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天族の子供×召喚体×決闘システム

「ココです。お兄ちゃん」

「……ココ?どう見ても木の穴だけど?」

「はい、この中に結界で中を拡張して住んでるんです」


 俺とサリナがポチに頼んで、サリナの案内の元連れて来て貰った場所は、ポチがなるべくゆっくり走って1分位の距離にある森の中の湖の畔にある大きな木の下の穴の前だった。


 近くにはそこそこ大きな魔物が居るらしく、所々の木に生々しい爪痕が刻まれている。


 これでよくこんな穴の住処が襲われないな、と感心するところではあるが、そこは魔法具と現代技術のお蔭なのだろう。


 ココに来る少し前、ポチがあからさまに立ち入るのを躊躇った境界線があった。


 恐らくあのエリアから中のこちら側は何かの結界を敷き、更にこの中で結界を利用し、広がった空間で襲撃に対しての対策をしているのだろう。


「じゃあ、ここから……って、俺は入れないんじゃ?」


 見た目入り口高さ1.5M、横幅1Mの穴。


 そして、俺の胴回り1M強……


 試してみるか?


「……如何にかやって…「あ、大丈夫です。そこの内側に天力認識が有って、天族の人がお客さんを連れてくる場合の入り口拡張機能が有りますから。私が先に入って認識させていれば問題ありません」…そう?なら良いけど……」


 ハイテク過ぎて納得がいかん。


 周りの土地の景色とアンバランス過ぎる。


 町にしてもそうだ。


 魔道と科学がコラボするにも限度があるだろ。


 その割にこんな風に自然もキチンと残ってるし、益々奇妙だ。


「……じゃあ、先に入って入れてくれる?」


「はい」


 そうしてサリナちゃんが中に入った後、急に入り口が倍以上に広がり、俺でも入れるくらいになった。


「これ位で入れますか?」


「うん、大丈夫だと思う。……っしょと、良し入れた」


「では締めますね」


 サリナちゃんがそう言うと入り口はずんずん小さくなり、遂には見え無くなった。


 ドンだけ高性能なんだ?


 中にしてもかなりの大きさだ。


 言ってみればこの中だけで昔の日本の和式豪邸が入る位の広さがある。


 ココなら親が子供を育てるのに不自由しないだろう。


 やがてサリナちゃんが近くに置いてあったイスとテーブルを2セット持って来て俺の前に並べた。


 そして自分用に逆側に一つ置くと、向かい合って来た。


 そして、そのまま俺を眺めて静かに微笑んでいる。


 しかし、さっきは突然で流したが、サリナちゃんは自分の事天族って言ったよな?


 天族って何だ?


「なあ、サリナちゃん。天族ってなんだ?俺には聞きなれない種族名だが」


「ああ、天族っていうのはこの世界を見張ってる天使族と人間の間に生まれたハーフの事です。特徴的には先ほど言ったように、眼が見えない代わりに気を感じ取る事が出来ますし、天力を解放させれば背中から羽が生えて空を飛べます。…しかし、ハーフ故に天界まで飛ぶことは叶いませんし、人間の人達と共に住む事は天力が衰える原因に成ります。お兄ちゃん位の良い気の持ち主だけなら良いですが、悪い気の人が近くにいると、それだけ悪くなります。そして、その為のこの結界です。この中ならどれだけいても大丈夫なので、大人になって塔に登れるくらいに成長したらどれかの塔から天界の親の所に行くつもりです」


 ……成るほど、ここは仮の住まいって事か。


 しっかし、しっかりしてるな。


 とても子供には…って見た目と実年齢が同じとは限らない。


 もしかしてこの見た目で百歳位とか?


