

「ふざけるなよ、ガキが!」

「殺してやる!」

 先ほどのエルフを一人殺したことをきっかけに、あちこちの木から多くのエルフが出てきた。

「さて、始めるわよ」

「ひえ〜…消火しないとな」

 シエラは先ほど言っていた通り、小さな爆弾を撃ちまくる。

 その一撃、一撃がエルフをまとめて殺していく。

 エルフも反撃に矢を放つが、爆弾で軽々と撃ち落とす。

 エルフ達の戦う意思は、1分もしない内になくなり、泣き喚きながら全力で逃げていった。

 森の見える範囲が焼け野原になる頃には、静けさを取り戻していた。

「あなた、消火はどうしたの?」

「いや…怖すぎて、忘れてた。本気で一気に消してみる」

「本気は止めた方が…」

「えっ?」

 シエラが制止しようとしたが、もう遅い。リョウマの両手から、湖をひっくり返したような水が、一瞬で溢れ出る。

「うわっ、ヤバい!」

「"光の結界"」

 森がいきなり大洪水に見舞われる。

 シエラとリョウマは、丸く囲った光の結界のおかげで、どうにか何を逃れた。

「まあ、消火はできたわね」

「さっきより、被害が出てるな…魔戒樹に被害が出ないといいけど」

「大丈夫よ。そんなに弱い木じゃないわ。あらっ?まだ居たのね」

「おっ、本当だ」

 水が引いた森から、眼光の鋭い男のエルフが一人出てきた。

「貴様らーーーー‼︎‼︎よくも同胞を殺し、森を焼いてくれたな!絶対に許さん!この王直属八柱が一人、フォンテールがな!」

「おお!名乗り上げたぞ」

「王家直属八柱は、並みの勇者を凌駕する強さを持つらしいわよ」

「強そうだな」

「死ねえーーーー‼︎」

 フォンテールの弓から矢が放たれる。その矢の周りには暴風が吹き荒れ、木をなぎ倒し、地面を削りながら向かってくる。

「うおおお、すげえ!」

「ふん、こんなもの」

 シエラは、矢に右手を向ける。

 矢の暴風はみるみる小さくなっていき、シエラに届く頃には、ただの矢になっていた。

 シエラは、その矢を軽く掴むと、そのまま捨てた。

「あ、ありえない…」

「"炎槍"」

 呆然としているフォンテールに向けて、炎の槍を放つ。炎の槍は、肩を貫き、左腕を吹き飛ばす。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

「さっさと、消えなさい。他に残ってる奴も連れてね」

「くそっ…」

 フォンテールは、森の奥に消え去っていった。

「さあ、行くわよ」

「はは…流石」

 シエラは、リョウマが思っている以上の怪物なのかもしれない。







 森を進んで行くと、聞いていた通りの場所に魔戒樹が7本生えていた。

 紫色の幹に、濃い緑の葉を持ち、キラキラと輝いていた。

「これが魔戒樹か」

「ええ、あまり見られるものではないわよ。一本くらい貰おうかしら」

「いいのか?」

「よくはないけど、大丈夫じゃないかしら」

「まあ、良いんじゃないのか。取り返したわけだしな。しかし、どうやって持っていくんだ」

「私の服は、魔法の服でね。いろんな物が収容できるの。木の一本くらいなら入るわ。じゃあ、さっそく…」

 シエラが魔戒樹の方は行こうとした時、目の前にフードを被った少女が現れる。

 自分と同じくらいの長さの杖を持った、その少女はフードを取ると長い銀髪と顔が見えた。

(誰だあの子?歳はシエラと同じくらいか?)

「ははは。悪いがここにある木は、全て儂がいただくのじゃ」

 口調に似合わない、可愛らしい声で言ってきた。

「誰よ、あなた?そこを退きなさい。私は、そこの木を手に入れる依頼を受けてるのよ」

「儂は、七大悪魔の一人、"呪術師ワイス"じゃ」

 リョウマが最近知った、とんでもない単語を言ってきた。

「七大悪魔…なるほど、納得のエネルギーを感じるわ」

「おい、シエラ。七大悪魔って、魔王よりヤバいって言ってなかったか?」

「ええ、そうよ。世界のバランスブレイカーと言われるほどの、怪物達よ」

「ふふふ、そういうことじゃ。分かったら、さっさと退け。儂は、この木が欲しいだけじゃ」

 ワイスは、弱者を見下したような態度で笑う。

(ヤバいな…強者故の余裕だ。シエラより強いんじゃないのか)

 しかし、リョウマの心配をよそに、シエラは剣を抜いて構える。

「失敗してしまったならともかく、逃げるような情けない事できないわ」

「ははは、威勢だけではなさそうじゃな。ところで、良い剣じゃのう」

「ええ、神器オートクレールよ。欲しいの?」

「いやいや、そうじゃないのじゃ」

 ワイスの持つ杖の形が歪むと、剣になった。

「それは、神器オートクレール…見た目だけではなさそうね」

「そうじゃ。儂の杖、"ガンバンテイン"はあらゆる武器になることができるのじゃ。さて、斬り合おうか」

「ええ、そうね」

 2人の姿がその場から消えて、超高速の斬り合いが始まる。

 常人には、2人の姿を見ることすら叶わない。

(すげ〜。何が起こってるか、全然わからねえ…だけど、これは…)

