6. 時々、みんなで工作
もうすぐ聖誕祭である。
その日が近付くにつれ、王都のあちこちが華やかに飾り付けられる。冬場はほとんどの店が閉まり、人通りも減ってしまうが、色とりどりな装飾を見ていると浮き立つものがある。
今年は巣に少し、飾り付けをしてみよう。そう考えたファスは、朝ごはんもそこそこに飾り作りをしていた。
話を聞いて興味津々になったパクたちも、集めていた落ち葉や木の実を持ち寄って、枝を器用に曲げたり捩ったりと頑張っている。
当然、目立つ訳にはいかないので、飾るのは中。見映えよくカゴで飾るのは、いつもと変わらない。壁に飾れるものにしよう、と話し合った結果、リースになった。
しかし中々難しく、一人と六匹は四苦八苦。ついには、
「あっ…、」
「にゃっ」
枝は折れてしまった。柔らかく、加工しやすいものを選んだのだが、そう簡単にはいかない。飾りを付けて隠そうかと様子を見たが、完全に折れてしまっている。作り直した方がいいだろう。しゅんとしているパクたちを見渡し、休憩を入れる為台所へ向かった。
もうお昼も過ぎている。何か食べれば、いい案が浮かぶかもしれない。とはいえ、今日はずっと座り込んでいたので余りお腹は空いていない。
「スープにしようかな」
常備しているおだしを温め、いい塩梅になるよう合わせていく。そこに塩や薬草を入れ、味を調える。具は、残っていた根菜。ひと煮立ちさせたら完成だ。
小さな器によそい、パクたちの元へ。飾りはカゴに集められ、テーブルの隅に片付けられていた。
「ありがとう、休憩したら、またやってみよう」
「にー、にゃん」
優しいおだしの香りに、気分が浮上する。一口飲んで、パクたちは喉を鳴らした。あったかくておいしい。
「にゃんにゃあ、にぃ」
「なぁう、にゃ?」
「ぶにゃにゃ」
もっと柔らかく細い枝があれば、編み込む事だってできる筈だ。けれど今日は、雪がちらついている。探すのは容易ではない。巣にあるものでできないかと話し合いながら、周りを見渡す。薪の側にある草束が目に入り、ファスとパクたちは思い出した。
「稲わらだ。カイ達がお米持ってきてくれた時に…」
パクたちは好き嫌いなく食べるが、主食はどちらかというとお米だ。買い物に出た時お米があれば、ファスは必ず買って常備している程。今の寒い時期は、おかゆがおいしい。
ファスのおかゆは好評で、カイ達もよく食べる。それもあり、彼等も差し入れとして、時々持ってきてくれるのだ。三人は稼いでいるとあって、買う量も多い。この稲わらは、店主からおまけでもらったと言っていた。
ファスが持ってきた一束を、興味津々と覗き込む。柔らかくて、加工しやすそうだ。
「にゃむぅ?にゃむむ」
「好きに使っていいって言ってたし、これで作ってみようか」
「んにゃ、にゃーあ」
新たな材料を手に入れたパクたち。スープをおかわりして満足すると、すぐに取り掛かった。
それぞれ持ちやすい束にして、ばらけないよう片方を紐で縛っておく。このままでもできそうだが、より柔らかくする為に薪で叩き、それから捩じりながら輪っかを作る…。
「にゃあ!」
「うん…!これなら作れそう、どんなのにしようかな」
「にー!」
稲わらも飾りも、限りがある。話し合いの結果、二つ作る事に。更に話し合いを重ね、太くしっかりとしたリースに決定となった。
「にゃあにゃ、にいぃぃぃ……!」
「ぶにゃぶにゃ、ぶにぃぃぃ……!」
「もう少し、ぎゅっと捩じって……!」
「にゃんにゃんにゃー……!」
がさがさわさわさと音を立てながら、一人と六匹は真剣に、そして見た目キレイを心掛け、黙々と作り続けた。
……ちょこんと飾られたそれに気付いたのは、カイであった。しばらく黙って眺めていると、同じく気付いたトオヤとうららも揃って眺める。
巣の壁には、見覚えのある稲わら。薪代わりにと渡したが、立派に加工され生まれ変わっていた。
見ているだけで、ほんわか気分になる三人。
「らしいっちゃらしいなぁ…」
「米の産地では、こういう名産品もあると聞いたな」
「かわいい」
「なんていうんだっけ、これ。確か…」
「にゃーう」
ふと見下ろせば、いつの間にやらパクたちが集まっていた。飾りを見上げ、ででんと胸を張っている。
「器用だとは知ってたけど、こういうのも作れるんだなぁ。そうそう、しめか、」
「にーう」
「なーな」
「大したものだ。綺麗に整えられているし、頑丈にできているな。このしめか、」
「ぶーな」
「にーむ」
「もう見てるだけでもかわいいよ!パクちゃんたちが頑張ったのが伝わる!このしめかざ、」
「んーに」
三人が三人共、食い気味に声を上げられ、顔を見合わせる。
これは、多分、違う。解釈の不一致というやつだ。じぃと見上げてくる六対の目。答えを出すべく、改めて飾りに目を向ける。
「お茶、入りましたよ……?あ、それこの間作ったんです」
「ありがとな。うん、器用だなと思ってさ」
「パクたち、すぐに作れるようになったんですよ。最初は柔らかい枝で試していたんですけど、うまくいかなくて」
ファスは笑顔でお茶とおやつをテーブルに置いた。今日のおやつはほかほか焼き芋だ。
「飾りも、みんなで選んだんです」
「巣に良く合ってる。パクたちらしくていいよな、この…」
ファスの前では、間違えられない。食い入るように見るカイを、まんまるの目が真剣に見上げる。トオヤとうららも静かに、素早く探る。
ゆるーく緊迫した空気の中、ファスは微笑んだ。
「市場で見た聖誕祭のリース、すごく綺麗だったのでつい、飾りたくなってしまいまして」
「リースな!!確かにな!」
「中々華やからしいな、リース」
「そうそうそうリース!色々違って見てて楽しいよね!パクちゃんたちのもすごくいい!私好きだよ!」
パクたちは再び、ででんと胸を張っている。嬉しそうだ。三人は心の中で安堵した。
癒し達が頑張って作り、喜び合ったであろうもの。違うと訂正するのは簡単だが、落ち込む姿など見たくはない。
あれはリースだ。癒し達がそう信じて作ったのなら、あれはリースになるのだ。三人は目で会話し、頷き合う。
そうして無事に、のんびりおやつ時間を堪能できたのだった。
「パクたちが考えたんですけど、飾りを付け替えられるようになってまして。新年迎える時は、こう……して飾ろうと思ってます」
「にゃ!」
「あ、しめ飾りでもあるんだな!?」
間違ってはいなかったようだ。