 まぁ、女の子の歳を聞くのは止めといた方が良いっていうから聞かないが、それにしても考え方はキチンとしてる。


 ……っと、それより今は俺の事だな。


 折角こんな良い場所を見つけたんだ。


 サリナちゃんには悪いが、少しの間だけ利用させて貰うか。


「え…っと、サリナちゃん。これから俺が色々やることは出来れば黙ってて欲しいけど、いいかな?」


「?何をするのか知らないですけど、別にいいですよ?それに、変な考えをしたらその分纏っている気がどす黒くなるんで、その時は注意しますから。どうぞ?」


 へ~、なかなか便利な能力だな。


 では、早速外のポチに食べられそうな魔物を狩ってきて貰うか。


「ポチ?」


「ガウ?」


「うわっ!ビックリした。何時の間に入ったんだ?」


「ああ、この結界は中に入ってる人の召喚した者なら素通り出来るんです。それに大きさも関係ないですから、このワンちゃんも出入り自由です。…ねぇーワンちゃん?」


「ガウ!」


 へー、便利なもんだ。


 まあ、便利に越したことは無いから良いが。


 そんじゃ、実験開始と行きますか。


「じゃあ、ポチ?職業レベル上げの序に食料調達を頼む。お前の分と、俺ら2人の分の喰えそうな食料を狩って来てくれ。…分かったか?」


「ガウ!」


 よし、いい返事だ。


「じゃあ、行って来い……って、もういない?早いな……」


「ええ、物凄い速さでワンちゃんの気が外に出ました。…うわ~、凄い速さで獲物を狩ってます…。あ、もう帰ってきますよ?」


 え?そう…って、ホントだ。頭でファンファーレが鳴ってる。


 レベルアップ


 職業レベル1から4


 使用可能スキル


 サモンヒール…召喚獣の体力回復(微)


 サモンスピードアップ…召喚獣のスピード上昇(微)


 

 ……やはり召喚師ならではのスキルって奴だな。


 しかも、やはり職業レベルは召喚獣を使って戦闘を終わらせないと効果は無いって事か。


 なかなかに自分のレベルが上がりにくい職業かもしれん。


 …っと、また上がったな。


 レベルアップ


 職業レベル4から5


 使用可能スキル


 送還≪リターン≫


 使用可能魔法


 送還≪バック≫


 ……おおーー!!


 やっとこさ別の奴を見れそうだ。


「ガウ!」


「お、帰って来たな?偉いぞ?」


 ポチの横には大型の獣肉と、小さな豚型の獣肉が大小1つずつ並んでいた。


 しかし…


「そういえば、このままじゃ病原菌が怖くて食えんな?サリナちゃん、魔法って使える?」


「え?あ、はい。簡単な調理程度の魔法なら。…じゃあ、この魔物は私が調理しましょうか?」


「あ、お願いできる?」


「ええ、食材を取って来てくれたお礼です。調理位はしますよ」


 う~ん、良い子だ。


 それからサリナちゃんが獲物を魔法で浮かせて調理に入った時に俺は次の確かめに移る。


 いよいよ間に気になってた召喚体を呼んでみないとな?


 送還が出来る様になった事だし。


 先ずはポチに礼を言って送還からだな。


「じゃあ、ポチ?今ままでありがとな?次に呼ぶまでゆっくりとしててくれ。


「ガウ!!」


「送還≪リターン≫サモンドック」


 それから、ポチはポリゴンの姿に成り、最初とは逆の順番で帰って行った。


 それから、いよいよ召喚体、美空の召喚だ。


 っと、先ず召喚キットを腕に装着して、カードをスロットに填め込んで、そんで詠唱?


「召喚≪リアライズ≫リアライズ美空」


 お?俺の詠唱?の後にポチの時と同じような現象の後、巫女服に身を包んだ美空が現れた。


 俺の予想通りで少し安心したな。


 未だ目を開けてないが、この姿は正に俺が長い時間かけて集めた召喚体の1体、美空だ。


 しかし…!ゲームの時より格段に可愛いじゃないか!


 体の形は巫女服であまり分からないが身長は165前後、顔は物凄く綺麗な色白の美少女だ。


 黒髪を足首の辺りまで伸ばしている姿もゲーム時の時より伸びているが、ハッキリ言ってより俺好みになっている。

 

 しかも、絶世のと言っても過言ではない位の美少女に成ってるし。


 …お?目を開けたら黒髪に黒目で正に日本の大和撫子って感じだ。


 そんでもってキョロキョロと周りを見てるが…?


 どうしたんだ?


「おい、美空?どうかした…」


 か?と俺が問いかけようとした瞬間…


 振り返った美空は俺を見るなり…


「きゃー!豚ー!!」


 と言っていきなり俺に張り手をかまそうとして来たが…


 バチッ!と言う衝撃の後、驚いた俺と、張り手をかまそうとした美空が同時に床に倒れ込む。


 まあ、俺はイキナリの事と、美空に近づいて行く途中という事で前のめりに。


 美空は張り手が弾かれた事による驚きで後ろにではあるが。


 その結果…


「キャッ…」


 という悲鳴と一緒に美空の体を俺の体が覆い尽くす。


 傍から見た感じはどう見ても美女を襲う肥満体の少年だ。(自分の事だから豚とは言わない)


