『ピノキオ問題』で!?
ピノキオ問題をご存じの方って、今どのくらいいるのかな?
ジェペット(またはゼペット)というお爺さんが作った木の人形が、命を持ってしまうんだけれど、いたずら好きでなまけ者でうそつきで考えが浅くて……という欠点を持っています。
やんちゃ過ぎる子供を映した主人公。
痛い目をみて反省して、いい子になったらハッピーエンド。
童話にはよくあるパターンです。
最初に読んだ時、私はまだ健康体でピンピンしていて、外を走り回っていました。
子供向けの本としては定番で、どこの本屋さんや図書館に行っても、普通に書棚に並んでいたものです。
はっきりした時期は記憶していないのですが、肢体不自由になってからしばらくして、この本に対して障碍者団体から抗議があり、回収騒ぎにまで発展したらしいと知りました。
その時、私が読んだ主張の中で、なるほどと思ったのは次のようなものです。
「本当は健康なのに障碍者のふりをして、働かずに物乞いをしたり、主人公をだましてひどい目にあわせたキツネとネコが、“その罰として”最後は本物の障碍者になってしまう、というところがとても嫌だ」
「通りすがりの人が私を指さして、“悪いことをするとあんなふうになっちゃうよ!”と子供に向かって叫んでいたのを思い出す。何も悪いことをしていないのに、あんまりだと思った。悪いことをすると障碍者になるという思想を、子供達に植えつけないでほしい」
「体が不自由になった時、まわりの人達は判で押したように“なんにも悪いことをしていないのに、どうしてあなたがこんなことになってしまったのだろう”と言って、気の毒がった。その人達に悪気がないことは分かっているが、障碍は何かの罰で与えられるものではない、ということを知って欲しい」
「日本には輪廻転生、因果応報という考えが古くからある。前世で悪行を働いたら、動物(畜生)に生まれ変わるとか、五体満足には生まれないとかいうものだ。この本を読むと、障碍者=前世は悪人、という思想がことさら強化されてしまうのではと、不安に感じる」
ところが世間一般の認識は、そこにはフォーカスしていません。
「差別用語が入っているからという理由で、ヒステリックな人達が過剰反応した。また言葉狩りだ」
このエッセイの最初に出てきた、
「要するに“チビ”と“黒”が悪いんでしょう?」
のリフレイン。当事者にとっては厳しいなぁ。
確かに抗議の内容には、
「びっこだとか、めくらだとか書かれている」
が筆頭に入っていました。
差別を助長しかねない部分があるからといって、回収したり絶版にしたり、そこまでしなければならないのか? という疑問は当然のことと思えます。