第1話 ステータスだぁ!(よく分かってない)
———概念乱流から離脱しました
該当個体の物理的受肉を確認しました
システムの稼働に十分な演算機能を確認しました
登録個体支援規則に則り物理的機能を利用します
疑似ダンジョンシステム限定起動
通常起動に必要な魔素の収集を継続します———
芯から冷えてしまいそうなほど寒い。
喉が開いているのが分かるのに、息が出来ない。
息が出来ない!?
とうとう金縛りが肺にまで来やがったっ!
そう焦っていつも通りお腹に力を入れようとしたその時。
ドンッッ!
全身が揺さぶられる程の強い衝撃が襲いかかって来た。
その衝撃のおかげか、新鮮な酸素がやっと肺に入ってきた。
あぶねぇ、死ぬかと思った…
あ?いや、なんか、変っぐっ!?
息を吸っているはずなのに、息苦しい。
頭が酷く痛い。
血管が何本かちぎれたんじゃないだろうか。
世界が眩しい、目を開けても閉じてもぼやけた閃光が網膜を焼いてくる。
音がやけに大きく聞こえる、人々の声らしき雑音が意識を染め上げる。
分からない、うるさい、痛い。
背中に触れる地面の感触が、表皮を流れる空気の粒立ちが、肌を突き刺してくる。
息を吸う度に喉が焼けるように痛い。
痛い、痛くて痛くて、死にそうだ。
誰か、神でも何でもいい、楽にしてくれ。
———該当個体のストレスの増大を確認しました
個体の各種機能の不足を確認しました
登録個体支援規則に則り物理的機能の利用を中断します
同規則に則り個体の意識を強制停止…
ダンジョンシステム管理原則に個体意思尊重の項目を確認しました
検証の結果該当個体の同意を確認、強制停止を実行します
実行完了
該当個体の単位時間における生存可能性の低下を確認しました
リソースの削減の為該当個体の身体機能の調整が必要です
一部管理項目へのアクセス権限を該当個体へ付与します
強制覚醒を実行します———
あれ?夢…だった?
意識が目覚めたその瞬間、視界を覆いつくすように青いデジタル調の画面が広がった。
—————————————————————
葦花 頼斗
年齢:0歳
Lv.0
取得経験値 0/10
ステータスポイント 0
【ステータス】
HP 0/0
MP 0/0
ATK 0
MTK 0
ADF 0
MDF 0
<INT> 80
<VIT> 11
【スキル】
【称号】未設定
獲得称号一覧
—————————————
アクセスLv.1
<身体機能管理項目>
・血流
・臓器
—操作権限がありません—
—————————————
うわっ、びっくりした。
なにこれ、ステータスみたいな画面だけど…え?どういうこと?
急に眼前に現れた文字の羅列を何とか読み進もうとしたが、先頭にあったその文字に目が釘付けになった。
“葦花 頼斗年齢:0歳”
いや、そんな、本当なのか?
ラノベで散々読んで、何度も夢想した“転生”をとうとう俺もしたってことか!?
実際問題名前も年齢も全然違う、もうすぐ13歳だったしな!
え、あ…そっか。
もう父さんと母さんに会えないのか。
学校に行ってラノベ読むことも出来ないんだ。
なんか、寂しいな。
えー…よし、気を取り直して、このステータスっぽいものをしっかり見てみるか。
ま、俺は大抵のゲーム機は説明書を読まずに遊べるタイプだからね!すぐにこのステータスも使いこなしてみせようじゃないか!
いや待て待て待て、HP0なんだけど、最大値も0なんだけど!?
え、死ぬの俺?転生してすぐ死亡ってマジですか?
そ、そんなぁ…
あれ、死んでない。
もしかして、HPって俺の知ってるHPじゃないのか?
一度ステータスから意識を離して、身体の感覚に集中してみる。
全身が布のようなもので覆われているのを感じるが、肌を刺すような痛みは消えてなくなっていた。
うん、痛くない。
苦しくも無い…うっ、頭は少しズキズキする…
けど、息を吸っても喉が焼ける感じしないし、あれかな、ステータスと身体能力は別なのかな。
うーん、自分の身体が見られたら、せめて手でも見られたら自分の身体の状況把握できるのにな。
ってそうじゃん、俺赤ちゃんだ。
見てもどうにもなんねぇや。
今世のお母さん、任せた。
俺にはどうしようもねぇっす。
と り あ え ず、こういうよくわからないのって適当に押してみたりするもんなんだけど…
手は上手く動かせねぇし、一体どうすればいいんだ?
取り敢えず名前はどうあがいてもミスりようが無いし、名前から見てみようかな。
葦花頼斗、アシバナァライトォゥ!詳細情報表示!インフォメーション!ステータスオープン!
くっ、心の中で叫んだだけなのに妙な気恥ずかしさがむずがゆい。
何だ、何をしたら詳しい情報が見られるんだ。
名前の欄は何も出てこないなんて可能性もあるけど、触れそうな所を触るのはなんか怖いし。
うーん…名前よ見えろー、別に今も見えてはいるけどなんかもっと詳しいもの見えろー。
そう念じながら葦花頼斗の文字に意識を集中させ続けると、ステータスの表記がすっと変わった。
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葦花頼斗:参画している社会的集団における正式名称を指します。
—————————————
出来たぁ!
へー、こういう感じか。
別に名前を変えられるとかそういう感じではないのね。
そりゃ転生だし、ゲームじゃないんだからそうに決まってるか。
よし、取りあえず全部の情報見てみるかぁ!
