農家さん、事情を説明する
農家さんのプレイヤーハウスの隣に、もう一軒、家が建っていた。
…分かるわ。本当に、茫然としてしまう気持ちが分かるわ。
最初の道具に、農具を選択すると初回ボーナスとして家が与えられるの?
本気で一瞬、そんなことを考えてしまったわ。
でも、もちろんそんな訳はなく、農家さんはこう答えたの。
「建てた」
三文字!!!
農家さん、三文字でこの異常事態を説明しやがった!!!
確かに、ゲームだから色々と簡略化されてるところがあるわ。
狩りを一つとっても、弓で急所に一発、もしくは2、3発当てれば、動物は絶命して、解体の手間なくアイテムストレージに、『動物の肉』や『動物の皮』を手に入れられる。
だけども、家?!家建てる!?どうやって?!!?
そう詰め寄ると、農家さんは少し恥ずかしそうに説明してくれたわ。
「昔、兄に誘われて秘密基地を作ったんだ。その時、簡単な家の作り方を覚えたんだ。…まぁ、基礎工事を全く行わないやり方だったから、長雨で地盤が歪んで倒れちゃったんだけどな」
子供だったから、そこまで考えられなかったんだよ。と恥ずかしがってたけど、正直、そうじゃない。
なぜ、子どもの秘密基地づくりが、そこまで発展したんだ。
そして、なぜこのデスゲーム中に童心に返って、秘密基地を作った?!
色々ツッコミたかったけど、年上だしほぼ初対面だから、と一生懸命封じたわ。
あれは、かなり大変だったわね…。
さて、ここでいらないかもしれないけど、農家さんが建てた家について説明するわ。
まず、ここはゲームの世界だから、地震といった自然災害わないし、地盤沈下もない。
そのことを村で他のプレイヤーから聞いた農家さんは、その昔作った秘密基地がこのゲームでは有効だと気が付いたらしいわ。
まず、村で納品クエスト――これも、他のプレイヤーから教わったらしい――を受け、自分で育てて納品。
そのお金を使って、斧や鉈といった必要な道具を買い足す。
そして森へ行き、片手で握れるくらいの太さの木をどんどん伐っていった。
ゲームだから、伐るのは簡単よ。
まずは、『伐採』スキルを習得――これも、他のプレイヤーから教(略)――、装備欄のところに、伐採したいものにあった装備をすれば――これも(略)――、一度叩きつけるだけで伐採ができる。
次に、木製トンカチを装備し、それらの木を、家を立てる予定の場所を囲うように、一定の間隔で地面にむけて一度打つ。
そうすることで、木の耐久力がなくなるまで、移動不可能オブジェクトになるわ。
打ち付けた木のうちの2本は屋根の頂上になる高さ…大体自分の身長よりも大きい位のもので、それ以外は、壁の骨格兼屋根の軒先を支える高さ…これは自分の身長の肩より少し小さい位のものよ。
この時、家を建てる予定地を平地にすることと、予定地の場所の一辺が、梁として用意した木よりも長い辺がないように気を付けないといけないわ。
そうじゃないと、家が斜めになったり、強度に不安が残るからね。
そして、縄を装備して、地面と平行に打ち付けた木を合わせて、タップすれば、固定は完了。
これが、所謂梁になるわ。
屋根の骨格は、壁と屋根の頂点の骨格に合わせた長さの二つの木を、同じ要領で縄で縛って、立てた骨格とつなげていく。
これで、家の骨格ができたわ。
次は屋根づくりね。
細長い木の枝の先端に大きめの枯れ葉を合わせてからタップすると、コマンドとして『刺す』が出てくるからそれを選択。
そうして何枚も何枚も枯れ葉を刺し、枝全体に葉っぱが付いたら、屋根の骨格にしばりつける。
これを、地道に続けていくのよ。
壁は、半分に割った柔らかい木を、地面に打ち付けられた木に合わせ、これまたタップ。
すると、『編む』っていう欄が出てきて、それを押せば、半自動的に地面に打ち付けられた木に編まれていくわ。
あのシーンは、ちょっと魔法みたいで感激するわね。
また、これを繰り返して、最後に、森から『採取』した粘土質の土を木で作られた壁に合わせ、タップして『塗る』をタップ。
これで、完成。
さすがに、暮らすことはできないけど、倉庫としては十分の出来前だったわ。
農家さんが作ったのは、広さ18平米…、っていっても実感わかないよね。
車一台止められるくらいのスペースのものよ。
それでも、長い木や遠くにある粘土質の土を『採取』して帰るのは、一苦労だったみたいで、1か月はかかったって。
アイテムストレージを知っていれば、もっと早くできたのにって、悔しそうにしてたわ。
…何で、こんなに詳しいのかって?
それは、まぁ、後で解説つきで、やらされたからよ…。
この作り方は、YouTubeに上げられていた動画「Primitive Technology: Wattle and Daub Hut」を参考にしてます。
一度、試しに作ろうとしましたが、斜面では難しかったです。
皆さんも、レッツ!サバイバル!!