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悪友と妹

早くもブクマしてくださっている方、ありがとうございます!

期待を裏切らないよう頑張ります(汗)

翌日。


「ぶわっはははは!!ついにお前も年貢の納め時が来たか!」


司は自宅マンションのソファーで爆笑している悪友かつ義弟を睨み付けた。


「…人の不幸を笑うなんて最低な奴だな。お前みたいなのが義弟だなんて思いたくもない。」

腹立ち紛れに吐き捨ててやると、腹を抱えていた悪友、あきらはようやく身を起こした。


「仕方ねーだろ。惚れた子が偶々お前の妹だったんだ。俺だってお前みたいな奴を好き好んで義兄あにきにした訳じゃない。」

「お前みたいな男を選んだ咲も咲だが、お前もお前だな。選りに選って何でこんな我が儘女に惚れるんだ。お前の思考回路は相変わらず理解不能だね。」

「お兄ちゃん何か言った!?」

悪友の隣に座っている妹、咲の怒声に、司は口を噤む。


「いーじゃん我が儘で。咲の我が儘なんて可愛いもんだし、いくらでも叶えてやるよ。」

「あーくん優しいっ!お兄ちゃんとは本っ当大違いね。」


にこにこと笑いながら妹の髪を撫でる悪友。自分を一睨みしてから悪友に嬉しそうな笑顔を向ける妹。確か付き合いだしてからは十年、結婚してからでさえ三年は経つ筈なのに、未だバカップルのように二人の世界に入り始めた妹夫婦に、司は溜息をついた。


「そういうのは自分達の家に帰ってからやれ。って言うかもう帰れ。俺は理不尽な見合いの対策を考えなきゃならないんだ。」

コーヒーを飲み干し、空になったカップをキッチンに運ぼうと立ち上がる。


「何よその言い方。お父さん達と喧嘩したって聞いて、心配して寄ってあげたのに。」

「そーだそーだ。それに対策っつったって、お前にまともな案が思い浮かぶのかよ?」

明の言葉に、司はピシリと固まった。そしてゆっくりと振り返り、悪友と妹を見遣る。


西条明さいじょうあきら。大学の同級生にして司の親友…というより悪友。女嫌いの自分とは対照的に女好き。そのせいか女心を掴むのはお手の物で、顔の良さも手伝って昔からかなりモテていた。妹に一目惚れし、一転して気持ち悪くなるくらい妹一筋になるまでは、来る者は拒まず去る者は追わず状態。何股かけていたか分からないくらいなのに、妹と付き合う前後を含め、不思議と女に関する諍いなどは聞いたことがない。


そして妹、咲。長男で跡継ぎ予定のため厳しく躾けられた自分とは違い、両親、特に女の子を欲しがっていた母に甘やかされて育ったため、自分が苦手とする母そっくりの我が儘な性格に成長した。子供の頃から妹のお守りを押し付けられ振り回されたり、兄妹喧嘩の度に「お兄ちゃんなんだから」と母に諭され理不尽でも我慢させられたり、自分の都合も聞かず母妹おやこの買い物に付き合わされ延々と歩き回された挙句大量の荷物運びをさせられたり…と、自分が女嫌いになった一因を担っている存在でもある。


母の言っていた「心当たり」とやらも、母の交友関係は「類は友を呼ぶ」と言うやつなので、母が義娘むすめにしようとする女もどうせ似たような性格に違いない。そんな女と一生を共にするなど真っ平御免だ。

女心など分からない分かりたくもない自分に対し、女心を知り尽くしている明なら、そして母とおそらく見合い相手になるであろう女と似た性格の妹なら、もしかしたら自分には思い付かないような策を提案してくれるかもしれない…。

そう考えた司は、コーヒーをもう一杯入れて自分が座っていたソファーへと戻った。


「明。そんな台詞をほざくって事は、ちゃんとした対策を提案してくれるんだろうな?」

「さあな。少なくとも、女嫌いのお前が一人で悶々と悩んでいるよりは、俺らも一緒に考えた方が少しはマシな対策になるだろうって言いたいだけだ。」


明は真面目な表情で答えた。どうやら一緒に考える心積もりでいてくれているらしい。流石悪友。じゃなかった親友。

心強さを覚えながら司が素直に礼を言うと。


「当然だろう。お前と結婚する女ってのは、俺の義姉になる女って事だぞ。変な奴とくっついてもらっちゃ困る。」


前言撤回。やっぱりこいつは悪友だ。

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