そうして、各種ステータスの内容についてひたすら流し読んでいった。
ステータスを全部見てみた感じ、結構ゲームチックなステータスだったな。
頭の中で見たもの全部まとめてみるか。
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ステータスポイント:主にレベルアップした際に入手することが出来ます。INT、VIT以外の各種ステータスに割り振ることでそれぞれの数値を上昇させることが出来ます。
HP:受けるダメージをHPの値で肩代わりすることが出来ます。安静時毎分最大値の1%分回復します。
MP:MPはスキルを使用する際に消費するコストです。安静時毎分最大値の1%分回復します。
ATK:物理攻撃の際に与えるダメージがATK分上昇します。
MTK:魔法攻撃の際に与えるダメージがMTK分上昇します。
ADF:物理攻撃から受けるダメージを一定値分軽減します。
MDF:魔法攻撃から受けるダメージを一定値分軽減します
INT:同種族同年齢における知性レベルの基準値を100とした場合の相対評価です。
VIT:同種族同年齢における筋力やスタミナ等の総合的な身体機能レベルの基準値を100とした場合の相対評価です。
スキル:MPを消費して発動することの出来るものです。その種類・用途は多岐に渡ります。
称号:ダンジョンシステムからその行動の成果に基づいて与えられるものです。設定することで効果を発揮します。
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ふんふん、取り敢えず数字の0がステータスに羅列してるのはあんまり気にしなくて良さそうだな。
いや、別に初心者ボーナス的な感じで最初に10ポイントくらいくれても良いと思うんですけどね!?ね!?
年齢0歳の身にはこんなステータス何の役にも立たないだろうし、一旦いいや。
問題なのは最初から数字があるこいつらだよこいつら!
VITが低いのって赤ちゃんにとって致命的だろ!
だからさっきあんな苦しんだんじゃねぇのか!?
赤ちゃん基準でも脆弱な肉体って…くそぅ、俺には何も出来ねぇのが悔しい。
まぁ、VITは良いよ。
無事に生まれてこられただけでも相当な豪運でしょ、多分。
生まれてこれない赤ちゃんの割合って結構多いってどっかの小説で見たことあるし。
INTくんさぁ、君本当に俺のこと分かってますかぁ!?
我小学6年生ぞ?転生してきて他の0歳児に負けてる訳ねぇだろうがぁ!!!
0歳児より頭悪いって言いたいのかよこのクソステータスッ!
くしゃくしゃに丸めてゴミ箱にでも捨ててやろうかっ!
あーもう、いいや、見なかったことにして、面白そうなもの見てみよう。
なんかいかにも触っちゃ駄目そうな“身体機能管理項目”ってやつ、見えていいのか?これ。
なんか別枠であるっぽい感じだけど、視認出来るってことはこれも意識を集中させたら詳しい情報が出てくるってことだよな?
そう思い俺は先頭の血流の文字に意識を集中させた。
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血流:全身の血液流量を調整することが出来ます。
0から100の間で設定することが可能です。
【100/100】
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ふーん、0から100ね。
この値ってどう弄るんだろう?数字を意識するとか?
そう思いとりあえず数値設定欄に意識を集中させた。
あれ、動かない。
ふぐぐぐっ!反応しろー!
【0/100】
急に身体の熱が失われた感覚があった。
やばい、目が滑って0に意識がいっちまった!
早く戻さないとヤバい気がする!
そう思い数値を設定しなおそうとするも、遅かった。
気味の悪い不快感が全身を駆け巡り、命の危険を声高に叫んでくる。
ステータス画面以外のぼやけた視界が真っ暗になった。
数字、変え、なくちゃ。
やがて、脳裏にこびりついたステータス画面すらも意識の暗闇に消えていった。
———管理項目の数値が危険域に設定されています
固体の意識喪失を確認しました
生命保護の為、数値を正常値に変更します———
朝7時、インターネットのとあるニュース番組では、今日も可憐な3Dアバター姿のアイドルアナウンサーが、スタジオ内の大きなモニターの横に立ち、魔法ステッキの様な指示棒をくるくる振り回してニュースを伝えていた。
『はーい!全国のみんなー!おっはよー!エブリデイグッド!の時間だよー!』
『今日のニュースもこのアタシ、夢見明日香がお届けしまーす!』
そう言ってぺこりとお辞儀をすれば、ニュースLIVEに付属するチャット欄が仄かに活気づく。
—キター!!!
—おはようございます
—おはよー!!!!
—うおおおおお!!!
—今日も可愛い明日香ちゃん!
—おはようございまーす
『今朝のトピックは~こちら!』
そう彼女が言うと、スタジオのモニターには次のようなトピックが並んでいた。
【みんなの地域の桜開花・満開予報!】
【冬の乾燥にご用心!各地で起きている山林火災の被害は!?】
【謎の集団オカルト事件!?昨夜一斉にナニカを感じた人が続出!?】
【悪徳企業を許すな!大企業輪流井の不正な価格の吊り上げ!?】
【すっごくかわいい!須御井動物園で赤ちゃん子熊誕生!】
『じゃあ早速最初のトピックに行こっか!じゃじゃーん!桜開花予報!みんなの地域でいつ桜が開花して満開になるか、バッチシ予報しちゃうからね~☆』
ウィンクしながらそう言うと、モニター画面に桜模様で彩られた可愛らしい関東地方の地図が映る。
本人の衣装も桜で彩られたものに代わっていた。
—うほー!!!
—変身助かるー!
—今日も可愛い明日香ちゃん!
—桜モードきちゃー!!
—一緒に花見に行きたい!
—かわゆすぎる…!
今日も世界は平和である。