 そして、どうやら少し時間が経ち、俺の下敷きになっている美空が俺の事に気付いて問いかける。


「っ痛ゥ~、あれ?私の抵抗が効かないという事は、もしかしてセイジ様ですか?」


「あ、気が付い「アン…ちょっ、セイジ様。胸、揉んでます。触るのは構いませんが、息苦し…あん…」…あ、ごめん…」

 そう言いながら改めて己の手の位置を見ると、何故か美空の慎ましくも上下している双丘を巫女服の中に手を入れた状態で、生で揉みしだいていた。


 それに気付いた俺は、しかし、ゆっくりとなるべく圧力を掛けない様に離し、体を除ける。


「…フゥ~、少し苦しかったですよ?セイジ様?」


「悪い」


 着崩れた巫女服を直している美空も顔は赤いが満更でも無いような感じで微笑みながら整えていた。


「それにしても、その下は下着は付けてないのか?」


「……セイジ様がパンツは仕方ないがブラなんて巫女服には無用って言ったんじゃないですか。忘れたんですか?」


「…言ったか?そんな事?」


 う~ん、言ったような覚えもある様な、無いような?


 昔の事過ぎて覚えてないな。


「…で、セイジ様は如何してその様な姿に?私たちやマスターたちと冒険で一緒の時はもっとスマートだったと思いますが?…一瞬豚が声だけ似せていると思いました」


「ははは…まあ、色々とあってな?まぁ、今もその色々の最中だが取りあえずこの世界に来た時から今までの状況を話すよ。少し腹が立つが…」


 そう言うのは、美空が容姿が端麗なばかりでなく、頭脳も明晰だからだ。


 ゲームの頃はよく軍師的な役割をして貰っていた。


 他にも偵察用に式神を扱うなど、星(召喚体を呼び出せる、リスクの様な物)が少ない少ない割に便利な召喚体として重宝していたのだ。


 他にも<パラレルアース・サモン・オンライン>の中で色々いるが、今は未だ美空しか呼び出せないようなので、仕方ない。


 それに、他のゲームのミレイやガラムと言ったキャラもカードさえ手に入れれば呼び出せる状態だから、なんとかレベルを上げて手に入れて必要に応じて召喚しなければならないだろう。


 この召喚体が職業レベルに関係して数が出せるとしても、同じキャラは流石に難しと思うし、同じゲームのキャラは今の所1体ずつしか呼び出せないし、仕方ない。


 まあ、それからの俺は美空にオッチャンに貰った紙を見せながら説明して行き、段々俺自体も現状を把握できてきた。


 先ずこの国が代々勇者召喚を密かに進めてきたオロン王国。


 そして、国王がガロン・オロン。


 この国王が結構優秀らしく、国民の人気の高い大魔道士らしい。


 そして、賢者の塔には魔法使いで無ければ入れない場所が幾つもある事から、国王自らが彼の塔に挑戦する事になった様だ。


 次に第一王女ソフィア・オロン。


 この第一王女が氷の魔法に特化し、更に魔導衣装の考案者でその衣装を使って魔法力を上げた状態で風の魔法を使う魔物の多い風神の塔に登っている最中だという事。


 風の魔法は火を起こしたりしても、土で抵抗してもあまり効果はないので、氷の属性で凍らせる手段のある第一王女の出番という事だ。


 そして、お留守番に第2王女のティア・オロン。


 この王女は幼い故に我儘で、結構問題のある王女だって事らしい。


 しかし、対外的にはあまり知られて無く、それ故にやりたい放題の負のスパイラル。


 更に各々護衛騎士団も持ち、結構な大国らしいな。


 魔法や科学に関しては生活をして行く内に慣れていくこともあり、殆ど記載されていない。


 唯2つ、通常レベルは自分が倒せば上がるが、職業レベルはその職業が関係したスキルや魔法でないと上がらないことが何とか分かった。


 もう一つはステータスの上がり方。


 随分昔に検証された様で、何とかその記載を見つけることが出来た。


 その記載を要約すると、各ステータスは俺達の世界の筋トレをしたり、走ったり、勉強すれば上がるって事。


 魔力に関しても、脳内ではSSが最高だって事だったが、上がる上限には限が無いらしいから、使い続ければ上がるらしく、同じSSでも効果が違った事が有る様だ。


 確かにそれなら納得だ。


 ……これ位か?


 この国に関して今必要な情報はこれ位か?


 他にも色々ある様だが、さっきから俺を見る美空の目が尋常じゃない。


 なんだろう?


