友達①
「果歩、大丈夫?」
よほど悲しそうな顔でもしていたのだろうか。蒼は心配そうな表情を浮かべている。
「ごめん、なんでもないよ」
私は笑った。にっこりと。初めてかもしれない、蒼に向けて嘘笑いをしたのは。
「果歩、幸せってもちろんその人によって違うと思うよ。だけど、僕から見たら果歩はあまり幸せにみえないんだ。果歩の今のような笑顔を見ると、もっとね」
ばれている。
「ふふっ。別に蒼に私の幸せについて言われる筋合いは、ないわよね?」
こうまで攻撃されると腹が立つ。表情がむっとしているのが自分でもわかる。なぜ他人に私の幸せについて言われなければならない?いい年して幸せについて真剣に議論するのか?
「確かに筋合いはないよ。僕と果歩は親戚でもなんでもない。ただの友達さ。でもね、果歩、友達だからこそできないことってあるんだよ?幸せについて考えることはその人の人生を考えることだ。人生っていうのはどうやっても周りの奴らがいないと成り立たないからね。僕はそのお手伝いをしてあげようと思ってね」
にっこりと楽しそうに言う蒼はいつもと少し違うように見えた。
特に変わったところはないように思える。思えるが、頬をゆるめることのできない緊張を私は今、感じている。どうしてだろう。圧迫感を感じるのだ、蒼から。
蒼は幸せについて確実に何か、こだわっている。
「確かにその人の幸せについての考え方はその人の人生の進め方につながるとは思うよ。人が生きていくのに周りの人々の助けが必要なこともわかってる。でもなぜそこに蒼が出てくるの?私の幸せについての考え方を更生させたいなんてことを言うの?手伝いなんて、いらない!」
蒼の視線はまっすぐに私の瞳だけを射貫く。思わずその鋭さに私は目が泳いでしまった。
けんかなんて初めてだ。しかもその原因が、幸せについてなんて。笑ってしまう。
「果歩はまさにその状態だからだよ」
窓からぬくい風が吹いて髪を揺らす。
夏の暑さはまだ、抜けきっていない。
誰もいない図書館は、風とは対照的に冷たかった。




