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天玉の守護者  作者: 月山李陵
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第三話「期限 其ノ壱」

やっと来ました第三話。

ここからが正念場だと感じています。


これからもよろしくお願いします。

応援メッセージと厳しい意見待ってまーす!

それではどうぞよしなに。

 入隊確認期限まで残り七日。

「自分と向き合う時間をください、なんて威勢のいい事言ってみたけど……。」


(一度も考えたことなかった。)と口に出しそうになった時、


「誰のことも考えずに自分の好きにすれば後悔なんてこの世から無くなっちまうよな。」


横で全助がまるで僕の心中を察したように呟いた。


「それが出来たら僕は鴉羽さんから一週間も時間なんて貰わないさ。」


僕は思った事を率直に述べた。


「だよなぁ……。」


それ以降僕達の間に会話は無く、やがて通りの角を曲がった所で二人は別れた。


夜飯を食った後、父さんと母さん二人を呼んで正直に話をした。

父親は嬉しい反面不安だという。

母親は口には出さなかったが不安な顔をしていた。

そりゃそうだ、もしかしたら戦場に行くかもしれないのだから。

二人の意見は「自分の思うようにしろ。」という事だけだった。

僕は先に眠った弟の寝顔を見ながらもう一度頭の中で自分という存在を見つめ直してみた。


朝だ……。

そのまま見事に爆睡していたようだ。

先週から学校は二週間の休みに入った。

特に何をするでもなく布団を被って二度寝をしようとすると、


「おきろよ!兄さん!朝ごはんもうとっくに冷めてるよ!」


甲高い声で弟がこういうのだからたまったもんじゃない。

弟に連れられて渋々食卓に向かった。


「あら、おはよう。朝ご飯とっくに冷めてるわよ、早く食べてしまいなさい。」


「あー、うん、分かったよ。いただきます……。」


寝惚け眼で母親を見ながら生返事をした。


「全く、聞いてるんだか聞いてないんだか。」


母親は呆れ顔をすると直ぐに振り返って台所で跡片付けをし始めた。


「あれ?父さんは?」


僕が聞くと、


「お父さんなら規則正しく朝早くに会社に行きましたよ。休みだからってあんたも生活の規則を変えちゃダメよ。」


母の嫌味がかった小言を聞き流しつつ、さて今日は何をしようかと考え始めた。


「兄さん!虫取りしに行こう!」


弟が考慮している私の腕を引っ張って虫取りに誘ってきた、しょうがないと思いながら、


「待て待て、すぐに支度するから。」


そう言って支度をした後、僕達兄弟は林の方へ向かった。

ここら近辺の林にはカブトムシやクワガタムシがよく出るから昔から僕達兄弟は父によく連れて行ってもらったものだった。


弟に「あんまり離れるなよ。」と言うと僕はそこら辺のベンチに座って考え事の続きを始めた。


僕が軍事趣向を持ち始めたのは日本が第一次世界大戦に戦勝してこの国が破竹の勢いに乗っていた時だった。

近くの親戚のおじさんも戦争に行っていて、その話を頻繁に聞きに行ったものだった。

学校の成績はあまり良くないが軍事知識なら誰にも負けない自信があった、それ程僕の軍事趣向は徹底したもので、学級のみんなは僕の事を軍事先生と呼んだ。

そのうち渾名が「グンジ君」になった程だ。

けれども大抵の奴は僕の趣味を面白がるばかりで話を真剣に聞こうともしなかった。

それに加えて僕は上級生に目を付けられていて、よく喧嘩の相手をさせられていた。

こんな境遇だけど些とも悲しくなかったし辛くなかった。

それは決して負け惜しみではない、それは全助が居たからだった。

彼はどんなに分からないことでも僕の話を始めから終わりまで聞いてくれて、分からないことは質問をしてくれた。

こんな事があったから、全助には頭が上がらない。

ほんとに彼の様な親友が出来て良かった……。

そんな事を考えていると、


「お隣いいですかね?」


ハッとした僕が視線を上げるとそこには気品と威厳ただよう紳士が一人いた。



第三話「期限 其ノ壱」~完~


弟と訪れた森林公園で出会った紳士。

自分との向き合い方を模索する平太。

二人の男がいま交錯する。


第四話もお楽しみに……。

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