「……なあ、美空?何かある?」


「……セイジ様、ダイエットしましょう?私も手伝います。走り込みを態々しなくても、魔物と死に物狂いで戦っていれば、そこそこ体力も早さも上がります。しかもレベルも上がって一石二鳥です。もし見た目が普通の一般男性程に痩せられたら…」

「痩せられたら?」


 ?何故かモジモジし始めたぞ?


 一体何をいう心算だ?


 そう思った直後、顔を真っ赤にした美空から爆弾発言が飛び出した。


「…わ、私が…その…か、体…でご奉仕して…差し上げます。そして、後から恐らく召喚される女性に関しても、わ…私がいる場合は説得して、一緒にご奉仕させます。…どうですか?」


 そう、上目使いで懇願された。


 それを聞いた俺はパニックになり…頭の中で絶叫した。


 …な、なにーーー??


 こんな可愛い子にご奉仕ぃぃぃーーー?


「ほ、本当か!?嘘だったら許さんぞ?」


 俺が驚きながら詰め寄ると、美空は少し後ずさりしながらも


「え、…ええ、本当です。その代り、速さが最低Bまでにはなって貰いますよ?それまではその間の筋肉痛とかのマッサージのみです。…寝るときのキス位は構いませんけど、…いえ、それも駄目ですね。それもお預けです。甘やかせば何時まで経っても痩せられません。痩せたら指名手配の顔だという事も分からなくなるのですから、危険が減る以前に住みやすく成る筈です。セイジ様が現実に戻ることが出来ても、その状態が維持できるなら、やって損をすることは有りません」


 …成るほど、俺以上に俺の事を考えた提案だ。


 しかも自分の体を条件にするとは、可愛すぎるだろ。


 これで了承しなければ、見事痩せねば男じゃない!!


「分かった、その提案を飲もう。…今からサリナちゃんが飯を持って来てくれるが、飯は食って大丈夫か?…食わないと流石にキツイが…」


「それは食べた方が良いです。痩せるのに必要な物はカロリーバランスと死に物狂いの運動ですから。食べなければ痩せられるなんて言葉は間違った知識です。それなら程よくカロリーを摂取し、体力をつけ、採ったカロリー以上の運動をしたらいいのです。そうすれば自然と筋力が付いて、体の重さに耐えられる足腰も身に付ける事が出来ますから」


「…そうだったのか?なら、俺がこんなになったのは、運動しなかったのが原因と?」


「その通りです」


 俺の質問に無情に頷く美空。


 なんと、俺の引きこもりが肥満に繋がっていたとは……


 しかし、今の説明なら、確かに痩せられる可能性は十分にある。


 それじゃ…


「はーい、出来ました……って、お兄ちゃんの召喚獣ですか?お兄ちゃんに似た気が有りますけど」


 早速飯の後に運動だ!っと思ったらサリナちゃんが来て、美空の気を感じ取ったらしい。


 流石はサリナちゃん、突然の登場にも慌てていない。


 しかも、俺の召喚した奴だと分かったらしい。


 何気に便利な能力の様だ。


「ああ、彼女の名前は美空って言って、サリナちゃんも言ったように、俺の召喚体だよ。詳しく話せば長くなるけど、一応俺と美空で、飯の後にレベル上げの序に運動をしてくる予定だ。何処に行くかは美空次第だけど、サリナちゃんには迷惑に成らない所まで行く予定だから、気にしないで良いよ?」


「あ…それじゃ~、もうお別れですか?」


 ?…あ、そう聞こえるか?


 これは言って置かんとな?


「いや、今の所住むとこが無いから、サリナちゃんが良ければ一緒に暫らく居させてもらおうと思うんだけど、…いいかな?」


「勿論です!」


 ふぅ~、良かったぜ。


 これでダメだって言われたら、路頭に迷うところだ。


 美空や他の召喚体がいるから大丈夫だとは思うが、せめて住む所位は真面な場所が欲しいからな。


「じゃあ、早速飯にしようか?…おお!何かあの食材でこれだけの料理が出来るなんて驚きだな。サリナちゃんは天才だ!」


「え?い、いえいえ。この位少し刃物が扱えたら簡単にできますよ。単に齧り付ける程度の大きさに切って、全体をジックリ焼いた後、後は香草を細かく刻んで刷り込んで臭みを取っただけですから。植物とかは近場に色んな種類が生えてるので、意外と調達は簡単なんです。…では、頂きましょうか」


