猫かわいがり
猫かわいがりってのはね…
今日もいつもの定位置で安息を貪っていたら、同居人のアーヤが
言った。
「アンタ、またそんな所でぬくぬくして。ほらほら、一日中じっと
していたら体に悪いわよ? そうだ!」
アーヤの次の言葉を待たなくたってオレにはわかる。例のアレの
お誘いだ。
「お散歩に行きましょ? リードはどこだったかしら?」
オレの意向などまるで無視して、同居人アーヤはオレにリードと
やらをつける。逆らっても無駄な事は分っているので、オレはされ
るがままだ。
だけど精一杯の抵抗の証として、オレはアーヤと並んで歩くのだ
けは断固拒否する。だってそうだろ? オレはアーヤをボスとして
見たことは一度たりとも無いのだ。
アーヤの先に立ち、細い裏道を進もうとするオレ。時には同じ場
所でじっと佇み物思いに耽るオレ。いくら慣れているとは言っても
「あ~、このコは! しょうがないわね、もう!」
結局アーヤはいつもの様に、オレを抱いて散歩とやらを続けるし
かないのだ。
「ねえ、ちょっと見た? あのコ、リードつけてるけど抱かれてる」
「抱いてたら散歩の意味無いじゃんね」
「ね! ああいうのを猫かわいがりって言うのよ」
「そうそう、超過保護って奴?」
すれ違った女子高生たちがオレを見てくすくす笑ってる。オレは
いたたまれなくなり顔を伏せたが、アーヤは平気の平左衛門だ。
こういうとこなんだよな。コイツの無神経な所! 猫かわいがり
もいいけど、もっとちゃんと可愛がって欲しいよ! 散歩だって要
らないっての。
オレ猫なんだからさ!
ですよねw