0話 用法用量は
0話は短めに。本編と絡んでくるのはそれなりに先です。
書き溜めしてる訳ではなく、プロット自体は僕が10年以上前に書いたものを頭の中で分解しながらその場その場で変更かけている形なので進行はちょい遅めかもしれません。
あ、ついでですが初投稿となります。
長い目でお付き合いいただければ幸いです。
「むぐぅーーー!!!んーーーーーっ!」
バタバタと手足を上下に振り回すと、咽返るような匂いと共に息苦しさを感じる。口に何かを押し込められていて鼻からしか酸素を取り込むことが出来ないのだが、暴れた事によってカビ臭い埃を思い切り吸い込んでしまったようだ。咳き込んでみるが塞がれた口から空気が漏れることはなく、喉の奥に感じるイガイガを呑み込む事で更に吐き気がしてくる。
「やっと捕まえた!小僧の読みが当たったな!!……にしても、ひでぇ匂いだぜこの部屋は」
10歳程度の子供を後ろから抑えつけ、口に布のようなものを押し込みながら小太りの男はひとつ大きな咳をする。耳元で立てられた大きな音に怯えたのか、子供は目に涙を浮かべながらバタつかせていた腕を下ろし静かになった。地べたに座り込んでいた為に伸ばしきっていた脚は小さく震えている。
「へへっ、大人しくしてもらえて助かるぜ。あまり騒がれるとこの部屋ん中の埃で病気になっちまいそうだ」
「おっさん、あんま乱暴にしてやるな。息出来なくて顔青くなってんぞ」
先程からどうにも動きが少ないと思っていたら、そういう事か。男はハッと気がついたように子供の口を抑えていた手を緩め、唾液でベトベトになった布を引っ張り出す。虚ろな表情―――意識が朦朧としているのだろう。子供はぐったりと、自分を捕らえた男にもたれかかるように倒れ込んだ。
「ありゃ、薬がきつ過ぎたか?おーい。駄目だなこりゃ」
「おっさん、用法容量は」
「わーったわーった!すまんな、俺も慌ててたもんだからな」
男の陰から……ではなく、文字通り影から銀色の髪の青年が姿を現した。たった今、青年が出てきた影は跡形もなく消えている。
気絶した〈少女〉を抱きかかえると青年は男の側を離れて、ひとつしかない部屋の出口へと足を進める。
「さて、僕は君の助けになれるかな?」
扉を開け放ち小さな部屋に光が射し込むと、青年の腕に抱えられていた筈の少女の姿は影も形も無くなっていた。青年は少し困ったような笑みを浮かべながら、何かを抱きかかえたような格好のままで男を振り返る。
「おっさん、任務完了だ」
クリスマスイブの夜に、ふと思い立って。
前から書いて公開してみたかったものを、これから書いていこうと思います。
0話自体はぶっちゃけ今さっき思いついただけなのですが、むりくり今後に繋げようと思ってます()
1話からは雰囲気がまた変わるもしれません。