「ああ、頂きます」


「頂きます」


 そうして、3人で食事を採る。


 一応仲間外れはダメなので、美空もあまり意味は無いが食事に混じった。


 それから食休みを兼ねて1時間後。


 俺と美空は森の中を進み、少しだけ高さが高くなった木の集落に到着した。


 そして、そこから美空の式神を飛ばして手頃な魔物が居る所を探す。


 数秒後魔物の足音が聞こえる。


 いよいよレベル上げの訓練開始だ。


「それでは、今から来る魔物を私が風の檻で囲みますので、セイジ様はその中で魔物と戦って貰います。私は一切手出ししませんので、何とか生き残ってください。そして、セイジ様の発奮材料に、勝てばマッサージをして上げます。…何処をとは言いませんが。…では、最初の獲物が来ましたので、早速行きましょう」


 …何処に…って…!!あれか!?


 イキナリあれは無いだろ!!?


 俺の目の前に現れたのは、場所が場所だけに、4~5Mを超す物では無い物の、3M後半の巨大なオーク(俺じゃないぞ)。


 しかも、俺と違って筋肉に覆われた肉体は、俺の持って居る見習いの剣位なら弾き返しそうな位の硬さが伺える物だ。


 そして、オークが美空の用意した風の檻に入り、唖然としている間に、俺も入ると、イキナリ上空から声がした。


「さ~、今日もやって来ました人間対モンスターの異種格闘技対戦!解説は私セント・カイセがお送りします!」


「そして、今回の人間側のサポータ―として、召喚師セイジの召喚体である美空さんをゲストに迎えました!はい、拍手ー!」


 パーフーパーフードンドン!!


「え?こ、これは!!?」


 あ、俺が固まってる間に美空がいつの間にか捕まってる。


 あの美空を気付かせずに捕まえるとは、なかなかやるな!


 しかし、状況が掴めん。


「あ、あの?これは如何いう事でしょう?私は単に、セイジさまのダイエットの一環で魔物と戦って貰おうと考えただけなのですが?」


「ああ、これは失敬。いや~、このイベントも久しぶりな物で、私も暇をしてたんですよ。何故か最近の人達は魔物との1対1の決闘を好まなくて、大勢の人数で、1体を滅多滅多にすることで快感を得ようと言う者が後を絶たないのです。その様な方法では、レベルが上がっても、ステータスは上がらないと解っているのに。そして、段々九死に一生の状態で得られるステータスの向上の有難味を忘れて行って久しい所に、今回のイベントです。これが黙っていられますか?いや、無理でしょ!…まあ、解かり易く言えば、故意にこういう状況を作り上げる場合、決闘システムと言うこの世界のシステムが反応し、関係者のみに伝えられる訳です。…ああ、心配せずとも、ゲストが居る場合は、先ず死ぬことは有りません。代わりに死ぬくらいの痛みと、体力の消耗、各種ステータスの微上昇を、負けた場合でも得られます。まあ、簡単に勝った場合はその分の向上しかありませんが、それにしても団体さんで苦労もせずにレベルアップする以上の格段の向上は望めます。…以上が説明ですが、分かりましたか?」


 …要するに、一応は死ぬことは無いが、楽には死ねると思うなよ?って事か?


 まあ、死なないなら如何にか知恵を絞って勝てばいいんだ。


 少しは気が楽になったってもんだ。


「よし、行くか」


 そう言って俺は装備品の剣を出して構えると、オークに向いて突っ込んだ。


 その時、イキナリ解説がそれの解説までやり始めやがった。


「おおーっと、これは馬鹿な豚人間!!何を血迷ったか、自分オークに向かってまっしぐらに剣を構えながら突っ込んで行ったー!!これはあれか?!死にたいのか!?実際死ぬことは無くても死ぬくらいの痛みはある!まさかこの豚人間はマゾなのか!?痛みで快感を得ながらステータスの向上を図る、真正のマゾなのか!!?」


 …あの実況の女を思い出したじゃねえか!


 胸糞悪い!


 しかし、この突込みには意味が有るのだ!


「ブオオ―――!!」


 オークが吠えながらその丸太の様な腕を横に薙いでくる。


 それを俺はジャンプ一番……はどう考えても無理なので、剣を横に抱えながら丸い体を活かした転がりで避けようとするが…


 ボゥ~~~ン!


 え?逆に弾かれた!!?


 痛みは無いけど、意味もなくなった!


