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命題:自己認識×のぼっちはステータスがあったら変われるのか?  作者: 雪村団子


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第0話 ぼっちの1日

長編を書いてみようと思います、よろしくお願いします。

薄暗い天井が目に入った。

なんだか身体が重い。


今日も学校か、面倒くさいなぁ。


意識はあるのに身体に上手く力が入らない。

金縛りというのだろうか、身体が痺れてまともに動いてくれない。

気合でお腹に力を込めて身をよじるように何とか布団から身を出せば、ゆっくりと身体の主導権が戻ってくる感覚がした。


まだ寝ている両親の枕元を、足音を立てずに足早に通り過ぎる。

その足のままキッチンに入り、水を飲む。

蛇口から出る水が歯茎に染みて痛い。


「いてぇ…外寒いんだろうなぁ」


外はまだ暗い、ローマ数字が囲んでいる古い置き時計は、五時半を指していた。

仕切り扉で作った自分の部屋に入る。


「朝早く起きても、別に宿題は終わって…ないわ!?」


今日提出する宿題のプリントを机の上に出しつつ、イヤホンを付けてスマホを開く。


「後でやるか、うん、そうしよう」


雑多なコンテンツが朝の冴えた脳に染み込んでくる。

どうせ小学生の内は大して頑張らなくても何とかなるだろうし、時間を無為に浪費する妙な快感を味わいつくそう。


「ふふっ、ははっ」





「あぁ、もう7時か…学校だるい…ってやべえ、宿題やってねぇっ!」


キッチンからウィンナーの匂いがしてきた、マズい。

朝ごはんが出来る前に終わらせなくては!

大丈夫、ただの計算問題だけだから、途中式無視してそのまま答えを出しに行けば…っ!







朝休みが始まった。

朝休みと言っても、休みと言うには烏滸がましいただの読書強制時間でしかない。

しかし、俺にとっては昼休みよりもずっと幸せな時間だ。

外に行かなくちゃいけない雰囲気が生まれず、周りを気にせずラノベを読めるからな。


宿題?あぁ、諦めたよ。

何事も諦めが肝心だって言うだろう?

さて、今日は図書カードで新しく買ったおニューのラノベの解禁だ…店でつけて貰った茶色いブックカバーのパリパリ感が本当にテンション上がるなあ!




チャイムの音で意識が現実に戻ってきた。

机の下でバレないように少しずつラノベを読み進めていたら、いつの間にか1日が終わっていた。

あれ?まだ半分しか読んでいないんですけど。

子供時代の時の流れって大人よりも長いはずでは!?


帰りの会はまじめに聞こう、うん、月曜日に何か特別な持ち物があったらヤバいし。

…まだ時間あるしちょっとだけ、あとちょっとだけ読むか。





「あぁーやっと学校終わったー…今週はこれで終わりだぁー」


ランドセルを床に落とし、ソファに身を投げる。

月曜日の持ち物?あぁ、聞き逃したよ。

まぁ、体育は木曜だし?多分問題ないでしょ。


「そんなことより♪今この夕方の時間はぁ!我の天下なりぃー!はぁーはっはっはっ!」


拳を突き上げ天へと叫ぶ。

両親は仕事!明日は休日!宿題も無ければ親の目もない!今が我が世の春なり!なんつって。


「あー、さいこー」


週末の宿題は明日の自分に任せて、スマホで漫画を読みふけろう。

うん、それが良い。





スマホの画面に西日が反射して眩しい。

そうか、もう夕方か。

不意に我に返ると窓越しに小学校から大きな声が聞こえてきた。

不明瞭なその声は、不愉快なことに同級生のもののようだ。

同級生たちの時間の流れと異なる所に独りでいる事実が、チクリチクリと俺の心を突き刺してくる。


「ちっ」


イヤホンを付ける。

友達付き合いは苦手だ、毎日関わらないといけないなんてストレスだ。

動画や漫画みたいに、好きな時に楽しめる方がよっぽど楽だし、コスパが良いはずだ。



「…はぁ、これだから嫌なんだ、この時間は」






時は夜、明日は土曜日だ。

「ふふん」

夜ご飯を食べた充足感と宿題にも学校にも脅かされない安心感に満たされながら布団に入る。

ミントの歯磨き粉が口の中にまだ残っている。

吐く息の爽快感、寝室に行くまでの廊下の寒さと、布団に素足で触れた時の柔らかさ。

布団に入るこの瞬間が世界で一番幸せだ。

そう思いながら寝返りを打った。



「は?」



暗い

目の前にあったはずの外廊下に面した窓は無く、そこには暗闇がただ広がっていた。

息が出来ない。



未知との遭遇に、幼い頃からあった漠然とした死への恐怖が、その頭をもたげた。

鼓動がペースを上げていく。

脳が動いている錯覚を覚える。

目が、離せない。

頭の中で思考が空回りし続ける。 

動けない。

身体が動かない。

このまま、死ぬ気がした。


いやだ、あと少しで、この世界が変わるはずなんだ。

いやだ、目の前にある“可能性”にすら届かずにここで俺が消えるなんて。

物語の脇役みたいにあっさり死ぬのなんていやだ。


「…あぁ˝ぁ˝ぁ˝っ!!」


無理やり動かした手が暗闇を叩いた。



さわれた。

遠くからテレビの音が聞こえる。

直感が訴えてくる、“次はない”。

暗闇はまだ俺の目の前で、元から部屋の一部であったかのように佇んでいる。


「ふふっ」


何故だろうか。

もう一度、あと一度これに触れたら、何かが変わる気がした。


今この瞬間、他の有象無象の現実のことが頭から抜け落ちていく。

学校のことも、両親のことも、明日のことも、ラノベのことも、何もかも。

ただ、この不快な人生が少しでも変わるのなら、何が起こってもいいと思った。

暗闇のある方に手を伸ばす。

指に熱を感じた。

押し返されるような、引き込まれるような、不思議な感覚があった。


「にひっ」


形容しがたい喜びが脳を震わせる。

笑いながら、手を、押し込んだ。








———未登録個体の接続を確認しました


   ダンジョンシステムとの同期を開始します


   本体との接続が確認されませんでした


   規則に基づき当機の保護を実行します


   遊離の為に該当個体との接続を解除します


   位相空間の歪みを検知しました

   次元平面の断絶を確認しました

   特異的なエネルギー乱流に巻き込まれました


   当機の存在維持の為に該当個体との接続を維持します———






朝6時半、茶の間のテレビに目を疑うようなニュースが流れた。

東京のとあるマンションで、原因不明の爆発事故が起きたらしい。

行方不明者は1名、負傷者9名の大事故だ。

流れている中継映像では、ある部屋を中心に何かに食べられたみたいに綺麗にえぐられたマンションが移っていた。

記者のインタビューを受けている被害者の話では、夜21時頃にリビングに向かって歩いていた被害者は、玄関付近から大きな爆発のような音がしたと思ったら、その瞬間に物凄い風圧で飛ばされて、身体を家具にぶつけて怪我をしたとの話だ。

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