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農家さんがデスゲームを解放した件について  作者: 夏南
勇者さんによる話
10/22

農家さん、夢を壊す

 狩人さんの取材を終え、彼女から紹介された別のゲームプレイヤーと会う約束をしていた。

待ち合わせ場所は、肉料理を専門としたレストランだ。


 そこに訪れると、待ち人は先に着いていた

高校の制服に身を包んだ、茶髪の人の良さそうな顔をした青年が先に座っていた。

待たせてしまったことを謝りながら、席に座った。

彼は、第一印象に違わず、こちらの非礼をと笑顔で許してくれた。


 晩御飯の時間帯だった為、食事を注文した後、彼は少しワクワクした様子で話し始めた。


――――――――――――――――――――――――


 記者から取材を受けるなんて、人生でないって思ってました!!

…あ、敬語じゃなくていいんですか。でも、年上ですし…。

生の声を聞きたい?…分かった、そういうことなら、いつも通りの喋り方で喋るよ。

農家さんとも、ため口だったしな…。


 …へぇ、記事の内容も、デスゲームの内部事情よりも農家さんの話を主軸にするんだな。

まぁ、実際、あの中でおこった大半のことが、農家さんのおかげ…っていうか、せいというか…。

あの人が関わっているのは、間違いない。


 そういえば、自己紹介が遅れたな。

俺は、勇者。…って笑うな!!自分でも若干痛いかな?って思ってるから、笑わないでぃ!!

まさか、あの自己紹介が、あだ名になるなんて思うわけないだろ!!

出来心だったんだ…ってまるで犯罪者の供述みたいになっちゃったじゃんか!!


 だって、勇者って男子は誰もがちょっとは憧れるだろ!

デスゲーム開始が宣言され、絶望する人々。

そんな中、勇気を出してデスゲーム解放するため、自分の命を危険にさらしながらも、戦いに挑む。

生死を掛けた戦い!熱い友情!そして、可愛い女の子との恋愛!!!


 そんな小説みたいな状況になったんだ。

あの時は、俺らの世代はちょっとテンション上がって、黒歴史の一つや二つ、みんな持ってるもんだぜ。


 デスゲーム開始直後、俺は村にいるNPCに片っ端から話しかけ、討伐系のクエストを受けまくった。

自分の村の討伐系クエストを受けきったら、隣の村のクエストを受けに行った。

時折、納金しながらも、稼いだお金は先行投資として武器や防具に変えながら、まだプレイヤーが訪れたことのなさそうなダンジョンとか、色々いったさ。


 そんな生活を送っている中、農家さんとの出会ったのは、農家さんが出したクエスト依頼がきっかけだった。

デスゲーム開始から、半年が経つと、パーティーを組みたい、レベルをあげたい、といった人たちが、『時を告げる塔』の一階にある掲示板に、依頼を出すんだ。

俺は、村から村へと旅をしながら、NPCのクエストや、さっき言ったようなPLが出したクエストを受けて稼いでいたんだ。


「髪、ピンク。服、白色。目印、麦わら帽子、かぁ…」


 依頼用紙に書かれた、パーティーを組みたい人の特徴欄に、俺は頬が緩んだ。

俺の脳裏には、白色のワンピースを着、ふんわりとしたピンク色の髪の毛に、麦わら帽子をつけた可憐な少女が浮かんでいた。

依頼内容は、隣町までの護衛。護衛対象は、一人。


 それくらいなら、昼夜問わず、モンスターや動物狩りを行い、レベルを上げていた俺なら余裕だった。

PLからの依頼だと、経験値はあんまり入らないし、報奨金もそんなに高くはなかった。

けど、俺の目当てはそんなものじゃない。


「女の子からの依頼だあああああ!!」


 依頼人との待ち合わせ場所に向かいながら、抑えきれずに叫んだ。

周りのNPCやPLがこっちを見たが、そんなのは関係ねぇ!!

思いのままに跳ねまくりながら、待ち合わせ場所に向かったさ。

それもそうだろ?MMORPGをやる女の子なんて少ないし、しかも買うには深夜に並ばなきゃ買えないようなゲームだ。

それで、すでに女性プレイヤーが少ないのに、デスゲームを開始してから、怖がって女の子は自分のプレイヤーハウスから出たがらないしな。


 依頼人の女の子もまた、プレイヤーネームに『農家』と名付けちゃう当たり、デスゲーム開始前ならば、のんびりほのぼの系のプレイを望んでいたんだろう。

けど、デスゲームが開始し、納品クエストをするものの、クエストの種類も底をつき、勇気を振り絞って、隣の村にクエストを受けに行く。

そんな不安でいっぱいの中、モンスターや盗賊に襲われ、絶体絶命のピンチに…!

だが、颯爽と助ける護衛。つまり、俺!!

少女は、そんな頼もしい俺に、好感度を上げ、俺もか弱いながらも心の強い彼女に惹かれ…そして、ついに…。

…と、そんな妄想をしていたんだ。


 早まる気持ちを抑えながら、窓に映った自分の姿に、変なところはないか確認した。

装備は、今の自分が持っている中で、もっともかっこよく、ランクの高い、黒色のコートが滑らかな光沢を放っているのに、満足して、俺は待ち合わせ場所に着いた。


 そこにいたのは、


「君が、護衛を引き受けてくれたのか。私が、農家だ」


 白のタンクトップに、紺のツナギを着、ピンク色の髪を一つ結びにした、身長180㎝の大男だった。


「チェンジで」


 敬語なんか吹き飛んで、無表情で告げた。

新しい語り部です。

「狩人さんによる話」もまだ終わっていませんが、両方同時にに更新していきます。

章順に読んでも、更新順に読んでも、デスゲームのシステムさえ知っていれば、読むことができるよう、心がけて書いていきます。

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