「あーーっと、何がしたかったんだ?!オーク人間。行動の意味が分からない。これはどう見ます?ゲストの美空さん」


 そこで考えて居るのか、しばし沈黙し、数秒後…


「恐らくセイジ様は体を回転させ、相手の間合いに飛び込んだ後、一か八かの金的に賭けたのだと思います。人間も魔物も急所は同じ。なら、背の小さい自分が下からそれを狙えば、結構な痛みを与えられる筈だという事でしょう。布で覆っている以上、雄か雌かは分かりませんが、見た感じ乳房がそれ程大きくない以上、雄の可能性が高いですから」


 おーー!!流石美空だ!


 俺の考えを的確に当てやがった。


 しかし、あの位の美少女が金的とか、乳房だとか言うと何となく卑猥な事を言わせてる気分に成るな。


 まあ、オッパイと乳房ならオッパイの方がエロいから、それでいいのかも知れないが。


「なるほど、見た目よりは考えて居るという事ですね?私はてっきり足がもつれて転がっただけかと思いました。お許しを。…って事ですが、結局その目論みは失敗という事ですが、これからはどういう展開が予想されるでしょう?」


「そうですね。レベル、ステータス的に相手に成らない魔物を選んでいるので、このまま逃げ惑っている内にステータスが上がればチャンスは来ますが、その前に終わる可能性が大です。…まあ、今の段階で勝てるとは思ってないので、終わったらマッサージでもして差し上げますよ」


「……何か、私の方が宛てられそうなのですが、結局は美空さんの掌の上だと?」


「はい。このシステムが無くても、危険が有りそうなら死ぬ前に助ける予定でしたが、その心配も無くなりましたし、後はセイジ様の戦略の立て方の勉強をして、今後に活かすだけですね。勝てば最初の約束通り、気持ち良い所のマッサージをして差し上げれば落ち着くでしょうし」


「…悪女ですね」


「それがどうしました?」


 うわ…顔は見れないけど、声が愉悦に満ちてる。


 …けど、勝たなきゃ痛いのも確かだし、ステータスの向上が図れるのも確かだ。


 しかし、あの体格の割に速い攻撃を如何掻い潜るか…


 しかし、解説に耳を傾けていたら…


「ブフォー――!!」


 わっ!オークが遂に待ちきれずにきやがった。


 しかも早い。


 それに口元を歪ませながら近づいてる。


 くそ!なんであんなにあの体格で早いんだ?


 俺にもその速度をホンの少し分けてくれ!


 って言っても無理か…


 …くそ!どうすれば…



「ブホ!!」


「グぅ!!」


 考え事をしている内に更に詰め寄られた!


 と思ったら、イキナリオークが回りだした。


 …違うか?…俺の目が回ってるのか?


 あれ?しかも、何で上下左右に行ったり来たりしてんだ?俺…


 ああ、いつの間にか投げられて壁に当たってるのか。


 しかし、風の壁だから、端に当たっても痛くないから、楽っちゃ楽だな。


 跳ね回ってればいいんだし。


 よし、この間に作戦会議だ…一人で。


「おおーっと、これは面白い。何というか、これは人間ピンポンだ!丸い体を活かし、風の壁を利用した縦横無尽の移動法!これは流石に予想してなかったー!」


「ええ、これは予想以上にセイジ様の運が良いのか、その場の思いつきか。分かり兼ねますが、これでこの勢いのままオークが手が出せなければ、作戦を考えるのに十分な時間稼ぎが出来るでしょう」


 解説に的確に応える美空に感心しつつも、壁の囲みの中を高速で跳ね回る俺は、起死回生の一撃の瞬間をとらえた


 偶然にもオークの目前に俺のピンポン状態の体が躍り出て、しかも横抱きにしている剣が刺さる方向にオークの体が有った。


 そして、そのまま俺の体が横に水平にオークへと突撃し、その眼に剣が突き刺さった。


「ブフォー―!!」


「よし、このまま一気に縦に斬り…え?」


 俺はオークの目に刺さった剣を持ち、そのまま体重を掛けて縦に斬り裂こうとしたのだが…不意に体が浮いた。


 そして、目線が同じに成るとオークはニタッと口を歪ませ、恐らく俺の服を捕まえている手とは逆の腕を振りかぶり…


 それからブオン!!っという風切り音と共に、俺はオークとは逆側の壁にぶち当たり、その衝撃で剣を落とす。


 カランカランとなる音を耳の片隅で捉えながら、その後何度かのオークと壁によるサンドバック状態が続き、俺は次第に意識を手放して行った……。


 


 





 


 

 

 


 

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