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『ピノキオ』を読んで混乱しちゃった、その理由 3

 例えば幼い子供なら、初めて障碍者しょうがいしゃを見かけた時、

「あの人どうしたの?」

 と聞くのは、自然なことです。こればかりはしかたがありません。

 言われたほうは嫌な気持ちだったとしても(気にしなかったとしても!!)次の瞬間に、

「そんなこと言うんじゃないの!」

「ジロジロ見るんじゃない!」

 と怒りつけるのは、少なくとも私は――あまりいい方法と思いません。


 子供の感性って変な意味でもやわらか過ぎるので、

 障碍者 → 親の怒鳴り声 → ビクッ!(恐怖) → 近づくどころか、見ても聞いてもいけない人?

 というような感じが続くと、

 障碍者→ ビクッ! → なんか怖くて、付き合う対象とか思えない!

 の条件反射ができてしまうような気がします。

 事実、私がそうでした。


 優しくなりたい。だけど怖くて優しくなれない。

 ジロジロ見たり、悪口言ったりしちゃいけないことは分かったけれど、どうやって優しくすればいいのか、誰も教えてくれない。

 そんな中で、ときおり出会う障碍を持った人達と、どう付き合えばいいのか?

 緊張のあまり、差別したことがたくさんありました。

「そもそも体が不自由な相手だからって、緊張すること自体が偏見なんだ」

 分かっているから、よけいに緊張して不自然な態度になってしまう。


 子供には、できるだけ穏やかな声と言葉で、説明してあげて欲しいなあ……。

 大人の態度が穏やかだと、安心してもだいじょうぶな存在なんだ、という気持ちがわいてくるかも知れないです。


     ※    ※    ※


 さて。そろそろ話を戻しましょうか。

 リアルでもフィクションでも、物乞いをする障碍者が出てくると、あのころ大人達に感じた、暗く激しい恐怖と嫌悪がぶわっとわき上がってくる条件反射。

 こういう背景があったために、私は健常者だった時からピノキオが好きにはなれなかったのでした。


「実は俺、生まれ育ったところに障碍者がいてさ。その人が道を通ると、みんなで石を投げてたんだよね。そのころの俺って、自分も障碍者だって気づいてなかったから、一緒に石投げてたよ」

 などという昔の知り合いの話を思い出しながら、こんなことを考えます。


 ピノキオ問題って、どういう世代の人達が回収運動を起こしたのでしょう。


 口々に差別用語を叫びながら、みんなで石を投げつけるのが普通だった時代でしょうか?

 優生保護法ゆうせいほごほうって言ったかな? その法律が乱用されて、女性の障碍者や生活保護の人までが、勝手に子宮や卵巣の機能を奪われていた時代とは、重なるのかな?



 長々と書いてしまいましたが、だからといってあの本を絶版にしろとは思いません。

 本当に重いのは、本の存在ではないと思うからです。

 それを読む子供に対して、世間や親はどういう態度をとり続けてきたのか?

 こちらのほうが、よほど重いんじゃないかな。


 どんな出自でも、どんな姿でも、どんな奇妙なわけありでも。

 自由に外に出て人と交流しやすい環境で、一緒にわいわいやったりケンカしたり仲直りしたり、時には絶交なんかしちゃったり。

 そんなことを当たり前にやるのが当たり前、の世界で育ったら、ピノキオなんて!


 単なるフィクションと思って、気にもとめないと思います。

「悪い子がいい子になったら、グレートなことが起こる? 大人に都合のいい話でうそくさい!」

 とは、言うかも知れませんが。

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