 おそらくではあるが、シエラが明らかに押されていた。

 シエラと思われる影が受け身になり、どんどん後退していく。

 そして、凄まじい金属音と共に、シエラが吹き飛び、リョウマの横に転がる。

 身体には、複数の傷が刻まれていた。

「ありえない…七大悪魔といえど、接近戦でここまで強いわけがない」

「ふっふっふ。その通りじゃ。これは儂の身体能力ではない。儂の呪術の一つ、"二重者(トワイス・コピー)"じゃ。あらゆる面で、指定した者の二倍の強さを得る。つまり、今の儂は、お主の二倍強い」

「はあ⁈反則だろ!」

「流石は、七大悪魔ね」

 ワイスは剣に火を灯すと、シエラに向ける。

「もう少し痛い目をみて、諦めて帰るんじゃな」

 先ほどシエラが使っていた、小型の爆弾を撃ちまくる。

 それは、シエラが使った時より、速度も連射性能も遥かに高かった。

 受け切れないと判断したシエラは、剣を変える。

「"絶対領域"!」

 第零霊装"絶対領域"の能力は、剣の結界を張り、その中の物を無条件に斬ることができる。

 その剣に更に、"拡散魔法"を込める。

 シエラは、全ての爆弾を斬り落とし、拡散させることで難を逃れる。

 シエラの足場以外が全て吹き飛ぶが、シエラは無傷だった。

 ちなみにリョウマは、氷の壁を作って塞いでいた。

「やるな、お主。しかし、これは拡散できまい。"大炎槍"!」

 ワイスの剣から、超巨大な炎の槍が放たれる。

 先ほどの手段では、防げない攻撃だった。

 シエラは、更に剣を変える。

「"空間断絶"!」

 第七霊装"空間断絶"の能力は、あらゆる物を空間ごと切り裂く。

 剣を大きく振るい、炎の槍を真っ二つに切り裂く。

 そして、今度はシエラが距離を詰める。

「死ねえぇぇぇぇ!」

 しかし、シエラの剣は、ワイスの剣にあっさり受け止められる。

「いくら"空間断絶"といえど、儂のエネルギーと神器の前には、そう簡単にいかないのじゃ」

「分かってるわよ。"二本目の剣(セカンド・ソード)"!」

 シエラの最後の剣。"二本目の剣(セカンド・ソード)"は、二刀流を前提とした剣であり、もう一方の剣と同じ性質を得ることができる。

 一方の剣でワイスの剣を抑え込み、もう一方のでワイスに斬りかかる。

 しかし、剣が触れようとした瞬間、ワイスの姿が消える。

「えっ⁈」

 ワイスは離れた木の上に現れる。

「何を驚いておるんじゃ?お主の"転移魔法"じゃよ。便利な魔法じゃの。さて、いくのじゃ」

 ワイスは転移をしながら襲いかかる。シエラも対抗して、転移をしながら戦う。

 しかし、戦いの形勢は明白だった。

「儂は、魔力量、魔法出力、魔法操作技術がお主の二倍のじゃ。勝てるわけなかろう」

 遂に限界を迎えたシエラは、その場に倒れこむ。

「もういいじゃろう。さっさと失せるのじゃ」

「くそっ…ここまでか…」

 そんな、倒れこむシエラの前にリョウマが立つ。

「俺が相手だ、ワイス」

「それは構わんのじゃが、勝算はあるのかの?」

「いや。俺は、駆け出しでな。だから、火力勝負ってのはどうだ。お互いに魔法を撃ち合うだけ。どうだ?」

「いいじゃろう、面白い。では!」

「ああ、くらえ‼︎」

 リョウマは、全力で魔法を放つ。

 大洪水並みの水量が常に放たれ、凍らされていく。

 ワイスも全力の炎を込めて、剣を振るう。

 炎の斬撃が、絶対零度の氷を軽々と砕いていく。

(これは、いけるんじゃないか)

 圧倒的な魔法量を持つリョウマは、だんだんとワイスを押していった。

「すごいもんじゃのう。とんだ怪物じゃ。だが、このまま、負けてやるわけにはいかんな」

 ワイスの持つ剣が、杖に戻る。

「"複製体(ドッペルゲンガー)"!」

 杖から黒いシエラが、20人ほど生み出される。

「はあっ⁉︎」

「この"複製体(ドッペルゲンガー)"は、性能は本物と全く同じ。これだけの数がいれば余裕じゃな」

 形勢は一気に逆転する。生み出された20人のシエラが炎の魔法を放ち、リョウマはあっさりと吹き飛ばされる。

「ぐあっ!」

 吹き飛ばされたリョウマは、シエラに受け止められる。

「逃げるわよ」

「えっ?」

 リョウマとシエラは、転移の魔法によってその場から消える。

「ふう…やっと諦めたか。だが、面白かったのじゃ。さて、木を持っていくか」

 ワイスは、木の方を見る。

「はははははは。これは、やられたのじゃ」

 7本あった木は、3本しか残っていなかった。

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