農家さん、デスゲームに巻き込まれる
VRMMORPGゲーム『シャロン』
それは、あなたがより、あなたらしく生きられる世界。
自然豊かなその世界には、魔族、モンスター、エルフやドワーフ、そして人達が暮らしている。
人たちが暮らす土地には、いくつもの村があり、プレイヤーは村の周辺に大きな土地を持つ地主だ。
多くのRPGゲームにある職業欄はなく、それ故に無限ともいえる職業を選ぶことができる。
つまり、ファンタジーの世界観の中で、自分の好きなことをして暮らしていける。
自分の土地を使って町を発展させるもよし。最初の村を出て旅をするもよし。はたまた魔族の住む国に行き、魔王を倒すもよし。
生まれ、才能などによる理不尽な他人との差を無くした、真の意味で平等な世界。自分の力のみで、どこまでも行ける世界。
そんな世界の発表に、世界は熱狂し、発売日には、最初のVRMMORPGのソフトが発売された時のような長蛇の列ができたものだ。
熱狂的なゲーマーは、ログイン開始時間から1時間以内にはほぼ全員ログインし――
――その全員がゲームからの脱出が不可能になった。
「このゲームは、デスゲームになりましたー!クリアー条件は、1000億ギル集めること!」
村の中心部にある『時を告げる塔』の上に立った少女が声高らかに宣言した。
癖のないつややかな銀髪に、深紅のワンピースを着た12歳くらいの少女だ。
この少女は、ゲーム内に200もある村に一斉に現れたのだ。
その宣言に、プレイヤー達は絶望した。
ギルとは、この世界の通貨の単位であり、このシリーズではなじみ深い単位だった。
だが、その額は異常だった。
同シリーズの作品において、熱心に毎日ログインしてクエストをこなしているゲーマーでも、年収100万ギルだったのだ。
ログインした人数が1万人。
全員が協力して稼いだとしても、単純計算して、10年はかかる。
それまでに、本当の自分の体が死んでしまう。
少女は、最後に、こう告げて去っていった。
「ここは、あなたがより、あなたらしく生きられる世界。さぁ、本当のあなたはどんな人間?」
これは、このデスゲームが開始してから3年後。
クリアーされてから1年後。
ゲームクリアーした者たち、生還者たちにより、語られる。
『農家さんがデスゲームを解放した件について』の話である。
農家さんの伝説が思いつき次第、投稿していきます。