新しい仲間
罠が気になって早く目が覚めた。穴の方から声が聞こえてくる…いや、これは実際に声に出してる訳じゃないっぽいな…
「《念話》を習得しました」
向かってみると四肢を投げ出した青い狼がいた。でかい。体長1.5mくらいはあるぞ。
「俺らの食料をあさっていたのはお前だったのか」
(旨そうな匂いがしたからつい…ね…許してくれ…)
「考えてやらないこともない」
(吾に出来ることならなんでもするから…)
「言ったな?」
言質は取れた。
「じゃあ俺の猟獣になってくれないか。俺達は保存しにくい内臓の部分はあんまり食べないで捨ててるけど、動物にとっては一番おいしいんだろ?ギブアンドテイクだ。」
(その通り。あれは非常にうまい。あれを沢山くれるならお前の猟獣になってもいい。)
意外とプライドを捨ててあっさり乗っかってきた。
「じゃあ決まりだな。おーい!ユニ起きてくれ」
「なんですか?」
目を擦りながら起きてきた。
「わっ大きな狼が。ブルーウルフですか」
事情を説明する。
「…てなわけでこいつを猟獣にするつもりなんだが、なんか儀式とか必要になったりする?」
「奴隷契約という形で縛る方法以外には特にありませんが、そこそこな町にしか契約出来る場所はありません…が裏切ったら…分かってますね?」
(何この女の子怖い)
ブルーウルフが震えてるからその辺にしといて欲しい。
「じゃあ契約はなしでいいか。」
「そうですね。では名前を考えましょう。」
しばらく案を出しあって行った結果彼の名前はシリウスになった。
「俺は要。じゃあこれからよろしくな」
(よろしく頼むぞ)
こうして、ちょっと大きめのペットが出来た。
「早速なんだが、1つお願いしていい?」
(なんだ?)
「薬草とか毒草とか、何かしら効果がある草を探してきてくれ。」
(承知した。でも何故?)
「後で教える」
(では行ってくる)
言うや否や一瞬で姿が掻き消えた…性格さえチョロくなければかっこいいやつなんじゃなかろうかあいつ。
「ブルーウルフはベテランの冒険者のパーティーでもたまに負けますからね。」
そんなに強いのか。仲間にしといてよかった。ラッキー。
「シリウスが戻ってくるまで旅支度をしよう。」
「何をするんですか?」
「正直荷物を纏めるだけだ。」
っていってもユニの調理道具と裁縫道具くらいしか広げてないからすぐ終わったけどね。
少しして、シリウスが背中に植物を乗せて戻ってきた。器用だな。
(運動したから腹が減った。なんか寄越せ)
「ほい。」
肉を《火炎放射》で適度に炙って放り投げる。
(なんて旨い肉なんだ!こんなのは食べたことはないぞ!肉汁が口の中に広がって…)
食レポを始めたシリウス君は放って置いて、取ってきてもらった植物を見てみることにする。
ユニの鑑定に頼りながら仕分けして15分、草の内訳は次のようなことになった。
薬草×21
麻痺草×3
毒草×2
眠り草×3
ビリビリ草×4
冬虫夏草×1
なんかの木片×20
さて、何故取ってきてもらったのか。まず枝でパララリザの攻撃をガードしたときのことを思い出して欲しい。あの時俺は枝のスキルをゲットしている。つまり、《鑑定》は植物も対象になる。シリウスに頼んだのはもしかしたら植物を摂取するときにもスキルが入手できるのかもしれないと踏んだからだ。
では非常に怖いが食すとしよう。
薬草を食べる。結構苦い。スキルは獲得できなかったが、《治癒》を既に習得済みだからかもしれない。気を取り直して行こう。
毒草を食べてみる。クソ不味い。しいたけを腐らせたみたいな味がする。
「《ポイズン》を習得しました」
やはり俺の予想は合っていt…立ち眩みがして、吐き気がする…急いで《解毒》を掛ける。
(あーおいしかった…追加の肉はないのかね)
…お前はおいしそうな食レポでいいな。手頃なサイズの肉を同様に調理して与える…こいつよく食べるな…
麻痺草はどうせ《麻痺毒》だからスルーした。不味いものは少ないに越したことはないからな。
「俺が寝たら全力で起こしてくれよ」
木片で薫製肉を作成する下ごしらえをしているユニに頼んでから眠り草を食べる。
「《催眠術》を習得しました」
…意識が落ちる…かと思ったがほっぺたを叩かれまくって起きた。まあ全力でと言った俺が悪かったんだが。
お次はビリビリ草である。味はパンチが聞いてて辛い。おっ。名前通りビリビリしてきたぞ!
「《静電気》を習得しました」
地味だね。いいけど。いつか使うかもしれないから。
これで全ての植物を食べた。心なしかお腹が痛いが気のせいということにしておく。
え?冬虫夏草を忘れてる?…あれは流石に生理的に無理だった…
「旦那様煙を起こしてくださいな」
言われた通り《火炎放射》を使う。大分魔力のコントロールにも慣れてきた。
「やっぱり魔力に慣れるのも早いですね!さすが旦那様です!」
面と向かって褒められると照れるので反射的に顔を背ける。それを見てユニはクスクスと笑っていた。
さて、薫製肉も完成したので出発する。時刻は昼前くらいだろうか?狩りをしながら北へ進むことにする。
(まさか吾が人間を乗せることになるとは…)
俺達はシリウスに股がって移動している。背中にユニの胸が触れてる感触を楽しみつつ(ほぼないなんて言ってはいけない)、周りを見回す。景色は目まぐるしく変わっていく。やっぱり速いな。
お腹が空いてきたので昼食を摂ることにした。