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農家さんがデスゲームを解放した件について  作者: 夏南
勇者さんによる話
17/22

農家さん、帰宅する

 こうして、村長さんが主軸となり、農家さんがアドバイザーとして始まった里山計画。

それは、村長さんにより、『里山プロジェクト』として、村の人々に発表された。

ゲームならではの悩みもありながらも、大体は農家さんの知識でカバーでき、順調に進んでいった。


 あ、ちなみに農家さんが持ってきた大量の野菜は、俺と村長の二人と物々交換した。

ダンジョン系のアイテムを持っている奴が、俺らしかいなかったからな。

農家さんは、武器や鎧にならないような変なアイテムばっかほしがったけど、まぁ、本人が満足そうなので俺たちは何も言わなかった。


「長いこと、手伝ってもらってすまなかった。あなたの協力がなければ、この計画はこれほど順調に進まなかっただろう」


 村長はそう言って、農家さんと固く握手した。

農家さんは、2週間滞在して、里山プロジェクトに参加していた。

里山を作るなんてことを、2週間でできたのは、ゲームだからってのもそうだけど、農家さんの豊富な知識、なにより村長の人を動かす能力の高さによるものだ。


 村長は、今まで村を離れて、ダンジョンに潜っていたとは思えないほど、村の人たちに慕われ、そして、村の人たちのことを把握していた。

彼女の指示に、一切の無駄はなく、それぞれに適した仕事を割り振っていく様子は、現実でそういった仕事についているだろうって想像できるほどだ。

実際、後から村長の職業を聞いて、「やっぱりな~」って思ったぜ。

ま、それは後にして…。


「これからは、里山プロジェクトだけでなく、貿易路の確保などもしていく予定だ。もし、農家さんが良ければ、またこの村に『物々交換』に来てくれ」


 その時には、たくさんの種類のアイテムが揃うようにしよう。と自信に満ちた顔で村長は言った。

…え、なんで俺が最後まで一緒にいたかって?

まぁ、あれだな。俺の力が必要だったっていうか、ほら、魔物退治とか…。

間違っても、なんとなく仲間はずれが嫌だったとか、そういうんじゃないからな!!

帰りだって、農家さんに護衛を依頼されたしな!!!


「そういえば、あの盗賊たちはどうなったんだろうな」


「あの後、畑を頼んだ人から何度かメールが来たが、うまくやっているようだ」


 メッセージで事前説明あったが、いきなり盗賊三人が現れたんだ。

びっくりしただろうな。それでも、うまくやっていけるなんてどうな人なんだろう。

それが気になって、農家さんの家までついていった。

そこで、俺は衝撃を受けた。


「まったく!おっそい!!盗賊が弟子入りに来るわ、事業とか意味の分からないこと言い出すわ!!こっちの都合も考えてよね!!!」


 家に入った瞬間、そう叫んだのは、赤色の髪の毛をポニーテールにした女の子だった。

赤色といっても少しくすんだ色で、日本人ながらも少し勝気な顔立ちとなじんでいる。

服装は、農作業をするようにオーバーオールだが、その下に革製の胸当てが装備されているところから、彼女が弓使いだということを示していた。


 だが、そんな情報はどうでもいい。

重要なのは、農家さんの家に行ったら、女の子。しかも、美人。

前にも言ったが、このゲームで女子は少ない。

にもかかわらず、女子とお友達。しかも、畑を任せるほど仲のいい友達。


「うらやましい…」


「あの…、狩人さん、農家さん、帰ってきたんですか?」


 思わず本音が漏れていると、赤髪の少女の後ろから、恐る恐るといって様子でこちらを伺う少女と目が合った。


「ひっ…!」


 目が合った瞬間、すぐさま後ろに隠れてしまったが、『索敵』スキルを鍛えまくった俺には、しかと見た。

水色の長髪を後ろで緩く結び、丸い大きな瞳の小動物系美少女を!!

先ほどの赤髪の女の子が、頼りになる姉御系なら、今の子は守ってあげたくなる妹系。


「なんだ、ここは、天国か?」


「俺の家だ」


 知ってる。

農家さんを怒っていた赤髪の少女は、俺を見て怪訝そうに見つめた。


「え、それで彼は誰なの?」


「彼は、勇者だ。俺を隣町からここまで、行きも帰りも護衛してくれたんだ」


「え、勇者…?!」


 この時初めて、農家さんの中で、俺の名前が勇者になっていることを知った。

え、そんな恥ずかしい名前なの聞いてない。しかも、そんなの女子の前で言ってほしくなかった。

だが、時、すでに遅し。

勇者だと紹介された少女は、「いつものあだ名か…」とつぶやいた後に、俺を下から上を見て、正確には俺の服装を見て、納得いったと言わんばかりの笑顔を浮かべた。


「はっはーん。それで、勇者か…」


 俺は今まで史上、最高の速度で装備システムを開き、黒色のコートを装備から外した。

勢いよく、装備システムを消すと、笑顔で挨拶をした。


「初めまして!農家さんをここまで護衛した…」


「勇者さんですよね?」


「やめて!そのあだ名やめてください!!!」


 人生で初めて、俺は土下座した。

初対面で、別にそんなに助けてもないのに、勇者と紹介されるなんて、どんな黒歴史だ!!

その後も、何度も普通のPL名で呼んでもらおうと苦心したのだが、盗賊三人に加えて、あの妹系美少女にも、勇者という名前で呼ばれるようになったのは、言うまでもない。


 その様子に、主犯である農家さんは、なぜこうなったのかわからないという顔で、首をかしげていた。

のんびり更新ですみません。

きまぐれな更新スピードですが、優しく見守っていただけると幸いです。

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